番外編
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地下室の厳重な扉の鍵を開け、ゆっくりと重厚な扉を押し開けた。
ぎいいっ、と立てつけの悪い音と共に、地下室独特のかび臭い空気が一気に外へ流れ出す。
地下室は牢屋になっており、主にファミリーへの反逆者を閉じ込めるために使用されている。
そのため、頑丈な鉄格子で囲われた檻が備えられ、檻の中には生活に必要な最低限の設備しか整っていない。
そんな劣悪な環境の中――檻の内側の簡易ベッドの上に、世界一美しい少女が座り込んでいた。
宮野アゲハが、幽閉されていた。
普段の凛々しいスーツではなく安っぽい無地のワンピースだが、黒い長髪も白い肌も青い瞳も、アゲハの魅力は何一つ衰えていない。
たとえ囚われの身であっても、彼女は普段と何も変わらず気高く荘厳な雰囲気を纏っている。
もし来訪者が彼女をよく知らない人間だったなら、このあまりに非現実的で幻想的な光景に言葉を失い立ち尽くしただろう。
アゲハの昔馴染みであるリボーンですら、コイツは何処にいても変わんねーな、と感嘆したほどだったのだから。
扉が放たれ彼が姿を現したところで、アゲハは顔を上げて僅かに微笑んだ。
「あら、リボーン。一週間振りね」
「元気そうだな、アゲハ」
リボーンは口元に笑みを湛えながら挨拶すると、鉄格子に近寄っていく。
するとアゲハはすぐに表情を消し、憂鬱そうに天を仰いだ。
その拍子に、彼女の艶やかな髪がさらりと流れる。
「元気ではあるけれど、退屈すぎてそろそろ限界だったわ。ここには娯楽は何もないし、地上の様子を知る能力もないし」
「だろーな」
そう言うと、檻の外に置かれた椅子の上に飛び乗った。
ベッドに座るアゲハと目線の高さが合ったところで、リボーンは改めて室内を見渡す。
お世辞にも綺麗とは言えない地下牢。
本来、アゲハがこんな場所に幽閉される必要はない。
一週間前に彼女が敵マフィアを“消滅”させた件で、味方から『危険すぎる』と判断され閉じ込められたのだ。
彼女からすれば命令されたことを遂行しただけで、とんだとばっちりだろう。
ただし、リボーンは今回彼女に全く落ち度がないとは思っていない。
どころかいくら事情があるとは言え、不用意にあんな過激な手段を取ったアゲハが悪いとすら思っている。
ただ、それでも友人としての情があるためか、最近こう感じるのだ。
――コイツは誰より力を持ってるのに、いつも周囲に振り回されてんな。
これまでの経歴を知っているからこそ、今のこの状況が彼女の抗えない運命を象徴しているように感じてしまうのだ。
「今までよくこんなとこで大人しく生活してたな。こんな拘束、お前なら自力で抜け出せんだろ」
心の内を悟られないよう、檻を観察しながら何気ない調子でそう言った。
反逆者の脱走を防ぐため、この檻も地下室も特別頑丈に設計されているが、アゲハにとっては紙切れ同然だろう。
そもそも、上層部は本当に彼女を封じることができると思っているのだろうか?
「それはそうだけど……、処分が決まるまでここにいろと言われたから」
リボーンの何気ない感想に、アゲハも何気なく返した。
しかし、それはリボーンにとっては聞き逃せない発言だった。
言われたから、囚われていた。
命令されたから従った。
それは、この行動にアゲハの意思は全くないという意味なのだろうか?
確かに、もしアゲハが地下室から脱走していれば大問題になっただろう。
そうなれば上層部の決定も今とは変わったかもしれない。
宮野アゲハは組織にとって危険な存在だという判断を覆すことはできなかったかもしれない。
つまり、結果としてアゲハの判断は正しかったのだ。
しかし――それは本当に“彼女の”判断と言えるのか?
