標的10 欠落の意味を考える
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《視点:宮野アゲハ 場所:沢田家綱吉の自室》
日本には任務で何度か足を運んだことがあるが、実を言うと現地の夏を体験するのは今回が初めてである。
四季に文句をつけてもどうしようもないのは頭で理解しているが、日本の夏のうだるような暑さには参ってしまう。
実際の気温はイタリアとそう大差なくても、湿度が高い所為で暑苦しく感じてしまう――しかし、このクーラーの効いた部屋では関係ない。
涼しく快適な環境で、私とリボーンは浴衣を身に纏い冷やしそうめんに舌鼓を打っている。
普段煩わしく感じている日本の夏を存分に満喫しているのだった。
数刻前にランボがリボーンに暗殺を仕掛けて騒がしかったが、今は疲れて部屋の隅で眠っている。
風鈴に姿を変えたレオンが涼やかな音を奏でるのを聞きながら風流な時間を楽しんでいると、ドアががちゃりと開いて綱吉が現れた。
「お前達は日本の夏を存分に味わってんなー!!!」
彼は部屋の様子を目にした途端、大声で叫んだ。
この暑い中、元気が良くて感心する。
「しかもアゲハ、その浴衣どうしたの?」
「ママンが昔着ていたものを貸してもらったのよ。変だった?」
「えっ……いや……」
綱吉が言い淀んだので、自身の浴衣を改めて眺めてみる。
白地に大輪の向日葵が描かれた浴衣。
確かに私よりもママンに似合いそうな柄である。
そもそも浴衣自体初めて着るのだから、多少違和感があるのは仕方ないだろう。
「まあ、いいわ。そんなことより、部屋の温度が上がるから早くドアを閉めてくれる?」
そう言って綱吉の方を向いた時、彼の背後から平然と現れた人物を視認して動きを止めた。
片手に怪しい色をした冷やしそうめんを携えた彼女は、白々しく綱吉に声を掛ける。
「貴方の分もあるわよ。かっ食らって」
「ビアンキ!!」
尻餅をついてその場で後ずさる綱吉に構わず、ビアンキは堂々と部屋に入って来る。
見た瞬間まさかとは思ったが、あのポイズンクッキングは綱吉に用意したもののようだ。
以前あれほど脅したというのに、彼女は全く懲りていないのだろうか。
「な、なんでお前がここにいるんだよ! またそんな毒々しいもん持って~~っ!」
綱吉のもっともな質問に、ビアンキは優雅な笑みを浮かべながら答える。
「愛のためよ」
「仕事のためだぞ」
「リボーンは私がいなくちゃダメなのよ」
「お前の家庭教師を一部ビアンキにたのもーと思ってな」
ビアンキの回答にリボーンが細かく合いの手を入れているが、見事に意見が食い違っている。
愛のためだとしても仕事のためだとしても、看過できない意思疎通の不備である。
綱吉もビアンキに主張するのは無駄だと悟ったのか、標的をリボーンに切り替えた。
「つーか、何いきなり家庭教師とか言ってんだよ!! 自分もロクにしてねーくせに! それにこの女はオレをポイズンクッキングで毒殺しよーとしてんだぞ!!」
しかし必死に訴えている内容は、皮肉にも以前に私がリボーンに投げ掛けた発言と同一だった。
残念ながら私と同じことを言っているようでは、リボーンを説き伏せることは不可能だ。
すると、思いもよらない人物から横槍が入った。
「フフ、まだ子供ね。いつまでもそんなことにこだわってるなんて」
「え?」
私と綱吉が揃って注目すると、彼女は得意気にピースサインをした。
「今開発してるのはポイズンクッキングⅡなの。殺傷力二倍!」
「尚更出てってくれー!!!」
激しく同感だ。
次にビアンキの殺意が行動に表れたら息の根を止めようと静かに決意すると、その殺気を感じ取ったのかビアンキは台所に行くと言い残して退散していった。
それにしても、リボーンからビアンキを家庭教師にすると提案された時は引っ掛からなかったが、作った料理がすべてポイズンクッキングになる彼女に家庭科実習を任せるのはほとんど自殺行為ではないだろうか?
