標的8 ご都合主義に都合のいい展開
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《視点:獄寺隼人 場所:並盛中学校付近の歩道橋》
オレは十代目の右腕として、十代目をお守りする義務がある。
そう心に誓い、十代目が登校するのを後ろからこっそり見守っていたのだ。
今十代目の傍には、アゲハと山本とかいうクラスメイトがいる。
ここからではどんな会話をしているかまでは聞き取れないが、随分盛り上がっているようだ。
それだけならまだいい。
問題なのは、山本が十代目に対して馴れ馴れしくしていることだ。
ついさっきなど、十代目の肩に肘を乗せていたのだ。
一体何様のつもりだ。
そもそも、前々からいけ好かないと思っていた。
最近山本が十代目によく話し掛けるようになってから、ずっと思っていた。
しかし、リボーンさんはそんなあいつをファミリーに加えるというのだ。
あんな軽薄そうな奴は十代目には相応しくないとオレは感じている。
あんな見るからに平和ボケした弱そうな奴が十代目を守れるはずがないのだ。
悶々としながら観察を続けていると、なんと奴は十代目の頭を肘で小突いたのだ。
ショックで思わず手の中の煙草を握り潰した。
あの野球野郎、十代目に馴れ馴れしくしやがって!
オレはとうとう堪え切れず、足元にいるリボーンさんに訴えた。
「リボーンさん。本当にあいつをファミリーに入れるつもりですか?」
「つもりじゃなく、もう入ってるぞ。オレが決めた」
「な!」
予想外の返答にショックで唖然といていると、言った傍から再びあいつは十代目を小突いていた。
これで二度目だ。
もう許せるはずがない。
いくらリボーンさんの意見とは言え、これはさすがに従えなかった。
「考え直して下さい、リボーンさん!! オレはあんな無礼な奴を入れるのは反対です!!」
異議を唱えてリボーンさんを見ると、なんと彼はいつの間にか寝息を立てて眠ってしまっていた。
ご丁寧に鼻ちょうちんまで出来ている。
一体いつから寝ていたのだろうか。
それに、オレの意見はちゃんと聞き入れてもらえたのだろうか。
だがさすがに叩き起こすことはできず、仕方なくもう一度十代目達を観察する。
今度は野球馬鹿が十代目に無礼を働くことはなかったが、代わりにアゲハと楽しそうに会話していた。
楽しそうに、というのはあくまで山本の表情を見たまでの感想だ。
そもそもアゲハは表情が乏しいし、ここから細かい感情を読み取るには距離がある。
けれど、十代目やリボーンさんやクラスの女子以外とあんなに親しげに話すアゲハの姿を、オレはこれまでに見たことがなかった。
手の中で、煙草が潰れる音がした。
「あーいや! そもそもなんであいつは野球馬鹿の無礼を黙って見てるんだ! 十代目の護衛だろーが!!」
胸に広がる嫌な感情を誤魔化すようにわざと大声で文句を言うと、思わぬところから返事が返って来た。
「オレがそうしろって言ったからな」
「え!? リボーンさん?」
慌てて足元に目を向けると、彼はいつの間にか目を覚ましていた。
本当に予測のつかないお方だ。
「ああ。過剰に保護してたら、ツナの成長にならねーからな」
「それはそうかもしれませんが……」
リボーンさんの決定にオレが何かを言う資格はない。
けれど、何処か納得できなかった。
複雑な気持ちで手元のひしゃげた煙草に視線を落とす。
すると、リボーンさんから唐突に声が掛かった。
「おい、獄寺。アゲハとは前に会ったことあんのか?」
「あー……はい。オレがまだ城にいた時に、一度だけ」
オレにとっては忘れもしない出来事だ。
しかし、あいつは――
「でも、あいつは覚えてないみたいですけどね」
日本でアゲハに会った時、あいつは『初めまして』と言ったのだ。
忘れていたのだ。
オレが後生大事に抱えていた思い出は、あいつの中に残ってすらいなかった。
確かに出会ったのは六年も前のことで、しかもたった一度きりだ。
普通なら忘れていてもおかしくないだろう。
けれど、否が応でも実感させられた価値観の違いに失望せざるを得なかった。
オレの大切な思い出は、あいつにとってはどうでもいいものだったのだ。
「なるほどな」
足元でため息と共に吐き出された呟きは、何処か意味深な響きを含んでいた。
不審に感じ視線を向けると、リボーンさんは口元に笑みを浮かべ、オレを試すように見上げていた。
「だが、失望すんのはまだ早えーぞ。あいつの価値観は、これからお前が見極めろ」
オレは十代目の右腕として、十代目をお守りする義務がある。
そう心に誓い、十代目が登校するのを後ろからこっそり見守っていたのだ。
今十代目の傍には、アゲハと山本とかいうクラスメイトがいる。
ここからではどんな会話をしているかまでは聞き取れないが、随分盛り上がっているようだ。
それだけならまだいい。
問題なのは、山本が十代目に対して馴れ馴れしくしていることだ。
ついさっきなど、十代目の肩に肘を乗せていたのだ。
一体何様のつもりだ。
そもそも、前々からいけ好かないと思っていた。
最近山本が十代目によく話し掛けるようになってから、ずっと思っていた。
しかし、リボーンさんはそんなあいつをファミリーに加えるというのだ。
あんな軽薄そうな奴は十代目には相応しくないとオレは感じている。
あんな見るからに平和ボケした弱そうな奴が十代目を守れるはずがないのだ。
悶々としながら観察を続けていると、なんと奴は十代目の頭を肘で小突いたのだ。
ショックで思わず手の中の煙草を握り潰した。
あの野球野郎、十代目に馴れ馴れしくしやがって!
