標的12 夏の課題と千客万来
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《視点:宮野アゲハ 場所:同キッチン》
三浦ハルが訪れたのは、山本達が来て暫くしてからだった。
三浦ハル。
近所に住んでいる女子中学生で、当初はリボーンを好きだったが、川で助けられたのをきっかけに今は綱吉に惚れているらしい。
彼女のことは未だ理解できない点が多いものの、ひとまず彼女を家に上げ、ダイニングルームへ通したのだった。
彼女に麦茶を出して一息ついたところで、ハルは満面の笑顔と共に切り出した。
「お久しぶりです、アゲハちゃん! 今日もビューティフルですね!」
「久しぶりね。今日は一体どうしたの?」
「リボーンちゃんに呼ばれたんです」
「リボーンに?」
初耳である。
彼女達が連絡を取り合うほど仲良くなっていることも含めて。
ちょうどリボーンがダイニングルームに入って来たので、問い詰めるように視線をぶつけた。
「よく来たな、ハル」
「リボーンちゃん!」
リボ―ンはニヒルな笑みを浮かべたまま、テーブルの上に飛び乗った。
「どういうこと? 彼女を呼んだって」
「ツナ達の勉強が煮詰まってるみてーだからな。ハルに宿題を手伝ってもらおうと思ったんだ」
「何勝手に決めてるのよ……」
「いいんです、アゲハちゃん。ちょうど暇でしたから。休日にツナさんに会えるし、ツナさんのお役に立てるし、ハルは一石二鳥です!」
何の相談も連絡もなく独断したことを咎めたつもりだったが、何かを勘違いされハルにフォローされてしまった。
これ以上何かを言うのは大人げないので黙るしかないが、ここまでがリボーンの筋書きであるようで不愉快極まりない。
物事を見透かすような振る舞いは彼の個性としてもう諦めているが、一緒に仕事をする間柄としてそろそろ報連相を学んでほしいと思う。
しかし、今はそれ以上に気になることがあった。
「それはさておき、ちょっと訊いていいかしら」
「はい。何ですか?」
「その鍋、何?」
テーブルの上に堂々と鎮座する土鍋を指差した。
この家のものではない、ハルが持参したものだ。
これを抱えて玄関に立っていた時は自分の目を疑ったが、ハルは「よくぞ聞いてくれました!」と誇らしげに胸を張った。
「これはキムチ鍋です! お家で作ったのを持ってきました!」
「……キムチ鍋?」
鸚鵡返しすると、「はい!」と元気よく肯定された。
別に鍋の中身を聞いたのではなくそんなものを持参してきた理由の方を聞きたかったのだが、うまく伝わらなかった。
頭を働かせてみたが、綱吉達の宿題を手伝うというリボーンの頼みとキムチ鍋が独力では全く繋がらない。
しかもこの灼熱の真夏に辛味料理とは嫌がらせだろうか。
リボーンはハルの思いつきをちゃんと理解しているのだろうか、とふと思い盗み見ると、笑みを貼りつけてハルを眺めていた。
この表情は理解していないと悟った。
「色々考えてきたんですが、勉強が煮詰まった時は、気分転換するのが一番だと思うんです」
「……まあ、一理あるわね」
「だから、気分転換に我慢大会をしようと思って」
「え? 何故?」
発想が急展開すぎて、咄嗟の疑問が口を突いてしまった。
何故我慢大会が気分転換になるのか、何故勉強会で忍耐力を試されなければならないのか――それが分からないのは、私が世間知らずだからだけではないだろう。
というか、その提案に理解を示す人はいるのか?
