標的8 ご都合主義に都合のいい展開
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すると、綱吉を挟んで反対側を歩いていた山本と偶然目が合ってしまった。
どうやら私が気づく前からこちらを向いていたようだ。
綱吉と会話している最中に、たまたま私が視界に入ったのだろうか。
そして、先ほどから不自然に黙り込む私の様子が気になったのだろうか。
彼の性格や最近の積極的な態度を鑑みれば、充分可能性の高い推測だ。
私は元々口数の少ない方なので、今のように長時間沈黙し続けることはよくあるのだが、短い付き合いの山本は私の性格など知るはずがない。
リボーンは言わずもがな最近では綱吉も把握しているが、付き合いの浅い人間には機嫌が悪いか気分が悪いかに見えただろう。
そして、沈黙したまま互いに見つめ合う私達の様子に綱吉も遅れて気づいたようだ。
私達の顔色をせわしなく見比べる綱吉を放置し、仕方なく私から話題を振ってみた。
「……怪我はもういいの?」
以前、オーバーワークにより骨折した右腕。
それが前述した自殺の原因になったのだが、その腕には仰々しいギプスは外れているものの今も包帯が巻かれている。
私が山本に提供できる話題は、残念ながらこの程度しかなかった。
コミュ障か、私は。
山本は少しだけ目を見開き、確認するように包帯の巻かれた腕に視線を落とした。
「ああ。さすがにもう暫くは安静にしなきゃいけねーけどな。治りは順調だぜ」
「……そう。良かったわね」
「ああ、ありがとな!」
適当に打った相槌に、嬉しそうに顔を綻ばせたのだった。
しかも、何故かそれを静観していた綱吉まで満足そうに笑みを浮かべていた。
その様子に腹が立ったので、綱吉の脇腹に肘鉄を食らわせた。
「いってー!! いきなり何すんだよ!!」
「苛々したのよ」
「だから曖昧な理由でオレを攻撃するなって!!」
「ははっ、仲いいのな、お前ら」
その光景を眼前に、山本は朗らかにそう言い放った。
一瞬、ママンと同じ空気を感じた。
私と綱吉が揃って絶句していると、山本がふと思い出したように質問した。
「そういえば、ツナとアゲハってよく一緒にいるとこ見かけるけど、家が近いのか?」
確か、遠い親戚同士なんだろ? と同意を求められ、転入初日に自分でそんな紹介をしたことを思い出した。
綱吉の反応を楽しむためだけに作り上げた設定だったので、すっかり忘却していた。
適当に肯定しようとした時、必死に言い訳を考える綱吉が視界に入り、ふとささやかな悪戯心が働いた。
ゆっくり口端を上げ、わざと包み隠さず答えたのだ。
「いいえ。ツナの家に一緒に住んでるの」
「んなっ! おい、アゲハ!!」
「へー、そうなのか」
大袈裟に慌てる綱吉に対し、山本はあっさり受け入れた。
むしろ過去の出来事と照らし合わせて納得したようにすら見える。
なかなかの大物だ。
感心していると、綱吉がぐいっと私の腕を引き、小声で耳打ちした。
「なんてこと言ってんだよ!」
「本当のことを言ったのよ」
「そうじゃなくて、一緒に住んでることを知られたら――」
「知られても別に問題なかったようだけど」
「うっ……」
山本に視線を移すと、返す言葉が見当たらないのか押し黙った。
そんな私達を山本は不思議そうに見つめている。
「ん? どうしたんだ?」
「い、いや! 何でもないよ!」
慌てて取り繕おうとした綱吉に、山本は笑顔のまま爆弾を投下した。
「一緒に住んでるってことは、やっぱり二人は付き合ってんのか?」
「なっ! 付き合ってるはずないだろ!!」
私が反応するより早く、綱吉が赤面して即答した。
そういえば、綱吉は京子に好意を寄せているのを思い出した。
もし私と付き合っているなどと噂になり、それが京子の耳に届いたら――
何をかいわんやである。
そりゃ必死に否定もするだろう。
ただ少し気になるのは、山本の言った『やっぱり』という言葉の意味だ。
もしかして、既にそういう噂が蔓延しているのだろうか。
もしそうだとすれば、その原因は間違いなくこれまでの私の言動だ。
それに関しては反省も後悔もしていないし、恐らく今後も改善するつもりはない。
私は何も困ることはないのだから。
綱吉は興奮気味に、私は無表情でいると、山本は再び納得したように頷いた。
「……へー、そうなのか」
