標的12 夏の課題と千客万来
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《視点:宮野アゲハ 場所:沢田家綱吉の自室》
先日から夏休みに突入した。
マフィア学校以来学校生活に縁のなかった私にとって、初めての夏休みである。
本来この期間中は学校が休みのはずだが、綱吉は普段通りに登校し授業を受けているのだ。
その理由を本人に訊くと、「煩いな!」と苦々しく顔を顰めて一蹴されてしまった。
その後綱吉から無理矢理聞き出したところ、どうやら成績の悪い生徒は、夏休み期間中に補習というものに参加しなければならないらしい。
成績の悪い生徒――リボーンのスパルタ授業を受けてなお成果が上がらないとは、呆れを通り越して感心さえする。
毎日補習を受けに行く綱吉に、最初は私も興味本位でついて行ったのだが(言うまでもないが、私は補習の対象になっていない)、一度雲雀に見つかって追い回されてからは大人しく家で待っているようにしている。
この日も普段通り補習に行く綱吉を見送り、特に何のトラブルもなく、昼過ぎに学校から帰って来るのを出迎えた。
――ここからが、普段通りでなかった。
「ごめん、アゲハ……。補習の宿題、山本とここでやることになった……」
自室にいた私を呼ぶなり、綱吉は申し訳なさそうにそう言ったのだった。
「あらそう。別にいいわよ。どうせリボーンが勝手に決めたんでしょう」
「さすが昔馴染み! よく分かったな!」
綱吉の態度とリボーンの意味深な笑みを見れば、その程度は簡単に予想がつく。
補習後に山本と宿題の相談をしているところに、リボーンが「うちで宿題をやればいい」と割って入る様子が目に浮かんだ。
「勉強はオレの部屋でやるから、アゲハは自分の部屋にいてよ」
「そうするわ」
「アゲハも混ざればいいだろ」
「余計なこと言うなよ、リボーン! いいか! 頼むからお前も大人しくしててくれよ!」
「口出しはしねーって言ったはずだ」
綱吉が釘を刺したところで、タイミング良く玄関でチャイムが鳴った。
「はーい!」と綱吉が玄関に向かうのに続き部屋を出て階段の上から覗くと、コンビニの袋を持った山本と、何故か獄寺が立っていた。
誘った覚えのない獄寺がいる理由について、山本はこう話した。
「考えてみたら、分かる奴いねーと終わんねーだろ? 獄寺がいたら百人力だぜ」
普段は事あるごとに山本に突っかかる癖に、ストレートに褒められて獄寺は照れくさそうに頬を染めていた。
想定外の獄寺の登場に萎縮していた綱吉はその説明に納得し、二人を招き入れたのだった。
綱吉が先導する形で階段を上り、部屋の前の廊下で一行と鉢合わせた。
山本は私を見るなり僅かに目を見開いて、
「本当に一緒に住んでるのな」
との感想を漏らした。
そういえば、そんな話を以前山本にしたことを思い出した。
「にしても、なんでアゲハは夏休みなのに制服なんだ?」
「任務中は、スーツか制服と決めているのよ」
「任務? マフィアごっこの話か? 休日までごっこの設定でいるなんて、徹底してるのな」
「………」
私の仕事を設定扱いしやがった。
「……貴方の天然も徹底してるわね」
「ん?」
皮肉が通じず不思議そうな顔をされたが、構わず自分の部屋に戻ろうと背を向けた。
彼の理解を得るには多大な労力が必要とされそうだ。
数歩進んだところで、「そうだ!」と背後で山本が声を上げた。
「アゲハも一緒にやらねーか? 勉強」
「は?」
「えっ!」
「なっ!」
山本の提案に、私、綱吉、獄寺が揃って呆気に取られた。
ゆっくり振り返ると、山本は朗らかな笑顔でこちらを見ていた。
「獄寺に教えてもらうんだけど、良かったらアゲハも勉強みてくれよ。確か、アゲハも成績良かったよな?」
「……獄寺がいれば充分でしょう。教えるのに二人もいらないわ」
「んー、けどよー」
「私も忙しいのよ」
食い下がろうとする山本の台詞を遮り、見せつけるようにして自室のドアノブに手を掛けた。
山本は諦めて口を噤んだが、今度は綱吉が首を傾げた。
「アゲハ、なんか用事でもあるのか?」
「本部に提出する報告書を作るのよ。これ以上ダメなところを報告されたくなければ、宿題頑張りなさい」
「ほっとけよ……って、え? もしかして、オレの成績とかボンゴレに筒抜けになってんの!?」
筒抜けになっている。
もっとも、プライベートな内容は九代目にしか報告していないので、本部の重役に綱吉のテストの点数が漏れることはない。
リボーンが綱吉の成績を公開しようと提案する前に、さっさと改善してほしいものだ。