ざわり、とリボーンの胸中で嫌な予感がした。
それは、アゲハと一番付き合いの長い彼だからこそ察知できた危険信号だった。
「――別に、お前の好きにすればいいと思うぞ。周りがいくら騒ごうがな」
「そうね。必要になったらそうするわ」
柄にもなく焦って発した言葉は、あっさり流されてしまった。
そのニュアンスからすると、どうやら暫く反抗するつもりはないらしい。
どころか、そもそも必要性を感じてすらいないようだ。
嫌な予感が増長する。
しかし、アゲハはリボーンの胸の内など知らず、マイペースに会話を続ける。
「それはそうと、監禁を解くために尽力してくれたそうね。ありがとう」
「……誰から聞いた?」
「雅也 君よ」
突然登場した名前に、リボーンの眉がぴくりと動いた。
ぎいいっ、と立てつけの悪い音と共に、地下室独特のかび臭い空気が一気に外へ流れ出す。
地下室は牢屋になっており、主にファミリーへの反逆者を閉じ込めるために使用されている。
そのため、頑丈な鉄格子で囲われた檻が備えられ、檻の中には生活に必要な最低限の設備しか整っていない。
そんな劣悪な環境の中――檻の内側の簡易ベッドの上に、世界一美しい少女が座り込んでいた。
宮野アゲハが、幽閉されていた。
普段の凛々しいスーツではなく安っぽい無地のワンピースだが、黒い長髪も白い肌も青い瞳も、アゲハの魅力は何一つ衰えていない。
たとえ囚われの身であっても、彼女は普段と何も変わらず気高く荘厳な雰囲気を纏っている。
もし来訪者が彼女をよく知らない人間だったなら、このあまりに非現実的で幻想的な光景に言葉を失い立ち尽くしただろう。
アゲハの昔馴染みであるリボーンですら、コイツは何処にいても変わんねーな、と感嘆したほどだったのだから。
扉が放たれ彼が姿を現したところで、アゲハは顔を上げて僅かに微笑んだ。
「あら、リボーン。一週間振りね」
「元気そうだな、アゲハ」
リボーンは口元に笑みを湛えながら挨拶すると、鉄格子に近寄っていく。
するとアゲハはすぐに表情を消し、憂鬱そうに天を仰いだ。
その拍子に、彼女の艶やかな髪がさらりと流れる。
「元気ではあるけれど、退屈すぎてそろそろ限界だったわ。ここには娯楽は何もないし、地上の様子を知る能力もないし」
「だろーな」
そう言うと、檻の外に置かれた椅子の上に飛び乗った。
ベッドに座るアゲハと目線の高さが合ったところで、リボーンは改めて室内を見渡す。
お世辞にも綺麗とは言えない地下牢。
本来、アゲハがこんな場所に幽閉される必要はない。
一週間前に彼女が敵マフィアを“消滅”させた件で、味方から『危険すぎる』と判断され閉じ込められたのだ。
彼女からすれば命令されたことを遂行しただけで、とんだとばっちりだろう。
ただし、リボーンは今回彼女に全く落ち度がないとは思っていない。
どころかいくら事情があるとは言え、不用意にあんな過激な手段を取ったアゲハが悪いとすら思っている。
ただ、それでも友人としての情があるためか、最近こう感じるのだ。
――コイツは誰より力を持ってるのに、いつも周囲に振り回されてんな。
これまでの経歴を知っているからこそ、今のこの状況が彼女の抗えない運命を象徴しているように感じてしまうのだ。
「今までよくこんなとこで大人しく生活してたな。こんな拘束、お前なら自力で抜け出せんだろ」
心の内を悟られないよう、檻を観察しながら何気ない調子でそう言った。
反逆者の脱走を防ぐため、この檻も地下室も特別頑丈に設計されているが、アゲハにとっては紙切れ同然だろう。
そもそも、上層部は本当に彼女を封じることができると思っているのだろうか?
「それはそうだけど……、処分が決まるまでここにいろと言われたから」
リボーンの何気ない感想に、アゲハも何気なく返した。
しかし、それはリボーンにとっては聞き逃せない発言だった。
言われたから、囚われていた。
命令されたから従った。
それは、この行動にアゲハの意思は全くないという意味なのだろうか?
確かに、もしアゲハが地下室から脱走していれば大問題になっただろう。
そうなれば上層部の決定も今とは変わったかもしれない。
宮野アゲハは組織にとって危険な存在だという判断を覆すことはできなかったかもしれない。
つまり、結果としてアゲハの判断は正しかったのだ。
しかし――それは本当に“彼女の”判断と言えるのか?
ざわり、とリボーンの胸中で嫌な予感がした。
それは、アゲハと一番付き合いの長い彼だからこそ察知できた危険信号だった。
「――別に、お前の好きにすればいいと思うぞ。周りがいくら騒ごうがな」
「そうね。必要になったらそうするわ」
柄にもなく焦って発した言葉は、あっさり流されてしまった。
そのニュアンスからすると、どうやら暫く反抗するつもりはないらしい。
どころか、そもそも必要性を感じてすらいないようだ。
嫌な予感が増長する。
しかし、アゲハはリボーンの胸の内など知らず、マイペースに会話を続ける。
「それはそうと、監禁を解くために尽力してくれたそうね。ありがとう」
「……誰から聞いた?」
「
突然登場した名前に、リボーンの眉がぴくりと動いた。