中学一年生
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青峰君と試合をした翌日の休み時間、廊下を歩いていると背後で私を呼び止める声がした。
聞き覚えのある声色に一瞬で身体が硬直し、恐る恐る振り返った先には予想通りの人物がいた。
“キセキの世代”NO.1シューター・緑間真太郎。
彼が、廊下の中央で待ち構えていたのだ。
身長が170センチを超える男が仁王立ちする様はなかなか迫力があるものの、彼の手に収まるクマのぬいぐるみが見事に緩和している。
きっとあれが今日のラッキーアイテムなのだろうが、クマのぬいぐるみといっても、I・H予選の際のものとは別物である。
一体何種類のぬいぐるみを所有しているのだろうか。
機会があれば是非彼の自宅を拝見したいものだ。
「何の用だ? 緑間君」
「――っ! 何故オレの名前を知っているのだよ!!」
「いや、同じバスケ部じゃないか」
そう言うと、図星を突かれたように彼は言葉を詰まらせた。
数瞬沈黙が訪れたが、やがて仕切り直すように眼鏡のつるを押し上げた。
「……なるほどな。確かにあんな噂が立つだけのことはあるのだよ」
「あんな噂?」
「お前が全校生徒の顔と名前を覚えているという、馬鹿げた噂だ」
「へえ、よく知ってるな。公言した覚えはないんだが」
確か黒子君に話した覚えはあるが、彼はそんなことを言いふらす性格ではないし、一体何処から漏れたのだろうか。
記憶を探っていると、緑間君が何故か絶句していた。
「どうした?」
「いや……。では、スポーツテストの結果が学年女子トップだったというのは本当なのか?」
「本当に何処から聞いたんだ、そんなこと……」
緑間君はその質問には答えず、更に私の個人情報を確認した。
「入学した直後にあった学力テストで全科目満点だったという話は真実か?」
「ああ。だが、あれは赤司君も満点だったぞ」
かつて大学まで卒業した私はともかく、初めて中学生になるはずの彼まで満点とは、もはやさすがと言うしかない。
前世の記憶を持つ私と何故知識量が同等なのだろうか。
緑間君も赤司君の凄さに驚いたのか、無言で私を見つめた。
「えっと……、まだ訊きたいことはあるか?」
「……では、最後だ。お前、星座は何座だ?」
私の星座?
そう言われて、慌てて胸ポケットの生徒手帳を取り出した。
これに私の誕生日が記してあるので、自動的に星座も判明する。
「……お前、自分の誕生日を把握していないのか?」
「興味がなくてな……、あった」
ページを捲り、やっとの目的の項目に辿り着いた。
すると、驚愕の事実が判明してしまった。
なんと、私も蟹座だったのだ。
緑間君にそのことを報告すると、彼は目の色を変えて食いついた。
そして、こう叫んだのだ。
「何っ!? ならば何故今日のラッキーアイテムを持っていないのだよ!」
………。
あれ?
「まさか、おは朝を知らないというわけではないな?」
「存在は知っているよ。だが、おは朝が放送される時間は外出していて――」
見てないんだ、と言う前に、勢いよく肩を掴まれた。
よほど興奮しているのか、やたら力が強い。
「お前ほど人事を尽くしている奴が、何故ラッキーアイテムを持っていない!?」
駄目だ、話が通じない。
「ラッキーアイテムって、そのクマのぬいぐるみのことか?」
「ただのぬいぐるみではないのだよ」
そう言うと、私の肩から手を外し、クマの腹を指で押した。
すると、ぷぴー、となんとも可愛らしい音が鳴ったのだ。
「今日のラッキーアイテムは、押すと音が出るぬいぐるみだ」
「可愛い!」
思わず声を上げてしまった。
今に始まったことではないが、この人は世間体や人の目というものを全く気にしないな。
すると、緑間君は馬鹿にしたようにふんっ、と鼻を鳴らした。
「どうやらオレの思い違いだったようだな。その程度の人事しか尽くせん奴だったとは、見損なったのだよ」
「……え、何が?」
話が全く読めない。
これは私の理解力が乏しい所為だろうか。
「次のテストもバスケも、お前如きには負けないのだよ」
そう言い捨てて、緑間君は背を向けてしまった。
そのまま廊下を歩いて去っていく彼の後ろ姿を見送りながら、入学式の時の黄瀬君を彷彿とさせる強引さだったとぼんやりと思った。
そして、あのやり取りからなんとなく理解できたのは、どうやら緑間君はあろうことか私をライバル視しているらしいということだ。
よりによって私相手に『負けない』と啖呵を切るとは、お門違いと言う他ない。
何故なら、私の能力は人を助けるためにあり、人と競うためのものではないからだ。