「オレは斬新でいいと思うぞ」
「ですよね! さすがリボーンちゃんです!」
この男、女子に対して甘すぎる。
この流れではいずれ私にも意見を求められるのは明白なので、必死で彼女の説明を順を追って確認する。
つまり、綱吉達の勉強を捗らせる案が我慢大会で、キムチ鍋はその我慢大会のために用意したということらしい。
一応頭の中で整理はついたが、理解はより困難を極めた。
ひとまず料理のチョイスが嫌がらせでないことだけは分かったが、それにしてもこの娘 はどうしてこうもセンスが独特なのだろうか。
「アゲハちゃんはどう思いますか?」
「え、私? ……そうね、面白そうでいいんじゃないかしら」
「本当ですか!?」
嘘は言っていない。
その時の綱吉の反応が面白そうだと言っただけだ。
「鍋と言ったらこたつもいるだろ。用意してやるから使うといいぞ」
「ありがとうございます、リボーンちゃん!」
「………」
リボーンが謎の適応力を発揮してハルに助言している。
私だけがこの会議についていけない。
真夏で勉強をしているところに、こたつと鍋を持って押し掛けるという悪魔の計画が実行されようとするのを、黙って見ているしかない。
三浦ハルが訪れたのは、山本達が来て暫くしてからだった。
三浦ハル。
近所に住んでいる女子中学生で、当初はリボーンを好きだったが、川で助けられたのをきっかけに今は綱吉に惚れているらしい。
彼女のことは未だ理解できない点が多いものの、ひとまず彼女を家に上げ、ダイニングルームへ通したのだった。
彼女に麦茶を出して一息ついたところで、ハルは満面の笑顔と共に切り出した。
「お久しぶりです、アゲハちゃん! 今日もビューティフルですね!」
「久しぶりね。今日は一体どうしたの?」
「リボーンちゃんに呼ばれたんです」
「リボーンに?」
初耳である。
彼女達が連絡を取り合うほど仲良くなっていることも含めて。
ちょうどリボーンがダイニングルームに入って来たので、問い詰めるように視線をぶつけた。
「よく来たな、ハル」
「リボーンちゃん!」
リボ―ンはニヒルな笑みを浮かべたまま、テーブルの上に飛び乗った。
「どういうこと? 彼女を呼んだって」
「ツナ達の勉強が煮詰まってるみてーだからな。ハルに宿題を手伝ってもらおうと思ったんだ」
「何勝手に決めてるのよ……」
「いいんです、アゲハちゃん。ちょうど暇でしたから。休日にツナさんに会えるし、ツナさんのお役に立てるし、ハルは一石二鳥です!」
何の相談も連絡もなく独断したことを咎めたつもりだったが、何かを勘違いされハルにフォローされてしまった。
これ以上何かを言うのは大人げないので黙るしかないが、ここまでがリボーンの筋書きであるようで不愉快極まりない。
物事を見透かすような振る舞いは彼の個性としてもう諦めているが、一緒に仕事をする間柄としてそろそろ報連相を学んでほしいと思う。
しかし、今はそれ以上に気になることがあった。
「それはさておき、ちょっと訊いていいかしら」
「はい。何ですか?」
「その鍋、何?」
テーブルの上に堂々と鎮座する土鍋を指差した。
この家のものではない、ハルが持参したものだ。
これを抱えて玄関に立っていた時は自分の目を疑ったが、ハルは「よくぞ聞いてくれました!」と誇らしげに胸を張った。
「これはキムチ鍋です! お家で作ったのを持ってきました!」
「……キムチ鍋?」
鸚鵡返しすると、「はい!」と元気よく肯定された。
別に鍋の中身を聞いたのではなくそんなものを持参してきた理由の方を聞きたかったのだが、うまく伝わらなかった。
頭を働かせてみたが、綱吉達の宿題を手伝うというリボーンの頼みとキムチ鍋が独力では全く繋がらない。
しかもこの灼熱の真夏に辛味料理とは嫌がらせだろうか。
リボーンはハルの思いつきをちゃんと理解しているのだろうか、とふと思い盗み見ると、笑みを貼りつけてハルを眺めていた。
この表情は理解していないと悟った。
「色々考えてきたんですが、勉強が煮詰まった時は、気分転換するのが一番だと思うんです」
「……まあ、一理あるわね」
「だから、気分転換に我慢大会をしようと思って」
「え? 何故?」
発想が急展開すぎて、咄嗟の疑問が口を突いてしまった。
何故我慢大会が気分転換になるのか、何故勉強会で忍耐力を試されなければならないのか――それが分からないのは、私が世間知らずだからだけではないだろう。
というか、その提案に理解を示す人はいるのか?
「オレは斬新でいいと思うぞ」
「ですよね! さすがリボーンちゃんです!」
この男、女子に対して甘すぎる。
この流れではいずれ私にも意見を求められるのは明白なので、必死で彼女の説明を順を追って確認する。
つまり、綱吉達の勉強を捗らせる案が我慢大会で、キムチ鍋はその我慢大会のために用意したということらしい。
一応頭の中で整理はついたが、理解はより困難を極めた。
ひとまず料理のチョイスが嫌がらせでないことだけは分かったが、それにしてもこの
「アゲハちゃんはどう思いますか?」
「え、私? ……そうね、面白そうでいいんじゃないかしら」
「本当ですか!?」
嘘は言っていない。
その時の綱吉の反応が面白そうだと言っただけだ。
「鍋と言ったらこたつもいるだろ。用意してやるから使うといいぞ」
「ありがとうございます、リボーンちゃん!」
「………」
リボーンが謎の適応力を発揮してハルに助言している。
私だけがこの会議についていけない。
真夏で勉強をしているところに、こたつと鍋を持って押し掛けるという悪魔の計画が実行されようとするのを、黙って見ているしかない。