標的11 想像と理解を超えた存在
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《視点:宮野アゲハ 場所:並盛町某橋の上》
それは翌日の下校中に起こった。
綱吉と何気ない会話を楽しんでいた私の耳に、がしゃん、がしゃんという金属がぶつかる不思議な音が届いたのだ。
隣を窺うと、綱吉はまだ異変に気づいていないようだ。
彼に悟られないよう音源に目を向ける。
橋の向こうの道路から、全身を重厚な鎧で覆い、右手にアイスホッケーのスティック、左手にフルフェイスのヘルメットを携えた謎の存在がゆっくりと歩いて来るのが視認できた。
……何だ、あれ?
一瞬の困惑は、鎧から覗くその顔を確認したことで解消した――解消してしまった。
若干疲れた表情をしているが、あれは先日のアグレッシブ女子中学生・三浦ハルである。
「………」
確かにいずれ姿を現すとは思っていたが、あんな姿とは予想だにしていなかった。
あの重装備、特攻でもしてくる気だろうか?
あの格好をしてよく道中で通報されなかったものだ。
どうやらビアンキとの化学変化で、“予測不能”という要素が強化されたらしい。
「あれ……あまりの暑さに耳鳴りが……」
綱吉の耳にも不快な金属音が届いたようで、足を止めて三浦ハルを振り返った。
「おはよーございます」
「あんた何ー!!?」
平然と挨拶するハルに、綱吉の突っ込みが炸裂した。
「昨晩頭がぐるぐるしちゃって眠れなかったハルですよ」
「寝不足だとそーゆー格好しちゃうわけ!!?」
「違いますーっ。それじゃ私お馬鹿ですよ」
まるで自分は馬鹿ではないと言いたげな台詞は、今の己の姿を顧みてから言ってほしい。
「リボーンちゃんが本物の殺し屋なら、本物のマフィアのボスになるツナさんはとーってもストロングだと思うわけです」
「な?」
「ツナさんが強かったらリボーンちゃんの言ったことも信じますし、リボーンちゃんの生き方に文句は言いません」
彼女はヘルメットを被ると、勢いよくスティックを振りかぶった。
「お手合わせ願います!」
「んなー!!?」
綱吉は驚愕の声を上げながらもその一撃をなんとか避ける。
スティックが地面にぶつかり、鈍い音が空気を震わせた。
いくら見た目は派手でも所詮素人、綱吉でも紙一重で避けられる攻撃だ。
放っておいて大丈夫だろう。
そう評価し、綱吉から距離を取りながら欄干の上に腰を下ろす。
「って、見てないで助けろよ!!」
「一般人の女子相手にどうしろって言うのよ」
私の不戦を目敏く発見した綱吉に怒鳴られるが、この私も対応に困っているのだ。
“疾風迅雷”は論外として、“山塞 ”でも彼女の命に関わる気がする。
綱吉と山本が屋上から落下した時に繰り出した際は偶然の要素も大きかったので、間違っても一般人を彼方に吹っ飛ばすわけにはいかない。
しかし、綱吉は力任せの横薙ぎの攻撃を避けながら、未練がましく叫んだのだった。
「やっぱりまだ昨日のこと怒ってんのか!?」
「……そこまで根に持つタイプじゃないわよ」
昨日も結局、熟慮の末に綱吉を見捨てる選択ができなかったのだ。
心配しなくても、もし本当に命に関わるようならすぐに助けに入る。
ただ、彼女の言い分も正しいので、ここは自分の力でなんとかしてほしい。
しかしふと道路の方を向くと、獄寺が血相を変えてこちらに走って来るのが目に入ったのだ。
何やら、不穏な勘違いをしている気がする。
「オレはマフィアのボスなんかにはならないんだって!」
「じゃあやっぱりリボーンちゃんを弄んでるんですね!!」
「そーじゃなくて……!」
言い争う二人を一旦落ち着かせようと欄干から腰を上げようとしたが、獄寺の到着が一瞬早かった。
登場早々、綱吉を庇うようにハルの前に立ち塞がる。
「十代目、さがって下さい!」
「ちょっと、獄寺!」
嫌な予感がして呼び止めるが、獄寺は止まらなかった。
ハルに向けて容赦なく多数のダイナマイトを放ったのだ。
私ですら躊躇していたことを、あっさりやってのけた。
「あれ? ドカーンって奴ですねー」
対するハルはいたって冷静に現状を確認している。
もしかしたら、あの装備の下にこの状況を打破する術が隠されているのだろうか?
