標的10 欠落の意味を考える
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《視点:宮野アゲハ 場所:沢田家綱吉の自室》
一足先に部屋に戻り素知らぬ顔で雑誌を読んでいたところに、やっと綱吉が帰宅してきた。
「あれ? アゲハ、もう着替えたのか?」
「……あまり長く借りっぱなしでいるのもね。そんなことより、何か用事があるんじゃないの?」
「あっ、そうか――ランボ起きろ!」
綱吉は床の上で惰眠を貪る五歳児の身体を揺さぶった。
寝ぼけ眼で起き上がったランボに、綱吉が笑顔で手を合わせる。
「わりーんだけど、十年バズーカで十年後のランボ呼んでくれないかな」
しかしその言葉を聞いた途端、ランボは明らかに狼狽して視線を彷徨わせたのだ。
「ラ……ランボは十年バズーカなんか撃ったことないぞ!」
「はあ?」
「十年バズーカはボスに使っちゃダメだって言われてるんだもん。ラ……ランボが撃つわけないじゃん」
これまで気軽に何度も使っておきながら、この台詞である。
ちなみに件の十年バズーカだが、ボヴィーノファミリーボスの言葉に甘え、ランボが昼寝をしている間に何度か拝借して研究に使わせてもらっている。
なので、たとえ乱用がバレたとしてもそこまで怒られはしないと思うのだが、ランボは逃げるように床にごろりと寝転がった。
「ランボ寝るからあっち行ってて」
「オレの部屋だぞ!!」
綱吉はそう怒鳴ったところで、何を思ったか窓に駆け寄ると下を覗き込んだ。
「いたっ」
そう呟いたかと思うと、今度は急いで部屋を出て行ったのだった。
「……?」
私に声も掛けずに、一体何処へ行ったのだろう。
そんな疑問は、綱吉に倣って窓の外を見てみればすぐに解決した。
綱吉の部屋の窓からは沢田家の庭がよく見えるのだが、いつの間にか用意されたビニールプールの傍にリボーンが立っていたのだ。
恐らく綱吉はリボーンをけしかけることでランボを泣かせ、十年バズーカを使用させる気なのだろう。
しかし、格下 を相手にすることのないリボーンをどうやってけしかけるつもりなのか。
「それにしても、リボーンも満喫してるわね」
水着姿で水浴びする気満々の彼を見下ろしながら呟くと、背後でランボがむくりと身体を起こす気配がした。
そしてこちらに歩いて来たかと思うと、窓の桟に飛び乗って外に飛び出し壁をよじ登り始めたのだ。
「――えっ」
ランボの奇行を思わず見送ってしまった。
あまりに唐突で止める暇もなかった。
窓から身を乗り出して見上げると、ランボは覚束ないながらも着実に屋根に近づいている。
二階建てなので万が一落ちても怪我はしないだろうが――子供の行動原理が読めなくてついていけない。
そうこうしているうちに綱吉が庭に姿を現したので、ひとまずランボを放置しそちらに視線を戻す。
想像通りリボーンにランボを軽くど突くよう頼んでいるが、予想通りにべもなく断られている。
「言ったはずだ。オレは格下は相手にしねーんだ」
「ガハハハハ、そー言ってられるのも今のうちだぞ、リボーン」
屋根の上に辿り着いたランボは彼らの会話に割り込み、何故かこんなことを叫んだのだ。
「ランボさんはこの二階から勇気を出して飛び降りちゃうもんね!」
子供の行動が理解不能だ、本当に。
世間の五歳児は皆こうなのか?
