標的8 ご都合主義に都合のいい展開
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《視点:宮野アゲハ 場所:同中庭》
綱吉と共に中庭に向かうと、まさに睨みあう獄寺と山本を発見した。
綱吉が声を掛けると、山本は笑顔でよお、と返したが、獄寺は素早く両手に持っていたものを背中に隠す動作をした。
一瞬しか見えなかったが、あれは間違いなくダイナマイトだ。
私達の登場があと少し遅れていたら、山本が爆発の餌食になる恐れがあったのだ。
獄寺に白い目を向けていると、山本が綱吉の足元に注目しながら不思議そうな表情を浮かべた。
「何そいつ。ツナの弟?」
「へ?」
山本に指摘され、初めて自分の腰に括り付けられたロープと台車でついて来たリボーンの存在に気づいたようだ。
他人に言われる前に、重量と異物の感触に自分で気づいてほしかった。
「弟じゃねーぞ。オレはマフィアボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ」
「ハハハハ、そっか。そりゃ失礼した」
山本はリボーンに目線を合わせるようにしゃがみ込むと、リボーンのカミングアウトを笑い飛ばした。
頭を抱えて慌てる綱吉が滑稽に見えるほど、あっさりと聞き流したのだ。
「こんなちっせーうちから殺し屋たぁ大変だな」
「そーでもねーぞ。お前もボンゴレファミリーに入るんだぞ」
やはりいきなりマフィアだの殺し屋だのと言われても、本気にする人などいないのだろう。
尚も焦る綱吉に、山本が笑顔で嗜める。
「まーまー、相手は子供じゃねーか。オレらもガキの頃やったろ? 刑事ごっこだのヒーローごっこだの」
私はやってない。
「ファミリーの十代目のボスはツナなんだ。アゲハはその補佐だぞ」
「っほー、そりゃまたグッドな人選だな」
そう言うと、ひょい、とリボーンを持ち上げ、自分の肩に乗せたのだ。
綱吉は即座に大声を出したが、これにはさすがに私も少し驚いた。
山本の行動ではなく、それをリボーンが黙認していることに対してだ。
リボーンは易々と自分の身体に触らせないし、現に綱吉は過去に触れただけで半殺しにされていた。
そこまで気を許すほど買っているのだろうか。
その時、ふと山本の目線が私に移った。
私もちょうど山本を目で追っていたので、視線が交わる形となる。
すると、彼は私に視線を寄越したまま、堂々と宣言したのだ。
「よーし分かった。んじゃ、オレも入れてくれよ、そのボンゴレファミリーってのに」
「えー!! や……山本!? 何言ってんの!?」
「ちっ」
隣であからさまに舌打ちを打つ獄寺に内心苦笑する。
反りが合わないのか、随分と目の敵にしているようだ。
「で、何すりゃいいんだ?」
「まず入ファミリー試験だぞ」
とうとう話が入ファミリー試験に移り、私も集中して聞き入る。
リボーン曰く、試験に合格しなければファミリーに入れないが、不合格は死を意味するらしい。
そして、気になるその内容は――
「試験は簡単だ。とにかく攻撃をかわせ」
だ、そうだ。
簡単かどうかはともかく、いたってシンプルな試験と言える。
その後の流れで綱吉まで参加することになり(リボーンがわざわざ忠告したのはこのことだろう)、試験がスタートした。
最初はナイフ、ボウガンなど単純な攻撃を避けるだけだったが、途中ランボが乱入し、リボーンの煽りで獄寺まで参戦した結果、洒落にならない大爆発を起こしてしまった。
幻覚で結界を作っていなければ雲雀が飛んで来ただろう。
結果として、綱吉と山本は大きな怪我もせずすべての攻撃を逃れたため、山本は試験に合格、正式にファミリーとなった。
山本についてもう少し細かく追記しておくと、さすが野球で鍛えているだけあり、反射神経は一般人とは思えないほど優れており、体力も申し分ない。
もしかしたら、身体能力だけなら獄寺より上かもしれないほどである。
そして何より特筆すべきは、終始この試験のことをごっこ遊びの延長だと捉えていたらしいということだ。
手加減していたとは言え、殺し屋であるリボーンの攻撃を受けながら、彼は常に笑顔だったのだ。
実践でも臆さない態度は、究極の馬鹿か、殺し屋としての才能の片鱗か――どちらにせよ稀有な存在である。
ちなみに獄寺はと言うと、十代目を攻撃から守った山本のことを多少認めたようで、これで『獄寺を納得させる』というリボーンの目的も果たされた。
今回の計画で、リボーンが一番得をした気がしてならない。
何処までリボーンの思惑通りだったのか、彼の真意は分からない。
プールでの発言も謎のままだ。
これが敵の手の内なら死ぬ気で読み解くのだが、リボーンのような味方に対してはどうも甘くなる。
それは心の奥で『味方が決して裏切ることはない』という根拠のない信頼があるためだろう。
――もうちょっと自分に向けられる好意に気づいてあげてねぇ。
この時何故か、かつて黒猫が吐いた言葉が蘇った。
あの時は苛立ちに任せて台詞を途中で遮り、そして今回もその言葉の意味を深く考えることはなかった。
