中学一年生
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緑間君との“勝負”が一段落したタイミングで、彼が気になる情報を提供してくれた。
「お前のことだから心配いらないと思うが、一応忠告しておく。今回の件、お前にとっては普通の対応でも、それを特別扱いだと感じる奴もいることを忘れるなよ。紫原がいい例だ」
聞き覚えのある台詞と名前に、思わず将棋の駒を片付ける手を止めた。
それは、紫原君と知り合ってすぐの頃、彼との確執に悩んでいた私に対して赤司君が似たようなことを言ったのだ。
あの時は訳の分からないうちに事態が収束してしまったので、結局紫原君が何に怒っていたのか把握しかねるまま今に至っている。
なので、心配いらないどころか、また同じ過ちを繰り返してしまう可能性を十二分に残しているのだった――内心焦った私は、緑間君に詳細を促した。
「紫原君? 彼がどうかしたのか?」
「オレも詳しくは知らん。だが、お前と黒子が放課後密かに練習していると知った後、紫原の機嫌が悪くて大変だった」
当時を思い出したのか苦々しい表情を見せる緑間君に対し、私はその発言によって更に疑問符を浮かべることになった。
あの日、赤司君に体育館から出るよう促された後、外に残っていた緑間君とは対照的に、紫原君はすぐに帰ったので中の会話を聞かなかったはずだ。
つまり、緑間君曰く『特別扱い』と捉えられそうな一連の対応を、紫原君は知る機会になかったはずなのだが――
「緑間君。黒子君に提案した昇格テストのこと、紫原君に話したか?」
「まだだ。言う必要があるなら、藍良から角が立たないように伝えろ」
ということは、私や赤司君が三軍の選手に目をかけたり実戦形式の昇格テストを提案したりするという『特別扱い』を、紫原君はまだ知らないことになる。
ならば何が彼の機嫌を損ねたのだろうか?
あるいは、作中で二人がバスケに対する姿勢について意見を戦わせていたように、あの僅かな邂逅で既に相容れないことを感じ取ったのか――そんな解釈はさすがに無理があるか。
このように、これが漫画なら、少ない描写から登場人物の心情を推察するしかなかったが、今は彼らと言葉を交わすことができる場所にいる。
今更次元が違うだの価値観が違うだのという言い訳は通用しない――そんな常識は免罪符にもならない。
平等と信仰を両立するヒーローを目指すなら、どんな苦境でも逆境でも結果を出すべきなのだ。
「分かった。忠告ありがとう、緑間君――ところで、君はどう思ってるんだ?」
「……? 何がだ」
「今回の件だ。私にとって普通の対応だという君の表現はまさにその通りだが、君自身はどう感じたんだ?」
結局、この質問に彼は答えてくれなかった。
自分で考えろということらしい。
紫原君の時もそうだが、緑間君との確執が解消された時も、私は何も関与できなかった。
緑間真太郎が何を考え、何故私のやり方を『気に食わない』と評したのか、知らないのである。
どう思われても受け入れられればそれでいいと、そこで思考を止めてしまったからだ。
そんな私にヒーローの資格はない。
言葉を交わし、彼らを理解しなければ、生存権の獲得などあり得ないのだ。
そういうわけで、緑間君と別れた後、偶然を装って紫原君に会いに行った。
別段大層なことをしなくても、彼の行動範囲をうろついていたら容易く廊下で鉢合わせることができた。
「あー、藍ちんだ。おはよー」
「おはよう。もう昼過ぎだがな」
普段通り挨拶を交わしつつ、こっそりと紫原君の一挙手一投足に目を配る。
ポテトチップスを頬張る様子は特に機嫌が悪そうには見えないが、そもそも私の観察眼が当てにならないのは経験から自覚している。
廊下での飲食を注意した後、思い切って雑談の体で黒子君の話題を振ってみることにした。
