標的7 両極端な見解の一致
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《視点:宮野アゲハ 場所:同キッチン》
沢田家の食卓に、ランボは当然のように加わった。
色々事情があるとは言え、ヒットマンと標的が同じ食卓につくという奇妙な光景を初めて目撃した。
リボーンは、仮にも自分の命を狙う殺し屋と食事することに何も感じないのだろうか。
私の正面に座る綱吉は、この光景を気まずそうな表情で見守っている――彼の心情の方が共感できる。
ちなみに、ママンの感想は「いいじゃない。大勢の方が賑やかで」とのことだった。
彼女は本当に大物だ。
「母さん、お隣に回覧板持っていくわね。仲良くしてるのよ」
ママンがそう言い残してこの場を離れると、食卓には重い沈黙が流れた。
綱吉がとうとう耐えきれなくなり、リボーンに耳打ちする。
「リボーン、何とかしろよ。オレじゃ手に負えないよ!」
しかし、彼の渾身の懇願は呆気なく無視され、リボーンはパスタを黙々と食べ続けている。
綱吉はその態度に一瞬不満そうな顔をしたものの、すぐに相手を私に切り替えた。
「頼むよ、アゲハ。何とかしてくれ」
「情けないわね。ツナは二人よりお兄ちゃんだから仲裁に入るようにってママンに頼まれていたでしょ」
「その理屈なら、アゲハはこの中で誰より年上だろ!!」
「あら、私に仲裁を任せていいの? 本当に後悔しない?」
「一体何するつもりなんだよ!!」
何をするつもりかは想像に任せるが、少なくとも近所の子供と話したこともない奴にそんなことを頼むべきではない。
何かを想像した綱吉は、若干青ざめた。
すると、今まで大人しくしていたランボが、ナイフを構えて生唾を飲み込んだ。
嫌な予感しかしないが、平常心を保つ。
ランボはそのナイフをリボーンに向けて投げつけたが、パスタを食べる手を止めないままフォーク一本で返された。
しかも、弾き飛ばされたナイフは、ランボの額に突き刺さったのだ。
案の定ランボが大泣きするところまで予想通りだったが、その次に取った行動に、思わずパスタを巻く手を止めて凝視した。
ランボは泣きながらバズーカを取り出すと、銃口を自分に向けたのだ。
しかもそのバズーカは、先ほど話題に出たボヴィーノファミリーの伝説の武器、十年バズーカだった。
被弾した者は、十年後の自分と五分間入れ替わることのできる幻の武器。
実物を目にしたのは初めてだ。
しかも使用するところまで見せてもらえるとは、五歳児の行動力は素晴らしい。
綱吉が驚きの声を上げ、私が期待して注目する中、ランボは引き金を引いた。
爆発音と共に、辺りは煙で包まれる。
そして煙が晴れると、そこには牛柄のシャツを着た青年が立っていた。
「やれやれ。どうやら十年バズーカで十年前に呼び出されちまったみてーだな」
冷静に状況を判断する彼は、五歳児の様子からは想像もつかない。
戸惑いの声を上げる綱吉に向かって、青年は片目を瞑った。
「お久しぶり、若きボンゴレ十代目、そしてアゲハさん」
アゲハさん、と呼ばれた。
馴れ馴れしく。
「十年前の自分が世話になってます。泣き虫だったランボです」
十年後のランボは、得意気に十年バズーカの効果を説明した。
そして、綱吉が大袈裟に驚いたのに気を良くしたのか、今度は自慢げにリボーンに話しかけたのだ。
「よお、リボーン。見違えちゃっただろ? オレがお前にシカトされ続けたランボだよ」
しかし、リボーンはここでも『格下は相手にしない』という主義を貫き、シカトを続けている。
ここまで来ると、ランボに対して同情心が湧いてこないでもない。
「やれやれ。こうなりゃ実力行使しかねーな。十年間でオレがどれだけ変わったか見せてやる」
この時点でまたしても嫌な予感がしたが、平常心を心がけて見守る。
ランボは牛型の角――十年前のランボがしていたものだ――を頭に装着すると「サンダーセット」と唱えた。
すると、その角に百万ボルトの電気が宿った。
「死ねリボーン!!電撃角 !!!」
十年越しの渾身の一撃。
しかし、それは一本のフォークで易々受け止められてしまった。
「が・ま・ん……うわああ」
十年経っても、泣き虫な性格とリボーンとの関係は変わらないようだ。
日本の諺を使うなら、三つ子の魂百までということか。
「うわああん!! アゲハさん!!」
ランボは泣きながら、何故か私の名前を呼んで、こちらに向かって突進して来た。
十年の間で、助けを求められるほど親密な関係になったのだろうか。
