スモーキー・ブルース/烏養繋心
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その日はいつものように、店番をしていた。
商店街からは少し離れたこの『坂ノ下商店』は、俺の母方の実家である、小さな店だ。
店内には生活雑貨の並んだ棚があり、奥へ行けば小さいが肉や魚なんかも多少置いてある冷蔵の棚がある。
カウンターにはコンビニよろしく肉まんなんかが並ぶホットショーケースも置いてある。
近所にコンビニなんて便利なものがないここいらでは、この坂ノ下商店がコンビニ兼スーパーみたいな存在だ。
のんびりした烏野の町内の雰囲気と同様、平日の昼時をのぞけば、店の一日ものんびりとしたものだった。
10時頃おばちゃんが2、3人買い物に来た以降、客は来ない。
カウンターで読んでいた漫画雑誌も読み終わって、暇を持て余していた。
「繋心、暇なら表の掃除でもせんか」
「……へいへい」
母ちゃんに言われて、ホウキ片手に仕方なく店の外へ出る。
口元が寂しくて、煙草に火をつけた。
ぼんやりと青空を眺めながらごみを掃いていると、遠くからこちらに向かって駆けてくる足音が聞こえた。
足音はちょうど俺の後ろで止まり、次には息切れした声が聞こえてきた。
振り返ると、若い女が1人、肩で息をしながら上目遣いで俺を見ている。
買い物客にしては様子がおかしい。
店の中に入る気配がないし、何よりずっと俺を見つめたままだ。
が、いくら考えても、目の前の女の顔に見覚えは無い。
「…トイレなら、ソコにあるんで勝手に使ってどうぞ」
見知らぬ俺に用があるといったら、トイレくらいしか思いつかなかった。
ここらにはコンビニもないから、催したらそこらの家のを借りるしかない。
けれど、目の前の彼女はぶんぶんと首を振った。
どうやらトイレを借りたいわけではないらしい。
……道にでも迷ったのか?
「ナニ。迷子か?」
俺の言葉に、また首を振る。
迷子でもないなら、いったい何の用なのか。
俺がまた質問しようとした時、女は目一杯息を吸い込んで、口を開いた。
「烏養、繋心さん、ですよね」
見知らぬ女に自分の名を呼ばれ、思わず目を丸くした。
俺の名を知っているということは、誰かの知り合いだろうか。
誰の知り合いで、何の目的で。
考えてもさっぱり分からないので、俺はとりあえず頷いてみせた。
「良かった! 思った通り素敵な方で」
「はぁ……? 」
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