「死ね、リボーンッ。ボスに送ってもらったスタンガンでビリビリとな!」
そして、飛び降りた。
宣言通りスタンガンを片手に、私の眼前を上から下へと通過していった。
しかし、落下点には水の張ったビニールプールがある。
ああ、ランボが自滅する方法でもいいのか、と考えていると、スパークとランボの悲鳴が轟いた。
そしてランボは泣き喚きながら、十年バズーカを自分に向けて発射したのだった。
綱吉にとって幸運なことに、そして後の展開を考えると、ランボにとっては不運なことに。
煙が晴れると、十年後のランボがビニールプールに浸かった状態で姿を現した。
「やれやれ。何故オレに水が滴ってるんだ?」
「あ、で!! 出た!! 大人ランボ!! ビアンキ、ちょっと……!! ホラ! こっち来てみて!」
すかさず綱吉が家の中に向かって呼びかけると、ビアンキが手にポイズンクッキングのホールケーキを持って(何をする気だ)庭を覗き込み――大人ランボと目を合わせた。
その瞬間、ビアンキの目の色が変わった。
「ロメオ! 生きてたのね!」
ロメオもといランボに向かって駆け出すビアンキ。
その表情は二階からでも分かるほど喜びに満ちているが、殺気が隠せていないので嫌な予感しかしない。
「ポイズンクッキングⅡー!!!」
彼女自身が殺傷力二倍と豪語した技で、毒々しいホールケーキがランボの顔面に直撃した。
ランボの身体がプールに叩きつけられ、水しぶきが上がる。
目の前で起きた出来事に驚く綱吉に、リボーンが冷静に説明する。
「ビアンキと元彼は別れる直前とても険悪だったらしいぞ。よく元彼を思い出しては腹立ててたからな」
「え゛ーっっ!!!」
私と違い彼らが不仲である可能性などまるで考慮していなかっただろう綱吉は、信じられないというように目を剥いた。
更にリボーンの証言により、私が神社で思いついた“最悪の想像”の信憑性が増してしまった。
本当に事実ならホラーなのだが。
「ランボ!! しっかりして!! 寝ちゃ駄目だ! 泣いてくれー!!」
「十年後の医療なら助かるかもな」
がくりと力なくプールに浸かるランボに、必死で呼びかける綱吉と静観するリボーン。
それを離れたところで満足そうに眺めるビアンキ。
カオスとなった庭を放置し、静かに窓を閉めた。
その時、計ったようなタイミングで携帯電話が着信を知らせたのだった。
一足先に部屋に戻り素知らぬ顔で雑誌を読んでいたところに、やっと綱吉が帰宅してきた。
「あれ? アゲハ、もう着替えたのか?」
「……あまり長く借りっぱなしでいるのもね。そんなことより、何か用事があるんじゃないの?」
「あっ、そうか――ランボ起きろ!」
綱吉は床の上で惰眠を貪る五歳児の身体を揺さぶった。
寝ぼけ眼で起き上がったランボに、綱吉が笑顔で手を合わせる。
「わりーんだけど、十年バズーカで十年後のランボ呼んでくれないかな」
しかしその言葉を聞いた途端、ランボは明らかに狼狽して視線を彷徨わせたのだ。
「ラ……ランボは十年バズーカなんか撃ったことないぞ!」
「はあ?」
「十年バズーカはボスに使っちゃダメだって言われてるんだもん。ラ……ランボが撃つわけないじゃん」
これまで気軽に何度も使っておきながら、この台詞である。
ちなみに件の十年バズーカだが、ボヴィーノファミリーボスの言葉に甘え、ランボが昼寝をしている間に何度か拝借して研究に使わせてもらっている。
なので、たとえ乱用がバレたとしてもそこまで怒られはしないと思うのだが、ランボは逃げるように床にごろりと寝転がった。
「ランボ寝るからあっち行ってて」
「オレの部屋だぞ!!」
綱吉はそう怒鳴ったところで、何を思ったか窓に駆け寄ると下を覗き込んだ。
「いたっ」
そう呟いたかと思うと、今度は急いで部屋を出て行ったのだった。
「……?」
私に声も掛けずに、一体何処へ行ったのだろう。