オレはとうとう堪え切れず、足元にいるリボーンさんに訴えた。
「リボーンさん。本当にあいつをファミリーに入れるつもりですか?」
「つもりじゃなく、もう入ってるぞ。オレが決めた」
「な!」
予想外の返答にショックで唖然といていると、言った傍から再びあいつは十代目を小突いていた。
これで二度目だ。
もう許せるはずがない。
いくらリボーンさんの意見とは言え、これはさすがに従えなかった。
「考え直して下さい、リボーンさん!! オレはあんな無礼な奴を入れるのは反対です!!」
異議を唱えてリボーンさんを見ると、なんと彼はいつの間にか寝息を立てて眠ってしまっていた。
ご丁寧に鼻ちょうちんまで出来ている。
一体いつから寝ていたのだろうか。
それに、オレの意見はちゃんと聞き入れてもらえたのだろうか。
だがさすがに叩き起こすことはできず、仕方なくもう一度十代目達を観察する。
今度は野球馬鹿が十代目に無礼を働くことはなかったが、代わりにアゲハと楽しそうに会話していた。
楽しそうに、というのはあくまで山本の表情を見たまでの感想だ。
そもそもアゲハは表情が乏しいし、ここから細かい感情を読み取るには距離がある。
けれど、十代目やリボーンさんやクラスの女子以外とあんなに親しげに話すアゲハの姿を、オレはこれまでに見たことがなかった。
手の中で、煙草が潰れる音がした。
「あーいや! そもそもなんであいつは野球馬鹿の無礼を黙って見てるんだ! 十代目の護衛だろーが!!」
胸に広がる嫌な感情を誤魔化すようにわざと大声で文句を言うと、思わぬところから返事が返って来た。
「オレがそうしろって言ったからな」
「え!? リボーンさん?」
慌てて足元に目を向けると、彼はいつの間にか目を覚ましていた。
本当に予測のつかないお方だ。
「ああ。過剰に保護してたら、ツナの成長にならねーからな」
「それはそうかもしれませんが……」
リボーンさんの決定にオレが何かを言う資格はない。
けれど、何処か納得できなかった。
複雑な気持ちで手元のひしゃげた煙草に視線を落とす。
すると、リボーンさんから唐突に声が掛かった。
「おい、獄寺。アゲハとは前に会ったことあんのか?」
「あー……はい。オレがまだ城にいた時に、一度だけ」
オレにとっては忘れもしない出来事だ。
しかし、あいつは――
「でも、あいつは覚えてないみたいですけどね」
日本でアゲハに会った時、あいつは『初めまして』と言ったのだ。
忘れていたのだ。
オレが後生大事に抱えていた思い出は、あいつの中に残ってすらいなかった。
確かに出会ったのは六年も前のことで、しかもたった一度きりだ。
普通なら忘れていてもおかしくないだろう。
けれど、否が応でも実感させられた価値観の違いに失望せざるを得なかった。
オレの大切な思い出は、あいつにとってはどうでもいいものだったのだ。
「なるほどな」
足元でため息と共に吐き出された呟きは、何処か意味深な響きを含んでいた。
不審に感じ視線を向けると、リボーンさんは口元に笑みを浮かべ、オレを試すように見上げていた。
「だが、失望すんのはまだ早えーぞ。あいつの価値観は、これからお前が見極めろ」