そんな予測に反し、彼女はなすすべなくダイナマイトの直撃を受けてしまった。
鎧のお陰で大事には至らなかったようだが、爆風に煽られ、私が座っている側とは反対側の欄干を越えて川に墜落した。
慌てて駆け寄り、ハルの落下点を確認する。
――しまった、出遅れた。
逆境を前にしてあの落ち着いた態度に、秘策でもあるかと思ったのだ。
彼女は一般人、素人であることを一瞬忘れていた。
爆弾を前に身が硬直することだって、充分あるだろう。
「あ~あ、落ちちゃったよ!」
「これでもう大丈夫です」
「……馬鹿。動きで素人って分かるでしょう」
「はあ!?」
噛みつく獄寺を放置し身を乗り出してハルの様子を窺うと、鎧の重さの所為でうまく身動きが取れないようだ。
明らかに溺れている彼女に、すぐさま助けなければ、と行動する。
しかし、突如聞こえた声が私の動きを止めた。
「助けてやる」
今まで遠くから静観していたリボーンが、欄干の上――私が飛び降りようと足をかけた隣に移動していた。
そして私に見せるように拳銃を取り出した。
その行為で彼の意図を察し、足を欄干から静かに下ろす。
私が飛び降りないと分かったリボーンは、笑みを浮かべて綱吉に死ぬ気弾を発砲した。
飛弾した綱吉は力なく橋から落下し――
空中で死ぬ気になった。
「死ぬ気でハルを救う!!!」
リボーンが綱吉の両踵に死ぬ気弾を追加する。
死ぬ気弾を踵に撃てば足スクリュー弾――凄まじい速度で激流を泳ぎ、みるみるうちに動けないハルとの距離を詰める。
「オレに掴まれーっ!!!」
そして、三浦ハルを抱き止めた。
それは翌日の下校中に起こった。
綱吉と何気ない会話を楽しんでいた私の耳に、がしゃん、がしゃんという金属がぶつかる不思議な音が届いたのだ。
隣を窺うと、綱吉はまだ異変に気づいていないようだ。
彼に悟られないよう音源に目を向ける。
橋の向こうの道路から、全身を重厚な鎧で覆い、右手にアイスホッケーのスティック、左手にフルフェイスのヘルメットを携えた謎の存在がゆっくりと歩いて来るのが視認できた。
……何だ、あれ?
一瞬の困惑は、鎧から覗くその顔を確認したことで解消した――解消してしまった。
若干疲れた表情をしているが、あれは先日のアグレッシブ女子中学生・三浦ハルである。
「………」
確かにいずれ姿を現すとは思っていたが、あんな姿とは予想だにしていなかった。
あの重装備、特攻でもしてくる気だろうか?
