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「如月、てめえ既婚者だったか?」
 左手の薬指にシンプルな銀色の輝きを見つけ、 ビリー・カーンは同僚の顔をまじまじと眺めた。 そういえば彼――如月影二とプライベートの話を したことはなかったかもしれない。いつでも仏頂面で浮いた話のひとつもないような彼に、そういった相手がいるとは思わなかったというのが正直なところだ。
「ああ、いや。予約だ」
それがどうしたという顔で、影二。
「予約?」
「婚約ともいうが。そんなことも知らんのか」
 傲岸不遜な言い方はまったく彼らしい。てめえと付き合うなんてよっぽどできた女なんだろうな――とビリーが呟くと、影二は複雑そうに少しだ け頬を引きつらせた。
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