問い詰めようとする声や名残惜しそうな視線を無視して、自分の部屋のドアを開けた。
先日から夏休みに突入した。
マフィア学校以来学校生活に縁のなかった私にとって、初めての夏休みである。
本来この期間中は学校が休みのはずだが、綱吉は普段通りに登校し授業を受けているのだ。
その理由を本人に訊くと、「煩いな!」と苦々しく顔を顰めて一蹴されてしまった。
その後綱吉から無理矢理聞き出したところ、どうやら成績の悪い生徒は、夏休み期間中に補習というものに参加しなければならないらしい。
成績の悪い生徒――リボーンのスパルタ授業を受けてなお成果が上がらないとは、呆れを通り越して感心さえする。
毎日補習を受けに行く綱吉に、最初は私も興味本位でついて行ったのだが(言うまでもないが、私は補習の対象になっていない)、一度雲雀に見つかって追い回されてからは大人しく家で待っているようにしている。
この日も普段通り補習に行く綱吉を見送り、特に何のトラブルもなく、昼過ぎに学校から帰って来るのを出迎えた。
――ここからが、普段通りでなかった。
「ごめん、アゲハ……。補習の宿題、山本とここでやることになった……」
自室にいた私を呼ぶなり、綱吉は申し訳なさそうにそう言ったのだった。
「あらそう。別にいいわよ。どうせリボーンが勝手に決めたんでしょう」
「さすが昔馴染み! よく分かったな!」
綱吉の態度とリボーンの意味深な笑みを見れば、その程度は簡単に予想がつく。
補習後に山本と宿題の相談をしているところに、リボーンが「うちで宿題をやればいい」と割って入る様子が目に浮かんだ。
「勉強はオレの部屋でやるから、アゲハは自分の部屋にいてよ」
「そうするわ」
「アゲハも混ざればいいだろ」
「余計なこと言うなよ、リボーン! いいか! 頼むからお前も大人しくしててくれよ!」
「口出しはしねーって言ったはずだ」
綱吉が釘を刺したところで、タイミング良く玄関でチャイムが鳴った。
「はーい!」と綱吉が玄関に向かうのに続き部屋を出て階段の上から覗くと、コンビニの袋を持った山本と、何故か獄寺が立っていた。
誘った覚えのない獄寺がいる理由について、山本はこう話した。
「考えてみたら、分かる奴いねーと終わんねーだろ? 獄寺がいたら百人力だぜ」
普段は事あるごとに山本に突っかかる癖に、ストレートに褒められて獄寺は照れくさそうに頬を染めていた。
想定外の獄寺の登場に萎縮していた綱吉はその説明に納得し、二人を招き入れたのだった。
綱吉が先導する形で階段を上り、部屋の前の廊下で一行と鉢合わせた。
山本は私を見るなり僅かに目を見開いて、
「本当に一緒に住んでるのな」
との感想を漏らした。
そういえば、そんな話を以前山本にしたことを思い出した。
「にしても、なんでアゲハは夏休みなのに制服なんだ?」
「任務中は、スーツか制服と決めているのよ」
「任務? マフィアごっこの話か? 休日までごっこの設定でいるなんて、徹底してるのな」
「………」
私の仕事を設定扱いしやがった。
「……貴方の天然も徹底してるわね」
「ん?」
皮肉が通じず不思議そうな顔をされたが、構わず自分の部屋に戻ろうと背を向けた。
彼の理解を得るには多大な労力が必要とされそうだ。
数歩進んだところで、「そうだ!」と背後で山本が声を上げた。
「アゲハも一緒にやらねーか? 勉強」
「は?」
「えっ!」
「なっ!」
山本の提案に、私、綱吉、獄寺が揃って呆気に取られた。
ゆっくり振り返ると、山本は朗らかな笑顔でこちらを見ていた。
「獄寺に教えてもらうんだけど、良かったらアゲハも勉強みてくれよ。確か、アゲハも成績良かったよな?」
「……獄寺がいれば充分でしょう。教えるのに二人もいらないわ」
「んー、けどよー」
「私も忙しいのよ」
食い下がろうとする山本の台詞を遮り、見せつけるようにして自室のドアノブに手を掛けた。
山本は諦めて口を噤んだが、今度は綱吉が首を傾げた。
「アゲハ、なんか用事でもあるのか?」
「本部に提出する報告書を作るのよ。これ以上ダメなところを報告されたくなければ、宿題頑張りなさい」
「ほっとけよ……って、え? もしかして、オレの成績とかボンゴレに筒抜けになってんの!?」
筒抜けになっている。
もっとも、プライベートな内容は九代目にしか報告していないので、本部の重役に綱吉のテストの点数が漏れることはない。
リボーンが綱吉の成績を公開しようと提案する前に、さっさと改善してほしいものだ。
問い詰めようとする声や名残惜しそうな視線を無視して、自分の部屋のドアを開けた。