当の本人は、食べずに技術だけ(料理技術という意味でもポイズンクッキングという意味でも)習得すれば問題ないな、などと楽観的には考えていないようだし。
「このままじゃ殺されるの時間の問題だよ!」
「大丈夫よ」
「え?」
綱吉があまりに狼狽するので、思わずそんなフォローを入れた。
すると綱吉は私の言葉を違う意味に捉えたようで、勢いよく私に詰め寄ったのだ。
「そうだ! アゲハはオレの護衛なんだよな!? なんとかしてくれよ!!」
「だから大丈夫よ。心配しなくても、ツナは自分の力で困難を乗り越えられるじゃない。この程度、私が護衛するまでもないわよ」
そう教えてあげると、彼は呆然とした様子で私の顔を凝視した。
その後無言で私から離れると、リボーンにこっそり耳打ちしたのだった。
「リボーン……。なんか家庭科実習があった日から、アゲハがオレを法外に買い被ってるような気がするんだけど……」
「良かったな」
「良くないよ! 結局何の解決にもなってないし!!」
どうやら私の助言では綱吉の心配を取り払えなかったらしい。
私としては、一度ビアンキを退けた彼が何故そこまで神経質になるのか理解できないのだが。
「そんなことよりツナ、来たわよ」
「え?」
綱吉が聞き返した直後、玄関からインターホンが鳴った。
それに続いて「十代目~~っ!」という声も聞こえたので、来訪者が誰であるかは明言しなくてもいいだろう。
その声に綱吉があからさまに顔を歪め(獄寺が可哀想)、玄関に向かうために部屋を出て行った。
すると、リボーンに「そういや、アゲハ」と呼びかけられた。
「何?」
玄関での彼らの会話に耳を傾けながら返事をすると、リボーンはそうめんを口に運びながらこう告げた。
「ビアンキと獄寺が腹違いの姉弟だって知ってるか?」
日本には任務で何度か足を運んだことがあるが、実を言うと現地の夏を体験するのは今回が初めてである。
四季に文句をつけてもどうしようもないのは頭で理解しているが、日本の夏のうだるような暑さには参ってしまう。
実際の気温はイタリアとそう大差なくても、湿度が高い所為で暑苦しく感じてしまう――しかし、このクーラーの効いた部屋では関係ない。
涼しく快適な環境で、私とリボーンは浴衣を身に纏い冷やしそうめんに舌鼓を打っている。
普段煩わしく感じている日本の夏を存分に満喫しているのだった。
数刻前にランボがリボーンに暗殺を仕掛けて騒がしかったが、今は疲れて部屋の隅で眠っている。
風鈴に姿を変えたレオンが涼やかな音を奏でるのを聞きながら風流な時間を楽しんでいると、ドアががちゃりと開いて綱吉が現れた。
「お前達は日本の夏を存分に味わってんなー!!!」
彼は部屋の様子を目にした途端、大声で叫んだ。
この暑い中、元気が良くて感心する。
「しかもアゲハ、その浴衣どうしたの?」
「ママンが昔着ていたものを貸してもらったのよ。変だった?」
「えっ……いや……」
綱吉が言い淀んだので、自身の浴衣を改めて眺めてみる。
白地に大輪の向日葵が描かれた浴衣。
確かに私よりもママンに似合いそうな柄である。
そもそも浴衣自体初めて着るのだから、多少違和感があるのは仕方ないだろう。
「まあ、いいわ。そんなことより、部屋の温度が上がるから早くドアを閉めてくれる?」
そう言って綱吉の方を向いた時、彼の背後から平然と現れた人物を視認して動きを止めた。
片手に怪しい色をした冷やしそうめんを携えた彼女は、白々しく綱吉に声を掛ける。
「貴方の分もあるわよ。かっ食らって」
「ビアンキ!!」
尻餅をついてその場で後ずさる綱吉に構わず、ビアンキは堂々と部屋に入って来る。