そう言って、破顔した。
先ほどと同じ台詞だったが、何処か嬉しそうな声色に聞こえたのは、まあ気のせいだろう。
どうやら私が気づく前からこちらを向いていたようだ。
綱吉と会話している最中に、たまたま私が視界に入ったのだろうか。
そして、先ほどから不自然に黙り込む私の様子が気になったのだろうか。
彼の性格や最近の積極的な態度を鑑みれば、充分可能性の高い推測だ。
私は元々口数の少ない方なので、今のように長時間沈黙し続けることはよくあるのだが、短い付き合いの山本は私の性格など知るはずがない。
リボーンは言わずもがな最近では綱吉も把握しているが、付き合いの浅い人間には機嫌が悪いか気分が悪いかに見えただろう。
そして、沈黙したまま互いに見つめ合う私達の様子に綱吉も遅れて気づいたようだ。
私達の顔色をせわしなく見比べる綱吉を放置し、仕方なく私から話題を振ってみた。
「……怪我はもういいの?」
以前、オーバーワークにより骨折した右腕。
それが前述した自殺の原因になったのだが、その腕には仰々しいギプスは外れているものの今も包帯が巻かれている。
私が山本に提供できる話題は、残念ながらこの程度しかなかった。
コミュ障か、私は。
山本は少しだけ目を見開き、確認するように包帯の巻かれた腕に視線を落とした。
「ああ。さすがにもう暫くは安静にしなきゃいけねーけどな。治りは順調だぜ」
「……そう。良かったわね」
「ああ、ありがとな!」
適当に打った相槌に、嬉しそうに顔を綻ばせたのだった。
しかも、何故かそれを静観していた綱吉まで満足そうに笑みを浮かべていた。
その様子に腹が立ったので、綱吉の脇腹に肘鉄を食らわせた。
「いってー!! いきなり何すんだよ!!」
「苛々したのよ」
「だから曖昧な理由でオレを攻撃するなって!!」
「ははっ、仲いいのな、お前ら」
その光景を眼前に、山本は朗らかにそう言い放った。
一瞬、ママンと同じ空気を感じた。
私と綱吉が揃って絶句していると、山本がふと思い出したように質問した。
「そういえば、ツナとアゲハってよく一緒にいるとこ見かけるけど、家が近いのか?」
確か、遠い親戚同士なんだろ? と同意を求められ、転入初日に自分でそんな紹介をしたことを思い出した。
綱吉の反応を楽しむためだけに作り上げた設定だったので、すっかり忘却していた。
適当に肯定しようとした時、必死に言い訳を考える綱吉が視界に入り、ふとささやかな悪戯心が働いた。
ゆっくり口端を上げ、わざと包み隠さず答えたのだ。
「いいえ。ツナの家に一緒に住んでるの」
「んなっ! おい、アゲハ!!」
「へー、そうなのか」
大袈裟に慌てる綱吉に対し、山本はあっさり受け入れた。
むしろ過去の出来事と照らし合わせて納得したようにすら見える。
なかなかの大物だ。
感心していると、綱吉がぐいっと私の腕を引き、小声で耳打ちした。
「なんてこと言ってんだよ!」
「本当のことを言ったのよ」
「そうじゃなくて、一緒に住んでることを知られたら――」
「知られても別に問題なかったようだけど」
「うっ……」
山本に視線を移すと、返す言葉が見当たらないのか押し黙った。
そんな私達を山本は不思議そうに見つめている。
「ん? どうしたんだ?」
「い、いや! 何でもないよ!」
慌てて取り繕おうとした綱吉に、山本は笑顔のまま爆弾を投下した。
「一緒に住んでるってことは、やっぱり二人は付き合ってんのか?」
「なっ! 付き合ってるはずないだろ!!」
私が反応するより早く、綱吉が赤面して即答した。
そういえば、綱吉は京子に好意を寄せているのを思い出した。
もし私と付き合っているなどと噂になり、それが京子の耳に届いたら――
何をかいわんやである。
そりゃ必死に否定もするだろう。
ただ少し気になるのは、山本の言った『やっぱり』という言葉の意味だ。
もしかして、既にそういう噂が蔓延しているのだろうか。
もしそうだとすれば、その原因は間違いなくこれまでの私の言動だ。
それに関しては反省も後悔もしていないし、恐らく今後も改善するつもりはない。
私は何も困ることはないのだから。
綱吉は興奮気味に、私は無表情でいると、山本は再び納得したように頷いた。
「……へー、そうなのか」
そう言って、破顔した。
先ほどと同じ台詞だったが、何処か嬉しそうな声色に聞こえたのは、まあ気のせいだろう。