このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

SSS

 まばたきする彼女を、見ていた。長い睫毛が目の下に翳りを落として表情を陰鬱にする、そのさまを。
「綺麗だなあ、バイスちゃん」
 うっとりと呟く俺に、彼女はいっそう顔を引き攣らせながら言った。
「鬱陶しいんだよ」
「知ってる」
「今この瞬間にも首をかき切ってやりたいくらい」
「君が望むなら、すぐにでも」
 後じさる彼女の手をついと取って、爪の先に口付ける。おびただしい量の血を吸ってなお――あるいは、真摯に残酷であればこそこんなにも甘いのか。
「この世でもっとも誠実な君。確かな君」
 酷く胸の詰まる心地で見上げると、彼女はどうしてか途方にくれた顔をした。


14/23ページ