中学一年生
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そこから先は、掻い摘んで状況を報告する。
まず黒子君を引きずるようにして学校へ戻ると、彼を第四体育館に放り込み(中にいた青峰君が目を丸くしていた)、次に制服に着替え帰ろうとしていた赤司君を呼び止め、黒子君と引き合わせた。
私が所々でしゃばっている以外は、大抵原作通りに物事が進んでいる。
「面白いな……初めて見るタイプだ。もしかしたら、オレ達とは全く異質の才能を秘めているのかもしれない」
そして原作通り、赤司君は黒子テツヤの可能性を瞬時に見抜いた――ここまで問題なし。
その後、青峰君や、一緒に体育館に来た緑間君と紫原君に退出を促した。
「待て。どうして藍良まで出て行こうとしてるんだ?」
「え? だって今、先に帰ってくれって……」
彼らに続いて体育館を出ようとした私を、赤司君は不意を突かれたような声で呼び止めた。
ひとまず精神の安定化に成功したのも一因ではあるが、むしろ青峰君達ですら退室したのに、部外者の私に在室の権利は当然ないと思うのだが、どうやら赤司君の見解は異なるらしい。
「オレに彼を紹介したのはお前だろう。なら、最後まで付き添うことでその責任を果たすべきだ」
「……それもそうだな。では失礼する」
今更彼が私如きを必要とするとは到底思えないけれど、彼の理屈は確かに正しい。
何より『責任』と言われると弱い。
ならばなるべく気配を消していようと、赤司君に目礼してから扉を閉め体育館の隅の方で身を縮めた。
「あの……、紹介ってどういうことですか? 藍良さんがボクのことを何か話したんですか?」
「藍良に事情を訊いてないのか?」
「はい。バスケコートにいたら空から藍良さんが降って来て、一軍に入らないかと言われて、それ以上説明のないままここに連れて来られたので……」
「空から降って来た……?」
「赤司君。早く本題に入ってくれ」
取り乱した時の私の状態を深く掘り下げないでくれ。
奇行が過ぎて赤司君に手に負えない奴だと思われたくない。
「……まあいい。いくつか質問してもいいかな」
「……?」
覚えのある台詞に、ようやく軌道を修正できたと胸を撫で下ろした。
そういえば、この後の問答は漫画には一切の描写がないのだった。
さて、黒子テツヤとのファーストコンタクトで、赤司征十郎はどう話を展開するのだろうか。
「藍良とは知り合いだそうだが、具体的にどういう関係なんだ?」
「一番に訊くことがそれか?」
邪魔をしないよう息を殺していたのに、予想外すぎる切り出しに思わず突っ込んでしまった。
だって、こんな酷いやり取りは、原作どころかどの世界線にも皆無のはずだ。
その質問から、どうやって黒子君の素質を見極める気なんだ。
赤司君が乱心したとしか考えられないような質問事項に、黒子君は暫し目を白黒させていたが、ややあって律儀に答えた。
「春に知り合って、全中の後から個人的に練習を見てもらっています」
「そうか。じゃあ、オレが六番目 の話をした時には、既に彼を知っていたんだな」
唐突に、赤司君の矛先が私に向いた。
ここで爽やかな笑顔を見せる意味が分からない。
何故か私は浮気がバレた時の恋人の心持ちでいながら(恐れ多すぎる)、必死に言い訳を紡いだ。
「……心当たりがないと言った覚えはないよ」
「そうだな。あの時意図的に隠したのだとしても、今こうして紹介してくれているのだから良しとしよう」
『良しとしよう』と言っている割に、言葉の端々に棘がある。
それに、赤司君の笑みが一向に崩れない――何これ怖っ。
無言の圧力に押し負け口を閉ざすと、それを見計らって問答が再開された。
しかし、私の心境とは裏腹に、その後は恙なく平凡な質疑応答が続いた。
バスケはいつから始めたのか、どのくらい練習しているのか、私との練習頻度はどのくらいか、などなど。
時折私の名前が登場してしまうのは、やはり私の存在が悪い意味でキャラクターに影響を与えてしまっている所為だろう。
やがて、赤司君は原作と同じ感想を下した。
「……なるほど。やはり面白いな。初めて見るよ、キミほどバスケットボールに真剣に打ち込み、その成果が伴っていない人は」
その瞬間、まるで雷に打たれたように、黒子君の顔に衝撃が走ったのを目にした。
赤司君の性格と黒子君の特性を鑑みれば純粋な感想だと理解できるのだが、何も知らなければただの悪口にしか聞こえないもんな。
「すみません……ちょっと今その言葉を受け止めることができる精神状態ではないです」
「ああっすまない。そうゆう意味ではないんだ。オレは感心しているんだよ」
そして、赤司君は語る。
黒子君の存在感のなさは長所であり、生かすことができれば必ず大きな武器になる、と。
「さすが、藍良が目を掛けるだけはあるな」
一通り解説した後、赤司君はそう言い添えた。
……引っ張るなあ。
赤司君の中で、六番目 の課題がいかに急務だったか窺える。
「それで、一軍に入らないかというのは……?」
「悪い。その話は私がしよう」
黒子君の疑問の声に、挙手して彼らの間に割り込んだ。
二人分の視線を浴び、密かに唾を飲み込む。
慎重に、慎重に話を進めなくては。
「紛らわしい言い方をして申し訳ないが、今すぐ一軍に入れるというわけではない。だが、もし赤司君が言うところの『存在感のなさ』を生かすことができたなら、一軍に入る資格が充分にあると私は考えている」
むしろ。
一軍にいてこそ、その才は際立つ。
