スモーキー・ブルース/烏養繋心
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黒崎さんが家に来るようになってから、3週間が過ぎた。
週に2~3日ほど家に来ては、畑の仕事やら店の仕事を手伝ってくれる。
その間も俺は一応付き合う気はないと何度か口にしたものの、黒崎さんは最初の頃と変わらずいくら言ってもへこたれる様子はなく、むしろ「私のこと、好きにしてみせますから!」と彼女に意気込ませてしまうばかりだった。
しかし黒崎さんの事ばかりに気をとられるわけにもいかなかった。
烏野バレー部のやつらの、成長には目を見張るものがあって。
猫又先生に煽られてのせられた気がしていたが、もしかしたら本当にコイツらなら、大舞台にいってくれるんじゃねぇかって、そんな希望が見えてきていた頃だった。
だから、彼女のことは放置していい問題ではなかったものの、彼女の優しさに甘えてズルズルと付き合いもせず、かといって拒絶もせずの態度をとってしまっていた。
そんなある日の部活終わり。
その日は練習相手として、烏野高校バレー部OBをメインとした烏野町内会チームを呼んでいた。
「おい、今日この後飲みに行かないか?」
「おっ、いいな! 行こうぜ! な、繋心!」
嶋田の誘いに、すぐに滝ノ上が反応を返す。
大体こいつらが集まると飲み会になるのはお決まりのパターンだ。
「そーだな、行くか。行成、お前も行くだろ?」
「えっ…俺また飲まされるんすか?!」
俺が声をかけた森行成は、町内会チームでも最年少。
飲みに行くたび大体滝ノ上や内沢さんが飲ませるもんだから、最近は飲み会と聞くとビビってしまうようだ。
仕方ないから、たまには助け舟を出してやるか。
「今日は、ほれ、ハンドルキーパー任すから」
「あっ、それだったら行きます!」
俺の言葉にホッとしたのか、現金な返事がかえってきた。
「つってお前タダ飯食う気だろ」
「バレました?」
「ったく今時の若いもんわ」
「俺と嶋田さん達そんな年変わんないでしょうよ」
あはは、と盛り上がる嶋田達から離れ、携帯片手に体育館の外に出る。
お疲れさまでした、と声をかけて部室へ戻る部員達に軽く手を振って、意識を携帯の方に集中させた。
ワンコール、ツーコール。
スリーコール目で、『はい、もしもし』と声が聞こえた。