デートの後で…/鎌先靖志
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だけど、それは私の壊滅的な運動音痴を見るまでの話で……。
中学の時、あまりにも運動音痴すぎて、途中からみんなの視線が冷たくなっていった覚えがある。
高校でもそうなんじゃないかな、って怖くなった。
でも出ないわけにはいかなくなってしまったから、少しでも力になれるようにと、球技大会まで昼休みや放課後に練習することにした。
参加する競技は、バレー。
壁相手に練習をしてみたり、友達に頼んで一緒に練習してもらったりして、ボールに慣れる様に頑張った。
頑張ったんだけど、やっぱりちっとも上手くならない。
一緒に練習してくれた友達がため息をついてしまうくらい、壊滅的な下手さだった。
ボールをよく見て、落下地点に動いて、ボールを受ける。
頭では分かっているのに、体は全く言う事を聞いてくれない。もう何度ボールとキスをしただろうか。
しまいには友達は笑い出してしまって、練習にならなくなってしまった。
「練習に付き合ってくれてありがとうね」
「いいよ。……練習になったか分かんないけどね」
笑って友達は言っていたけど、その言葉は私の胸に突き刺さった。結構グサリときた。友達の言葉が、悪意をはらんでいるのかは、よく分からなかった。
知りたくなかったから分からなくてよかったのかもしれない。中学の時みたいに、冷たい視線に晒されるのはもう嫌だから。内心、友達が何を考えているか分からなかったけど、深く知るのが怖くて知らぬふりをすることにした。
友達と別れて、私はまた一人で壁相手に練習を始めた。
何度やってもボールを受けることが出来なくて、壁さえも私を笑っているような気がしてくる。
段々ムカムカしてきて、強めにボールを壁に放った。
そのせいでまた受けそこねたボールは遥か後方へと飛んで行ってしまった。
ボールの行方を追って振り返ったとほぼ同時に、ボールがふわっと宙に浮いたのが目に入った。弧を描いてボールが私の元に返ってくる。キャッチしようと思うのに、体はやっぱり言う事を聞かない。
「っ!」
「おわっ! 大丈夫か、黒崎」
ヒリヒリと痛む鼻頭をさすって、「大丈夫」と返すと、鎌先くんは心配そうに私の顔を覗き込んできた。
鎌先くんにじっと見つめられると、私の心臓はどくりと音を立てて凄い勢いで体中に血を巡らせ始めた。