あの格好をしてよく道中で通報されなかったものだ。
どうやらビアンキとの化学変化で、“予測不能”という要素が強化されたらしい。
「あれ……あまりの暑さに耳鳴りが……」
綱吉の耳にも不快な金属音が届いたようで、足を止めて三浦ハルを振り返った。
「おはよーございます」
「あんた何ー!!?」
平然と挨拶するハルに、綱吉の突っ込みが炸裂した。
「昨晩頭がぐるぐるしちゃって眠れなかったハルですよ」
「寝不足だとそーゆー格好しちゃうわけ!!?」
「違いますーっ。それじゃ私お馬鹿ですよ」
まるで自分は馬鹿ではないと言いたげな台詞は、今の己の姿を顧みてから言ってほしい。
「リボーンちゃんが本物の殺し屋なら、本物のマフィアのボスになるツナさんはとーってもストロングだと思うわけです」
「な?」
「ツナさんが強かったらリボーンちゃんの言ったことも信じますし、リボーンちゃんの生き方に文句は言いません」
彼女はヘルメットを被ると、勢いよくスティックを振りかぶった。
「お手合わせ願います!」
「んなー!!?」
綱吉は驚愕の声を上げながらもその一撃をなんとか避ける。
スティックが地面にぶつかり、鈍い音が空気を震わせた。
いくら見た目は派手でも所詮素人、綱吉でも紙一重で避けられる攻撃だ。
放っておいて大丈夫だろう。
そう評価し、綱吉から距離を取りながら欄干の上に腰を下ろす。
「って、見てないで助けろよ!!」
「一般人の女子相手にどうしろって言うのよ」
私の不戦を目敏く発見した綱吉に怒鳴られるが、この私も対応に困っているのだ。
“疾風迅雷”は論外として、“
綱吉と山本が屋上から落下した時に繰り出した際は偶然の要素も大きかったので、間違っても一般人を彼方に吹っ飛ばすわけにはいかない。
しかし、綱吉は力任せの横薙ぎの攻撃を避けながら、未練がましく叫んだのだった。
「やっぱりまだ昨日のこと怒ってんのか!?」
「……そこまで根に持つタイプじゃないわよ」
昨日も結局、熟慮の末に綱吉を見捨てる選択ができなかったのだ。
心配しなくても、もし本当に命に関わるようならすぐに助けに入る。
ただ、彼女の言い分も正しいので、ここは自分の力でなんとかしてほしい。
しかしふと道路の方を向くと、獄寺が血相を変えてこちらに走って来るのが目に入ったのだ。
何やら、不穏な勘違いをしている気がする。
「オレはマフィアのボスなんかにはならないんだって!」
「じゃあやっぱりリボーンちゃんを弄んでるんですね!!」
「そーじゃなくて……!」
言い争う二人を一旦落ち着かせようと欄干から腰を上げようとしたが、獄寺の到着が一瞬早かった。
登場早々、綱吉を庇うようにハルの前に立ち塞がる。
「十代目、さがって下さい!」
「ちょっと、獄寺!」
嫌な予感がして呼び止めるが、獄寺は止まらなかった。
ハルに向けて容赦なく多数のダイナマイトを放ったのだ。
私ですら躊躇していたことを、あっさりやってのけた。
「あれ? ドカーンって奴ですねー」
対するハルはいたって冷静に現状を確認している。
もしかしたら、あの装備の下にこの状況を打破する術が隠されているのだろうか?
そんな予測に反し、彼女はなすすべなくダイナマイトの直撃を受けてしまった。
鎧のお陰で大事には至らなかったようだが、爆風に煽られ、私が座っている側とは反対側の欄干を越えて川に墜落した。
慌てて駆け寄り、ハルの落下点を確認する。
――しまった、出遅れた。
逆境を前にしてあの落ち着いた態度に、秘策でもあるかと思ったのだ。
彼女は一般人、素人であることを一瞬忘れていた。
爆弾を前に身が硬直することだって、充分あるだろう。
「あ~あ、落ちちゃったよ!」
「これでもう大丈夫です」
「……馬鹿。動きで素人って分かるでしょう」
「はあ!?」
噛みつく獄寺を放置し身を乗り出してハルの様子を窺うと、鎧の重さの所為でうまく身動きが取れないようだ。
明らかに溺れている彼女に、すぐさま助けなければ、と行動する。
しかし、突如聞こえた声が私の動きを止めた。
「助けてやる」
今まで遠くから静観していたリボーンが、欄干の上――私が飛び降りようと足をかけた隣に移動していた。
そして私に見せるように拳銃を取り出した。
その行為で彼の意図を察し、足を欄干から静かに下ろす。
私が飛び降りないと分かったリボーンは、笑みを浮かべて綱吉に死ぬ気弾を発砲した。
飛弾した綱吉は力なく橋から落下し――
空中で死ぬ気になった。
「死ぬ気でハルを救う!!!」
リボーンが綱吉の両踵に死ぬ気弾を追加する。
死ぬ気弾を踵に撃てば足スクリュー弾――凄まじい速度で激流を泳ぎ、みるみるうちに動けないハルとの距離を詰める。
「オレに掴まれーっ!!!」
そして、三浦ハルを抱き止めた。