見た瞬間まさかとは思ったが、あのポイズンクッキングは綱吉に用意したもののようだ。
以前あれほど脅したというのに、彼女は全く懲りていないのだろうか。
「な、なんでお前がここにいるんだよ! またそんな毒々しいもん持って~~っ!」
綱吉のもっともな質問に、ビアンキは優雅な笑みを浮かべながら答える。
「愛のためよ」
「仕事のためだぞ」
「リボーンは私がいなくちゃダメなのよ」
「お前の家庭教師を一部ビアンキにたのもーと思ってな」
ビアンキの回答にリボーンが細かく合いの手を入れているが、見事に意見が食い違っている。
愛のためだとしても仕事のためだとしても、看過できない意思疎通の不備である。
綱吉もビアンキに主張するのは無駄だと悟ったのか、標的をリボーンに切り替えた。
「つーか、何いきなり家庭教師とか言ってんだよ!! 自分もロクにしてねーくせに! それにこの女はオレをポイズンクッキングで毒殺しよーとしてんだぞ!!」
しかし必死に訴えている内容は、皮肉にも以前に私がリボーンに投げ掛けた発言と同一だった。
残念ながら私と同じことを言っているようでは、リボーンを説き伏せることは不可能だ。
すると、思いもよらない人物から横槍が入った。
「フフ、まだ子供ね。いつまでもそんなことにこだわってるなんて」
「え?」
私と綱吉が揃って注目すると、彼女は得意気にピースサインをした。
「今開発してるのはポイズンクッキングⅡなの。殺傷力二倍!」
「尚更出てってくれー!!!」
激しく同感だ。
次にビアンキの殺意が行動に表れたら息の根を止めようと静かに決意すると、その殺気を感じ取ったのかビアンキは台所に行くと言い残して退散していった。
それにしても、リボーンからビアンキを家庭教師にすると提案された時は引っ掛からなかったが、作った料理がすべてポイズンクッキングになる彼女に家庭科実習を任せるのはほとんど自殺行為ではないだろうか?
当の本人は、食べずに技術だけ(料理技術という意味でもポイズンクッキングという意味でも)習得すれば問題ないな、などと楽観的には考えていないようだし。
「このままじゃ殺されるの時間の問題だよ!」
「大丈夫よ」
「え?」
綱吉があまりに狼狽するので、思わずそんなフォローを入れた。
すると綱吉は私の言葉を違う意味に捉えたようで、勢いよく私に詰め寄ったのだ。
「そうだ! アゲハはオレの護衛なんだよな!? なんとかしてくれよ!!」
「だから大丈夫よ。心配しなくても、ツナは自分の力で困難を乗り越えられるじゃない。この程度、私が護衛するまでもないわよ」
そう教えてあげると、彼は呆然とした様子で私の顔を凝視した。
その後無言で私から離れると、リボーンにこっそり耳打ちしたのだった。
「リボーン……。なんか家庭科実習があった日から、アゲハがオレを法外に買い被ってるような気がするんだけど……」
「良かったな」
「良くないよ! 結局何の解決にもなってないし!!」
どうやら私の助言では綱吉の心配を取り払えなかったらしい。
私としては、一度ビアンキを退けた彼が何故そこまで神経質になるのか理解できないのだが。
「そんなことよりツナ、来たわよ」
「え?」
綱吉が聞き返した直後、玄関からインターホンが鳴った。
それに続いて「十代目~~っ!」という声も聞こえたので、来訪者が誰であるかは明言しなくてもいいだろう。
その声に綱吉があからさまに顔を歪め(獄寺が可哀想)、玄関に向かうために部屋を出て行った。
すると、リボーンに「そういや、アゲハ」と呼びかけられた。
「何?」
玄関での彼らの会話に耳を傾けながら返事をすると、リボーンはそうめんを口に運びながらこう告げた。
「ビアンキと獄寺が腹違いの姉弟だって知ってるか?」