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SSS

「なにをしている?」
 訝りながら声をかけると、彼女はちらりとこちらに一督をくれた。落ちてきたコインをぱっと両手で受け止め、逆に訊き返してくる。
「影二はさ......表と裏、どっちだと思う?」
 つまり、なにをしているでもなく無為の時間を過ごしているらしい。遊んでばかりいてビリーの やつがまた怒るぞ、とは言わなかった。結局のところハワード・コネクションが構成員一人分の給料を無駄に支払っていようが、自分には関係のない話である。
「表だ」
  渋々答える。
「当たってるかな?」
「外すはずがない。まあ当てたからとて、得があるわけでもないが」
 と言いつつユナの手を上から覗き込んだのは、その唇に含められた悪戯っぽい微笑みが気になったからだった。よもやイカサマなどしてはおらぬ だろうなと疑いつつ、彼女の手を凝視する。
 が、勿体ぶって開かれた手の中では、予想に反して――いや、予想通りと言うべきだろうか。エイブラハム・リンカーンの横顔がてらてらと赤茶色に光っていた。
 なんとなく拍子抜けしながらユナを見る。と、
「大当たり。なんて、隙ありだね。影二」
 コインを放り投げて飛びついてきた彼女は、酷く挑発的に囁いた。



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