栗より甘い、/青根高伸
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「良かったなぁ~。楽しんできたようで何よりだなぁ、青根くん?」
「……?」
「なんでそんなにニヤニヤしてんの?二口」
青根と黒崎は二人して俺の言動を訝しんでいるようだった。
これがニヤニヤせずにいられるかっての。
いい話のネタになるってことを、こいつらは分かっていないらしい。
「いんや~?べっつにぃ~?良かったじゃん、ラブラブで」
「!!」
「えへへ」
照れ笑いする黒崎よりも真っ赤な顔で、今にもショートしそうな青根を見たら、また噴き出してしまった。
どうやら青根は無意識に惚気てしまっていたようだ。
黒崎に対して緩んだ気持ちを、外では締めるというのを忘れてしまったのかもしれない。
この二人を見ているのは、ほんっと飽きない。
面倒くさいことに巻き込まれることも多いけど。
「にしてもさぁ、こんなにもらっても食いきれねぇよ」
紙袋を覗き込んで、再度栗の数を確認する。
5~60個はありそうだ。
特別栗が嫌いなわけじゃないが、好きでもない。
こんなに量もらってもどうしろって言うんだ……。
「それでも結構減らしたんだけどね」
「マジかよ……お前らどんだけ栗拾ってんだよ。業者か」
「……(ふるふる)」
「いや冗談だから、青根」
「あはは」
俺の軽口に青根は真面目な顔をして首を振る。
それを見て黒崎がお腹を抱えて笑い出した。
いや笑いごとじゃないんだけど、黒崎。
マジでこの栗どうしたらいいんだ……。
目の前の幸せそうな二人に手渡された紙袋を見つめて、俺は朝から途方に暮れた。
幸せのおすそ分けとでもいうのだろうか、紙袋の中の栗はとにかく重かった。
惚気全開のこいつらの幸せ分、重いような気がして、ちょっとだけ腹が立ってきた。
……お前ら一回爆ぜろ!栗ごと爆ぜろ!
そんな俺のむなしい心の叫びは、青根と黒崎には届かなかった。
おしまい
9/9ページ