離れてもすきなひと/黄金川貫至
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
美咲さんに会いたくて、ここまで来た。
だけど、どこか後悔している俺がいた。
同じ空間にいることが苦しかった。
美咲さんの出番が終わるのも待たずに、俺は出口に向かっていた。
「…お、おい、黄金?」
「スンマセン、ちょっと気分が」
「大丈夫かよ」
黙って出て行こうとした俺に、二口先輩が心配そうに付き添ってくれた。
「人に酔ったのか? 美咲ちゃん出てきたってのに元気なかったもんな。……水飲むか? 吐きそうならトイレ行けよ」
「大丈夫っす。ありがとうございます。……スンマセン、途中で抜けて」
「いや、俺は別にいいけど。気分良くなったら戻るか? まだ美咲ちゃんの出番終わってねぇかも……」
二口先輩の言葉に、俺は力なく首を横に振った。
俺の返答がよほど予想外だったのだろう。
二口先輩は驚いた顔をした。
「は? 何、そんなに気分悪いわけ? 風邪でもひいたか?」
その言葉に、俺はまた首を横に振った。
「……美咲さん、来て欲しくなさそうだったんです」
「……今日の、ライブにか」
「はい。…でも俺、半年も会えてないし、いつ帰ってくるかも分からないって美咲さんに言われて。無理やりにでもライブに行かなきゃダメだって思ったんです。
距離が離れてるから、そばにいられないし、電話越しで話すだけじゃ足りなかった。
遠距離になっても俺の気持ちは大きくなっていくのに、美咲さんはそうでもないような気がして、不安で」
初めての彼女で、勝手が分からないことがいっぱいあった。
どんなことをしたら喜ぶのか、どんなことをしたら嫌われるのか、全部手探りの毎日で。
それなのにいきなり遠距離になって、俺は不安でたまらなかったんだ。
だけど、夢に向かって頑張る美咲さんに『不安だ』って直接言えない。
そんなこと言ってしまったら、美咲さんを縛ってしまうから。
言葉にして、ようやく自分の気持ちがハッキリしていった。
「それ、ちゃんと本人に話したのか?」
二口先輩の言葉に首を振るのは何度目だろうか。
俺が首を振ると、二口先輩は深いため息をついた。