「残念ながら赤司君と同じく、新しい型 について私の口から言えることはない。けれど、もしも君に、バスケを続ける意思があるのなら、向上の意思があるのなら――」
何処かの神様。
「私が全力で叶えると誓おう」
平等と信仰のもとに英雄と成ることを、誓います。
まず黒子君を引きずるようにして学校へ戻ると、彼を第四体育館に放り込み(中にいた青峰君が目を丸くしていた)、次に制服に着替え帰ろうとしていた赤司君を呼び止め、黒子君と引き合わせた。
私が所々でしゃばっている以外は、大抵原作通りに物事が進んでいる。
「面白いな……初めて見るタイプだ。もしかしたら、オレ達とは全く異質の才能を秘めているのかもしれない」
そして原作通り、赤司君は黒子テツヤの可能性を瞬時に見抜いた――ここまで問題なし。
その後、青峰君や、一緒に体育館に来た緑間君と紫原君に退出を促した。
「待て。どうして藍良まで出て行こうとしてるんだ?」
「え? だって今、先に帰ってくれって……」
彼らに続いて体育館を出ようとした私を、赤司君は不意を突かれたような声で呼び止めた。
ひとまず精神の安定化に成功したのも一因ではあるが、むしろ青峰君達ですら退室したのに、部外者の私に在室の権利は当然ないと思うのだが、どうやら赤司君の見解は異なるらしい。
「オレに彼を紹介したのはお前だろう。なら、最後まで付き添うことでその責任を果たすべきだ」
「……それもそうだな。では失礼する」
今更彼が私如きを必要とするとは到底思えないけれど、彼の理屈は確かに正しい。
何より『責任』と言われると弱い。
ならばなるべく気配を消していようと、赤司君に目礼してから扉を閉め体育館の隅の方で身を縮めた。
「あの……、紹介ってどういうことですか? 藍良さんがボクのことを何か話したんですか?」
「藍良に事情を訊いてないのか?」
「はい。バスケコートにいたら空から藍良さんが降って来て、一軍に入らないかと言われて、それ以上説明のないままここに連れて来られたので……」
「空から降って来た……?」
「赤司君。早く本題に入ってくれ」
取り乱した時の私の状態を深く掘り下げないでくれ。
奇行が過ぎて赤司君に手に負えない奴だと思われたくない。
「……まあいい。いくつか質問してもいいかな」
「……?」
覚えのある台詞に、ようやく軌道を修正できたと胸を撫で下ろした。
そういえば、この後の問答は漫画には一切の描写がないのだった。
さて、黒子テツヤとのファーストコンタクトで、赤司征十郎はどう話を展開するのだろうか。
「藍良とは知り合いだそうだが、具体的にどういう関係なんだ?」
「一番に訊くことがそれか?」
邪魔をしないよう息を殺していたのに、予想外すぎる切り出しに思わず突っ込んでしまった。
だって、こんな酷いやり取りは、原作どころかどの世界線にも皆無のはずだ。
その質問から、どうやって黒子君の素質を見極める気なんだ。
赤司君が乱心したとしか考えられないような質問事項に、黒子君は暫し目を白黒させていたが、ややあって律儀に答えた。
「春に知り合って、全中の後から個人的に練習を見てもらっています」
「そうか。じゃあ、オレが
唐突に、赤司君の矛先が私に向いた。
ここで爽やかな笑顔を見せる意味が分からない。
何故か私は浮気がバレた時の恋人の心持ちでいながら(恐れ多すぎる)、必死に言い訳を紡いだ。
「……心当たりがないと言った覚えはないよ」
「そうだな。あの時意図的に隠したのだとしても、今こうして紹介してくれているのだから良しとしよう」
『良しとしよう』と言っている割に、言葉の端々に棘がある。
それに、赤司君の笑みが一向に崩れない――何これ怖っ。
無言の圧力に押し負け口を閉ざすと、それを見計らって問答が再開された。
しかし、私の心境とは裏腹に、その後は恙なく平凡な質疑応答が続いた。
バスケはいつから始めたのか、どのくらい練習しているのか、私との練習頻度はどのくらいか、などなど。
時折私の名前が登場してしまうのは、やはり私の存在が悪い意味でキャラクターに影響を与えてしまっている所為だろう。
やがて、赤司君は原作と同じ感想を下した。
「……なるほど。やはり面白いな。初めて見るよ、キミほどバスケットボールに真剣に打ち込み、その成果が伴っていない人は」
その瞬間、まるで雷に打たれたように、黒子君の顔に衝撃が走ったのを目にした。
赤司君の性格と黒子君の特性を鑑みれば純粋な感想だと理解できるのだが、何も知らなければただの悪口にしか聞こえないもんな。
「すみません……ちょっと今その言葉を受け止めることができる精神状態ではないです」
「ああっすまない。そうゆう意味ではないんだ。オレは感心しているんだよ」
そして、赤司君は語る。
黒子君の存在感のなさは長所であり、生かすことができれば必ず大きな武器になる、と。
「さすが、藍良が目を掛けるだけはあるな」
一通り解説した後、赤司君はそう言い添えた。
……引っ張るなあ。
赤司君の中で、
「それで、一軍に入らないかというのは……?」
「悪い。その話は私がしよう」
黒子君の疑問の声に、挙手して彼らの間に割り込んだ。
二人分の視線を浴び、密かに唾を飲み込む。
慎重に、慎重に話を進めなくては。
「紛らわしい言い方をして申し訳ないが、今すぐ一軍に入れるというわけではない。だが、もし赤司君が言うところの『存在感のなさ』を生かすことができたなら、一軍に入る資格が充分にあると私は考えている」
むしろ。
一軍にいてこそ、その才は際立つ。
「残念ながら赤司君と同じく、新しい
何処かの神様。
「私が全力で叶えると誓おう」
平等と信仰のもとに英雄と成ることを、誓います。