赤司君はそのことをすぐに理解し無敗記録の戦歴から外してくれたが、緑間君はそうではないようだ。
さて、どうしようか。
「おは朝、録画しようかなあ」
聞き覚えのある声色に一瞬で身体が硬直し、恐る恐る振り返った先には予想通りの人物がいた。
“キセキの世代”NO.1シューター・緑間真太郎。
彼が、廊下の中央で待ち構えていたのだ。
身長が170センチを超える男が仁王立ちする様はなかなか迫力があるものの、彼の手に収まるクマのぬいぐるみが見事に緩和している。
きっとあれが今日のラッキーアイテムなのだろうが、クマのぬいぐるみといっても、I・H予選の際のものとは別物である。
一体何種類のぬいぐるみを所有しているのだろうか。
機会があれば是非彼の自宅を拝見したいものだ。
「何の用だ? 緑間君」
「――っ! 何故オレの名前を知っているのだよ!!」
「いや、同じバスケ部じゃないか」
そう言うと、図星を突かれたように彼は言葉を詰まらせた。
数瞬沈黙が訪れたが、やがて仕切り直すように眼鏡のつるを押し上げた。
「……なるほどな。確かにあんな噂が立つだけのことはあるのだよ」
「あんな噂?」
「お前が全校生徒の顔と名前を覚えているという、馬鹿げた噂だ」
「へえ、よく知ってるな。公言した覚えはないんだが」
確か黒子君に話した覚えはあるが、彼はそんなことを言いふらす性格ではないし、一体何処から漏れたのだろうか。
記憶を探っていると、緑間君が何故か絶句していた。
「どうした?」
「いや……。では、スポーツテストの結果が学年女子トップだったというのは本当なのか?」
「本当に何処から聞いたんだ、そんなこと……」
緑間君はその質問には答えず、更に私の個人情報を確認した。
「入学した直後にあった学力テストで全科目満点だったという話は真実か?」
「ああ。だが、あれは赤司君も満点だったぞ」
かつて大学まで卒業した私はともかく、初めて中学生になるはずの彼まで満点とは、もはやさすがと言うしかない。
前世の記憶を持つ私と何故知識量が同等なのだろうか。
緑間君も赤司君の凄さに驚いたのか、無言で私を見つめた。
「えっと……、まだ訊きたいことはあるか?」
「……では、最後だ。お前、星座は何座だ?」
私の星座?
そう言われて、慌てて胸ポケットの生徒手帳を取り出した。
これに私の誕生日が記してあるので、自動的に星座も判明する。
「……お前、自分の誕生日を把握していないのか?」
「興味がなくてな……、あった」
ページを捲り、やっとの目的の項目に辿り着いた。
すると、驚愕の事実が判明してしまった。
なんと、私も蟹座だったのだ。
緑間君にそのことを報告すると、彼は目の色を変えて食いついた。
そして、こう叫んだのだ。
「何っ!? ならば何故今日のラッキーアイテムを持っていないのだよ!」
………。
あれ?
「まさか、おは朝を知らないというわけではないな?」
「存在は知っているよ。だが、おは朝が放送される時間は外出していて――」
見てないんだ、と言う前に、勢いよく肩を掴まれた。
よほど興奮しているのか、やたら力が強い。
「お前ほど人事を尽くしている奴が、何故ラッキーアイテムを持っていない!?」
駄目だ、話が通じない。
「ラッキーアイテムって、そのクマのぬいぐるみのことか?」
「ただのぬいぐるみではないのだよ」
そう言うと、私の肩から手を外し、クマの腹を指で押した。
すると、ぷぴー、となんとも可愛らしい音が鳴ったのだ。
「今日のラッキーアイテムは、押すと音が出るぬいぐるみだ」
「可愛い!」
思わず声を上げてしまった。
今に始まったことではないが、この人は世間体や人の目というものを全く気にしないな。
すると、緑間君は馬鹿にしたようにふんっ、と鼻を鳴らした。
「どうやらオレの思い違いだったようだな。その程度の人事しか尽くせん奴だったとは、見損なったのだよ」
「……え、何が?」
話が全く読めない。
これは私の理解力が乏しい所為だろうか。
「次のテストもバスケも、お前如きには負けないのだよ」
そう言い捨てて、緑間君は背を向けてしまった。
そのまま廊下を歩いて去っていく彼の後ろ姿を見送りながら、入学式の時の黄瀬君を彷彿とさせる強引さだったとぼんやりと思った。
そして、あのやり取りからなんとなく理解できたのは、どうやら緑間君はあろうことか私をライバル視しているらしいということだ。
よりによって私相手に『負けない』と啖呵を切るとは、お門違いと言う他ない。
何故なら、私の能力は人を助けるためにあり、人と競うためのものではないからだ。
赤司君はそのことをすぐに理解し無敗記録の戦歴から外してくれたが、緑間君はそうではないようだ。
さて、どうしようか。
「おは朝、録画しようかなあ」