「そういえば、黒子君が――」
「は?」
ドスの効いた声に、後に続けようとした台詞が頭から吹っ飛んだ。
「お前のことだから心配いらないと思うが、一応忠告しておく。今回の件、お前にとっては普通の対応でも、それを特別扱いだと感じる奴もいることを忘れるなよ。紫原がいい例だ」
聞き覚えのある台詞と名前に、思わず将棋の駒を片付ける手を止めた。
それは、紫原君と知り合ってすぐの頃、彼との確執に悩んでいた私に対して赤司君が似たようなことを言ったのだ。
あの時は訳の分からないうちに事態が収束してしまったので、結局紫原君が何に怒っていたのか把握しかねるまま今に至っている。
なので、心配いらないどころか、また同じ過ちを繰り返してしまう可能性を十二分に残しているのだった――内心焦った私は、緑間君に詳細を促した。
「紫原君? 彼がどうかしたのか?」
「オレも詳しくは知らん。だが、お前と黒子が放課後密かに練習していると知った後、紫原の機嫌が悪くて大変だった」
当時を思い出したのか苦々しい表情を見せる緑間君に対し、私はその発言によって更に疑問符を浮かべることになった。
あの日、赤司君に体育館から出るよう促された後、外に残っていた緑間君とは対照的に、紫原君はすぐに帰ったので中の会話を聞かなかったはずだ。
つまり、緑間君曰く『特別扱い』と捉えられそうな一連の対応を、紫原君は知る機会になかったはずなのだが――
「緑間君。黒子君に提案した昇格テストのこと、紫原君に話したか?」
「まだだ。言う必要があるなら、藍良から角が立たないように伝えろ」
ということは、私や赤司君が三軍の選手に目をかけたり実戦形式の昇格テストを提案したりするという『特別扱い』を、紫原君はまだ知らないことになる。
ならば何が彼の機嫌を損ねたのだろうか?
あるいは、作中で二人がバスケに対する姿勢について意見を戦わせていたように、あの僅かな邂逅で既に相容れないことを感じ取ったのか――そんな解釈はさすがに無理があるか。
このように、これが漫画なら、少ない描写から登場人物の心情を推察するしかなかったが、今は彼らと言葉を交わすことができる場所にいる。
今更次元が違うだの価値観が違うだのという言い訳は通用しない――そんな常識は免罪符にもならない。
平等と信仰を両立するヒーローを目指すなら、どんな苦境でも逆境でも結果を出すべきなのだ。
「分かった。忠告ありがとう、緑間君――ところで、君はどう思ってるんだ?」
「……? 何がだ」
「今回の件だ。私にとって普通の対応だという君の表現はまさにその通りだが、君自身はどう感じたんだ?」
結局、この質問に彼は答えてくれなかった。
自分で考えろということらしい。
紫原君の時もそうだが、緑間君との確執が解消された時も、私は何も関与できなかった。
緑間真太郎が何を考え、何故私のやり方を『気に食わない』と評したのか、知らないのである。
どう思われても受け入れられればそれでいいと、そこで思考を止めてしまったからだ。
そんな私にヒーローの資格はない。
言葉を交わし、彼らを理解しなければ、生存権の獲得などあり得ないのだ。
そういうわけで、緑間君と別れた後、偶然を装って紫原君に会いに行った。
別段大層なことをしなくても、彼の行動範囲をうろついていたら容易く廊下で鉢合わせることができた。
「あー、藍ちんだ。おはよー」
「おはよう。もう昼過ぎだがな」
普段通り挨拶を交わしつつ、こっそりと紫原君の一挙手一投足に目を配る。
ポテトチップスを頬張る様子は特に機嫌が悪そうには見えないが、そもそも私の観察眼が当てにならないのは経験から自覚している。
廊下での飲食を注意した後、思い切って雑談の体で黒子君の話題を振ってみることにした。
「そういえば、黒子君が――」
「は?」
ドスの効いた声に、後に続けようとした台詞が頭から吹っ飛んだ。