スモーキー・ブルース/烏養繋心
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遅くとも夕飯が終わればいつも帰る黒崎さんが今まだここにいるということは、何かそれなりに理由があるんだろう。
押しは強いものの変なところで律義に線引きする部分があることを、短い付き合いながらも俺は知っていた。
「あの…」
「悪い、ちょっとシャワーだけ浴びてくる」
多分、ここにいる理由を話そうとしただろう黒崎さんの言葉を遮って、俺は彼女に背を向けて風呂に向かった。
思い切り蛇口をひねると、お湯になりきれてない水が勢いよく飛んできた。
冷たさを覚えながらも、その加減が酔いをさますのにちょうど良かった。
軽く汗を流し終え、居間に戻ると、黒崎さんは申し訳なさそうにちょこんと座っていた。
「飲むか?」
冷蔵庫から出してきた麦茶を差し出すと、黒崎さんは小さく頷いて手を伸ばす。
「ん」
「ありがとうございます」
麦茶を一気に飲み干して、ちゃぶ台にコップを置く。
気まずいのか黒崎さんは正座のままコップを膝の上にのせている。
「で。なんでこんな時間まで家にいるんだ?」
「…お義母さん、明日朝早く出かけるそうで、今日は早く寝るって仰ってて。繋心さん、鍵をお家に忘れていったでしょう? それで繋心さんが帰ってくるまで起きとけないから、代わりに待っててくれるかって頼まれて……」
「それは、スマン……でもそんな真面目に待ってなくても、玄関開けたまま帰ってくれてよかったんだぜ」
「そういう訳にはいきませんよ。お義母さんも最近ここらへんで泥棒被害が出てるから戸締りしないと心配だって仰ってたし」
「……だからってアンタにこんな時間まで家の番させることねーだろうに……いや、まぁ今回は俺が鍵忘れたのが一番の原因だな。悪かった」
黒崎さんに頭を下げると、彼女は恐縮したように何度も首を振った。
「そんな、いいんです。頼まれたとはいえ、私が好きでやってることですし」
「いや、だけど」
「いいんです、本当に。…繋心さんも帰って来たことですし、私はこれで…」
「は? どこに行く気だ、アンタ」
「どこって…家に……」
「いや、今何時だと思ってんだ。こんな時間にバスもタクシーもないぞ。俺も今日は飲んでるから送っていけねぇし。まさか歩いて帰る気じゃねぇよな?」
「それは……」