栗より甘い、/青根高伸
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-青根side‐
聞きたくなかった。
黒崎の口から、あんな言葉なんて。
だけど薄々感じてもいた。
自分は黒崎の相手にふさわしくないのではないかと。
いつだって彼女は笑顔で自分の隣にいてくれる稀有な存在だった。
けれど、二口といる時の彼女の方が自然体な感じがした。
口の悪い二口と、じゃれあうように会話する黒崎は、俺と二人きりの時とは全く違う顔をしていた。
今日だって、二口と何か楽しそうに話していて。
気になって近づいてみれば、俺の愚痴を口にしていて。
自分でも、気の利く方ではないのは分かっているし、こと恋愛においては鈍いところがあると自覚している。
だけど、彼女にあんなにハッキリと。
「合わない」なんて言われたくなかった。
思わず口から別れの言葉が飛び出してしまったけれど、本当はまだ、一緒にいたいと思う。
だけど、無理に自分に付き合わせるのは黒崎に悪い。
相性が悪かったのだと、諦めるしかないのだろう。
「……っ、青根くん!!青根くん、待って!!」
諦めるしかないのに、何故、こんなに黒崎の声に胸が躍るのだろう。
追いかけてきてくれて、嬉しいと思うのだろう。
目に熱いものがこみあげてきて、唇をかみしめる。
黒崎の顔を見るのが怖くてたまらない。
振り返る勇気は、俺にはない。
「青根くん、さっきはごめんなさい!だけど青根くんのこと嫌いになったわけじゃないの。むしろ好きすぎて困るぐらいなの…」
「……」
黒崎の声は震えている。
きっと涙をこらえているのだろう。
「あのね、私ほんとに青根くんのこと大好きでね。…でも青根くん、その、キス、とか、それ以上のこととか、絶対してこないでしょ?…だから、青根くんは私のこと、ほんとに好きなのかなぁ?って不安になって……」
「……」
「…だからって、あんな話、目の前でされたら気分悪いよね……ごめんなさい…」
黒崎の言葉はそこで途切れてしまった。
すすり泣きのようなものが聞こえてきて、胸がぎゅっと苦しくなる。
深呼吸を一つして、黒崎の方に向き直ると、目を真っ赤にした彼女と目があった。
「…青根くん、ごめんなさい…別れたくない…別れたくないよぉ……」
「……すまなかった…」