山本の「しっかしさっきの爆発といい、最近のおもちゃってリアルなー」という発言ですべてどうでも良くなったのだ。
綱吉と共に中庭に向かうと、まさに睨みあう獄寺と山本を発見した。
綱吉が声を掛けると、山本は笑顔でよお、と返したが、獄寺は素早く両手に持っていたものを背中に隠す動作をした。
一瞬しか見えなかったが、あれは間違いなくダイナマイトだ。
私達の登場があと少し遅れていたら、山本が爆発の餌食になる恐れがあったのだ。
獄寺に白い目を向けていると、山本が綱吉の足元に注目しながら不思議そうな表情を浮かべた。
「何そいつ。ツナの弟?」
「へ?」
山本に指摘され、初めて自分の腰に括り付けられたロープと台車でついて来たリボーンの存在に気づいたようだ。
他人に言われる前に、重量と異物の感触に自分で気づいてほしかった。
「弟じゃねーぞ。オレはマフィアボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ」
「ハハハハ、そっか。そりゃ失礼した」
山本はリボーンに目線を合わせるようにしゃがみ込むと、リボーンのカミングアウトを笑い飛ばした。
頭を抱えて慌てる綱吉が滑稽に見えるほど、あっさりと聞き流したのだ。
「こんなちっせーうちから殺し屋たぁ大変だな」
「そーでもねーぞ。お前もボンゴレファミリーに入るんだぞ」
やはりいきなりマフィアだの殺し屋だのと言われても、本気にする人などいないのだろう。
尚も焦る綱吉に、山本が笑顔で嗜める。
「まーまー、相手は子供じゃねーか。オレらもガキの頃やったろ? 刑事ごっこだのヒーローごっこだの」
私はやってない。
「ファミリーの十代目のボスはツナなんだ。アゲハはその補佐だぞ」
「っほー、そりゃまたグッドな人選だな」
そう言うと、ひょい、とリボーンを持ち上げ、自分の肩に乗せたのだ。
綱吉は即座に大声を出したが、これにはさすがに私も少し驚いた。
山本の行動ではなく、それをリボーンが黙認していることに対してだ。
リボーンは易々と自分の身体に触らせないし、現に綱吉は過去に触れただけで半殺しにされていた。
そこまで気を許すほど買っているのだろうか。
その時、ふと山本の目線が私に移った。
私もちょうど山本を目で追っていたので、視線が交わる形となる。
すると、彼は私に視線を寄越したまま、堂々と宣言したのだ。
「よーし分かった。んじゃ、オレも入れてくれよ、そのボンゴレファミリーってのに」
「えー!! や……山本!? 何言ってんの!?」
「ちっ」
隣であからさまに舌打ちを打つ獄寺に内心苦笑する。
反りが合わないのか、随分と目の敵にしているようだ。
「で、何すりゃいいんだ?」
「まず入ファミリー試験だぞ」
とうとう話が入ファミリー試験に移り、私も集中して聞き入る。
リボーン曰く、試験に合格しなければファミリーに入れないが、不合格は死を意味するらしい。
そして、気になるその内容は――
「試験は簡単だ。とにかく攻撃をかわせ」
だ、そうだ。
簡単かどうかはともかく、いたってシンプルな試験と言える。
その後の流れで綱吉まで参加することになり(リボーンがわざわざ忠告したのはこのことだろう)、試験がスタートした。
最初はナイフ、ボウガンなど単純な攻撃を避けるだけだったが、途中ランボが乱入し、リボーンの煽りで獄寺まで参戦した結果、洒落にならない大爆発を起こしてしまった。
幻覚で結界を作っていなければ雲雀が飛んで来ただろう。
結果として、綱吉と山本は大きな怪我もせずすべての攻撃を逃れたため、山本は試験に合格、正式にファミリーとなった。
山本についてもう少し細かく追記しておくと、さすが野球で鍛えているだけあり、反射神経は一般人とは思えないほど優れており、体力も申し分ない。
もしかしたら、身体能力だけなら獄寺より上かもしれないほどである。
そして何より特筆すべきは、終始この試験のことをごっこ遊びの延長だと捉えていたらしいということだ。
手加減していたとは言え、殺し屋であるリボーンの攻撃を受けながら、彼は常に笑顔だったのだ。
実践でも臆さない態度は、究極の馬鹿か、殺し屋としての才能の片鱗か――どちらにせよ稀有な存在である。
ちなみに獄寺はと言うと、十代目を攻撃から守った山本のことを多少認めたようで、これで『獄寺を納得させる』というリボーンの目的も果たされた。
今回の計画で、リボーンが一番得をした気がしてならない。
何処までリボーンの思惑通りだったのか、彼の真意は分からない。
プールでの発言も謎のままだ。
これが敵の手の内なら死ぬ気で読み解くのだが、リボーンのような味方に対してはどうも甘くなる。
それは心の奥で『味方が決して裏切ることはない』という根拠のない信頼があるためだろう。
――もうちょっと自分に向けられる好意に気づいてあげてねぇ。
この時何故か、かつて黒猫が吐いた言葉が蘇った。
あの時は苛立ちに任せて台詞を途中で遮り、そして今回もその言葉の意味を深く考えることはなかった。
山本の「しっかしさっきの爆発といい、最近のおもちゃってリアルなー」という発言ですべてどうでも良くなったのだ。