そんな疑問は、綱吉に倣って窓の外を見てみればすぐに解決した。
綱吉の部屋の窓からは沢田家の庭がよく見えるのだが、いつの間にか用意されたビニールプールの傍にリボーンが立っていたのだ。
恐らく綱吉はリボーンをけしかけることでランボを泣かせ、十年バズーカを使用させる気なのだろう。
しかし、
「それにしても、リボーンも満喫してるわね」
水着姿で水浴びする気満々の彼を見下ろしながら呟くと、背後でランボがむくりと身体を起こす気配がした。
そしてこちらに歩いて来たかと思うと、窓の桟に飛び乗って外に飛び出し壁をよじ登り始めたのだ。
「――えっ」
ランボの奇行を思わず見送ってしまった。
あまりに唐突で止める暇もなかった。
窓から身を乗り出して見上げると、ランボは覚束ないながらも着実に屋根に近づいている。
二階建てなので万が一落ちても怪我はしないだろうが――子供の行動原理が読めなくてついていけない。
そうこうしているうちに綱吉が庭に姿を現したので、ひとまずランボを放置しそちらに視線を戻す。
想像通りリボーンにランボを軽くど突くよう頼んでいるが、予想通りにべもなく断られている。
「言ったはずだ。オレは格下は相手にしねーんだ」
「ガハハハハ、そー言ってられるのも今のうちだぞ、リボーン」
屋根の上に辿り着いたランボは彼らの会話に割り込み、何故かこんなことを叫んだのだ。
「ランボさんはこの二階から勇気を出して飛び降りちゃうもんね!」
子供の行動が理解不能だ、本当に。
世間の五歳児は皆こうなのか?
「死ね、リボーンッ。ボスに送ってもらったスタンガンでビリビリとな!」
そして、飛び降りた。
宣言通りスタンガンを片手に、私の眼前を上から下へと通過していった。
しかし、落下点には水の張ったビニールプールがある。
ああ、ランボが自滅する方法でもいいのか、と考えていると、スパークとランボの悲鳴が轟いた。
そしてランボは泣き喚きながら、十年バズーカを自分に向けて発射したのだった。
綱吉にとって幸運なことに、そして後の展開を考えると、ランボにとっては不運なことに。
煙が晴れると、十年後のランボがビニールプールに浸かった状態で姿を現した。
「やれやれ。何故オレに水が滴ってるんだ?」
「あ、で!! 出た!! 大人ランボ!! ビアンキ、ちょっと……!! ホラ! こっち来てみて!」
すかさず綱吉が家の中に向かって呼びかけると、ビアンキが手にポイズンクッキングのホールケーキを持って(何をする気だ)庭を覗き込み――大人ランボと目を合わせた。
その瞬間、ビアンキの目の色が変わった。
「ロメオ! 生きてたのね!」
ロメオもといランボに向かって駆け出すビアンキ。
その表情は二階からでも分かるほど喜びに満ちているが、殺気が隠せていないので嫌な予感しかしない。
「ポイズンクッキングⅡー!!!」
彼女自身が殺傷力二倍と豪語した技で、毒々しいホールケーキがランボの顔面に直撃した。
ランボの身体がプールに叩きつけられ、水しぶきが上がる。
目の前で起きた出来事に驚く綱吉に、リボーンが冷静に説明する。
「ビアンキと元彼は別れる直前とても険悪だったらしいぞ。よく元彼を思い出しては腹立ててたからな」
「え゛ーっっ!!!」
私と違い彼らが不仲である可能性などまるで考慮していなかっただろう綱吉は、信じられないというように目を剥いた。
更にリボーンの証言により、私が神社で思いついた“最悪の想像”の信憑性が増してしまった。
本当に事実ならホラーなのだが。
「ランボ!! しっかりして!! 寝ちゃ駄目だ! 泣いてくれー!!」
「十年後の医療なら助かるかもな」
がくりと力なくプールに浸かるランボに、必死で呼びかける綱吉と静観するリボーン。
それを離れたところで満足そうに眺めるビアンキ。
カオスとなった庭を放置し、静かに窓を閉めた。
その時、計ったようなタイミングで携帯電話が着信を知らせたのだった。