標的12 夏の課題と千客万来
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《視点:宮野アゲハ 場所:同綱吉の自室》
頃合いを見て綱吉の部屋を覗くと、やはりハルの奇抜な作戦は撃沈したようだ。
綱吉に悪魔と称されてもめげなかったのは、勉強の指南役として超難関校に通うハルに白羽の矢が立ったからである。
好きな人に必要とされるのはやはり嬉しいらしい、あの女のように。
そして肝心の進捗状況だが、宿題は一通り終わったが、ある一問だけがどうしても解けないのだという。
「つーわけで、アゲハも一緒に考えてくんね?」
「貴方しつこいわよ」
今日は隙があれば山本に勉強会に誘われている気がする。
彼らが来る直前、綱吉からは『大人しくしていろ』と言われたのだったか。
「皆で一致団結して課題に取り組むのもおもしれーぞ」
「何それ」
「おっ。小僧、いいこと言うな!」
「全然良くない」
リボーンの戯言にすかさず山本が食いついた。
即座に否定したというのに、山本は嬉しそうに笑っている。
まるでこうして話しているだけで楽しいと言わんばかりだが、そんなことがあるはずない。
そもそも、課題は一人でやった方が捗るに決まっているのだ。
誰かと力を合わせて取り組んだ経験など、一度もない。
リボーンだって同じタイプであるはずなのに、よくもぬけぬけと言えるものだ。
「問七ですね」
それはさておき三人が手こずる問題とは一体どんな難問だろうか、とハルの横から用紙を覗き込む。
件の問七に目を通し、五秒で解けた。
解けはしたが、これは明らかに中学レベルの問題ではない。
学校教育に縁遠い私でもそれだけは分かる。
事実、宿題の他の問題と比べても難易度が桁違いである。
これが解けないと落第とは、並中の教師もなかなか酷な判断をするものだ。
用紙から顔を上げると彼らの真剣な顔が目に入り、ふとある考えが頭に浮かんだ。
もしかしたら、教師陣はわざと難易度の高い問題を紛れ込ませたのではないか、というものである。
補習の生徒がどういう心情でいるかは知らないが、綱吉は日常的に赤点を取ることをそこまで問題視しなくなっている。
それを落第させると脅すことで、生徒達の危機感を煽っているのかもしれない。
実際に補習の場にいなかった私には想像しかできないが、少なくとも綱吉は今かつてないほど必死な表情で問題に取り組んでいるので、もし想像通りならある程度効果のある戦略ではあるだろう――ただし、リボーンが考案したのかと勘繰ってしまうような荒治療だが。
もしこの想像が正しければ、私があっさり解答を教えてはそんな教師の思惑と教育を妨げることになってしまう。
家庭教師 が今のところ不干渉を貫いている以上、私もそれに倣った方がいいかもしれない――いや、先ほど『皆で一致団結して課題に取り組むのも面白い』と言われた。
あれは助言してもいいという意味だろうか、それとも本当にただの戯言か。
一体どっちだと頭を悩ませていると、幸いにもハルはすぐに顔を上げたのだった。
「これ習いました。分かると思います」
その言葉に、三人は水を得た魚のように歓声を上げた。
「じゃあ、私はこれで」
「あっ!」
全員の視線がハルに集中している時を狙って、素早くその場から身を引いた。
山本が虚を突かれた声を漏らしたが、呼び止められる前に部屋を出た。
リボーンの言葉がどちらの意味だったのかは結局分からず仕舞いだが、私の出番はなさそうで良かった。
そう安堵した三時間後、「ごめんなさい! 分かりませんー!!!」というハルの叫びを隣の自室から聞くことになる。
頃合いを見て綱吉の部屋を覗くと、やはりハルの奇抜な作戦は撃沈したようだ。
綱吉に悪魔と称されてもめげなかったのは、勉強の指南役として超難関校に通うハルに白羽の矢が立ったからである。
好きな人に必要とされるのはやはり嬉しいらしい、あの女のように。
そして肝心の進捗状況だが、宿題は一通り終わったが、ある一問だけがどうしても解けないのだという。
「つーわけで、アゲハも一緒に考えてくんね?」
「貴方しつこいわよ」
今日は隙があれば山本に勉強会に誘われている気がする。
彼らが来る直前、綱吉からは『大人しくしていろ』と言われたのだったか。
「皆で一致団結して課題に取り組むのもおもしれーぞ」
「何それ」
「おっ。小僧、いいこと言うな!」
「全然良くない」
リボーンの戯言にすかさず山本が食いついた。
即座に否定したというのに、山本は嬉しそうに笑っている。
まるでこうして話しているだけで楽しいと言わんばかりだが、そんなことがあるはずない。
そもそも、課題は一人でやった方が捗るに決まっているのだ。
誰かと力を合わせて取り組んだ経験など、一度もない。
リボーンだって同じタイプであるはずなのに、よくもぬけぬけと言えるものだ。
「問七ですね」
それはさておき三人が手こずる問題とは一体どんな難問だろうか、とハルの横から用紙を覗き込む。
件の問七に目を通し、五秒で解けた。
解けはしたが、これは明らかに中学レベルの問題ではない。
学校教育に縁遠い私でもそれだけは分かる。
事実、宿題の他の問題と比べても難易度が桁違いである。
これが解けないと落第とは、並中の教師もなかなか酷な判断をするものだ。
用紙から顔を上げると彼らの真剣な顔が目に入り、ふとある考えが頭に浮かんだ。
もしかしたら、教師陣はわざと難易度の高い問題を紛れ込ませたのではないか、というものである。
補習の生徒がどういう心情でいるかは知らないが、綱吉は日常的に赤点を取ることをそこまで問題視しなくなっている。
それを落第させると脅すことで、生徒達の危機感を煽っているのかもしれない。
実際に補習の場にいなかった私には想像しかできないが、少なくとも綱吉は今かつてないほど必死な表情で問題に取り組んでいるので、もし想像通りならある程度効果のある戦略ではあるだろう――ただし、リボーンが考案したのかと勘繰ってしまうような荒治療だが。
もしこの想像が正しければ、私があっさり解答を教えてはそんな教師の思惑と教育を妨げることになってしまう。
あれは助言してもいいという意味だろうか、それとも本当にただの戯言か。
一体どっちだと頭を悩ませていると、幸いにもハルはすぐに顔を上げたのだった。
「これ習いました。分かると思います」
その言葉に、三人は水を得た魚のように歓声を上げた。
「じゃあ、私はこれで」
「あっ!」
全員の視線がハルに集中している時を狙って、素早くその場から身を引いた。
山本が虚を突かれた声を漏らしたが、呼び止められる前に部屋を出た。
リボーンの言葉がどちらの意味だったのかは結局分からず仕舞いだが、私の出番はなさそうで良かった。
そう安堵した三時間後、「ごめんなさい! 分かりませんー!!!」というハルの叫びを隣の自室から聞くことになる。