奇音変人ルームシェア



 Q県の国道8と1分の4号線の外れにある、平たい田舎道某所。
そこには、奇妙な音ともに変わった人が住むという住宅があった。

 その建物のまえへ、昏尾 波虎(くれお ぱとら)という少女とも女性ともいえない半端な年齢の人物が、(おそらく彼女にとっては)大荷物であるキャリーケースを、まだ2月のやや陽が長くなり気温が緩んできただけの、まだ春には程遠い昼下がりを、パーカーと部屋着のスウェットズボン姿でノコノコと歩いていた。

「ぜぇ、はあ……こんなに歩いたのは久々だ……」

 彼女は引きこもりである。
だがなんの縁か、昏尾の兄の友人がルームシェアをしていると聞かされた頃には遅かった。
「おまえ、あそこで住め」

 昏尾は叫んだ。
「はァ———?なんだとコラ!私は実家から出ねぇぞクソメガネ!!」

 それが、押し切られて住所変更だとかなんだとかを済ませてしまった。

「すみませーん」

 インターホンを鳴らそうとした時、やや幼げな歌声と手を叩く音が聞こえた。

「ぱーぴるす、いちまんじゃーく」
「ないるのほとりで、えじぷとおどりを」
「さあおどりましょ」

 ぺちぺちぺちぺち

 庭の玄関先からじゃ死角になる裏手の方を覗くと、身長が高く、腕が肩からではなく頭からツインテールのように生えている少女のような何かと、電話ボックスくらいの大きさな白髪の人物が(おそらくアルプス一万尺のような感じで)お互いの手を叩いている。

 少女のような何かに高さを合わせてしゃがんでいる白髪の人物がこちらを見た。
「オマエが新しい住民ワラか?!」

 その声の元気さに、一瞬昏尾は耳を塞ぎ、答えた。
「あ、はい。昏尾と申します」

 白髪の人物がおもむろに羽織っていたコートを脱いで、その腕を見せた。
バラバラに全てが動いて、まるでタコやムカデのように見える。
「妾はわらわ セルナという!!よろしく!」

 すると、背後でそれを見ていた頭からツインテールのような腕が生えている人物が、柔和な微笑みを浮かべた。
「私はFM-1エフエムワンです。よろしくお願いしますね、昏尾さん」

 昏尾はその微笑みに微笑みで返した。
すると、セルナの高身長が思いっきりのしかかってきた。

 彼女は152cmなのに対し、セルナは恐らく2m超え。
「ヴッ」

「可愛いワラ!!小さいワラ!道端で見かけたら中学生だと思われても文句ないワラよ!!」
 全部の腕で抱きしめられたり、わしゃわしゃされているので圧力がものすごい。

「ぉ、おもいです、はなしてください……」


 だが、セルナは離さなかった。
(この人物理的に重いな——!!)

 内心で、昏尾はそう思った。
春はまだ来ない。
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