呑気にそう分析していたのが悪かった。
そして、いかに悪意も殺意もない行為とは言え、避けも逃げもしなかったのが悪かった。
もしそうしていれば、ランボがリボーンの繰り出したオープンブローによって壁に叩きつけられることはなかっただろう。
私と綱吉は唖然としてリボーンを見つめた。
リボーンは拳銃を構えながら、殺気を込めて呟いた。
「やっぱり殺すか」
「何故」
主義はどうした。
とはいえさほど本気ではなかったらしく、ランボが悲鳴を上げながら玄関へ走っていくのを静観した。
その後、ママンに連れられて子供のランボが泣きながら帰ってきた。
欲を言えば元に戻る瞬間も観察したかったのだが、あの調子なら今後いくらでも機会がありそうだ。
(標的7 了)
沢田家の食卓に、ランボは当然のように加わった。
色々事情があるとは言え、ヒットマンと標的が同じ食卓につくという奇妙な光景を初めて目撃した。
リボーンは、仮にも自分の命を狙う殺し屋と食事することに何も感じないのだろうか。
私の正面に座る綱吉は、この光景を気まずそうな表情で見守っている――彼の心情の方が共感できる。
ちなみに、ママンの感想は「いいじゃない。大勢の方が賑やかで」とのことだった。
彼女は本当に大物だ。
「母さん、お隣に回覧板持っていくわね。仲良くしてるのよ」
ママンがそう言い残してこの場を離れると、食卓には重い沈黙が流れた。
綱吉がとうとう耐えきれなくなり、リボーンに耳打ちする。
「リボーン、何とかしろよ。オレじゃ手に負えないよ!」
しかし、彼の渾身の懇願は呆気なく無視され、リボーンはパスタを黙々と食べ続けている。
綱吉はその態度に一瞬不満そうな顔をしたものの、すぐに相手を私に切り替えた。
「頼むよ、アゲハ。何とかしてくれ」
「情けないわね。ツナは二人よりお兄ちゃんだから仲裁に入るようにってママンに頼まれていたでしょ」
「その理屈なら、アゲハはこの中で誰より年上だろ!!」
「あら、私に仲裁を任せていいの? 本当に後悔しない?」
「一体何するつもりなんだよ!!」
何をするつもりかは想像に任せるが、少なくとも近所の子供と話したこともない奴にそんなことを頼むべきではない。
何かを想像した綱吉は、若干青ざめた。
すると、今まで大人しくしていたランボが、ナイフを構えて生唾を飲み込んだ。
嫌な予感しかしないが、平常心を保つ。
ランボはそのナイフをリボーンに向けて投げつけたが、パスタを食べる手を止めないままフォーク一本で返された。
しかも、弾き飛ばされたナイフは、ランボの額に突き刺さったのだ。
案の定ランボが大泣きするところまで予想通りだったが、その次に取った行動に、思わずパスタを巻く手を止めて凝視した。
ランボは泣きながらバズーカを取り出すと、銃口を自分に向けたのだ。
しかもそのバズーカは、先ほど話題に出たボヴィーノファミリーの伝説の武器、十年バズーカだった。
被弾した者は、十年後の自分と五分間入れ替わることのできる幻の武器。
実物を目にしたのは初めてだ。
しかも使用するところまで見せてもらえるとは、五歳児の行動力は素晴らしい。
綱吉が驚きの声を上げ、私が期待して注目する中、ランボは引き金を引いた。
爆発音と共に、辺りは煙で包まれる。
そして煙が晴れると、そこには牛柄のシャツを着た青年が立っていた。
「やれやれ。どうやら十年バズーカで十年前に呼び出されちまったみてーだな」
冷静に状況を判断する彼は、五歳児の様子からは想像もつかない。
戸惑いの声を上げる綱吉に向かって、青年は片目を瞑った。
「お久しぶり、若きボンゴレ十代目、そしてアゲハさん」
アゲハさん、と呼ばれた。
馴れ馴れしく。
「十年前の自分が世話になってます。泣き虫だったランボです」
十年後のランボは、得意気に十年バズーカの効果を説明した。
そして、綱吉が大袈裟に驚いたのに気を良くしたのか、今度は自慢げにリボーンに話しかけたのだ。
「よお、リボーン。見違えちゃっただろ? オレがお前にシカトされ続けたランボだよ」
しかし、リボーンはここでも『格下は相手にしない』という主義を貫き、シカトを続けている。
ここまで来ると、ランボに対して同情心が湧いてこないでもない。
「やれやれ。こうなりゃ実力行使しかねーな。十年間でオレがどれだけ変わったか見せてやる」
この時点でまたしても嫌な予感がしたが、平常心を心がけて見守る。
ランボは牛型の角――十年前のランボがしていたものだ――を頭に装着すると「サンダーセット」と唱えた。
すると、その角に百万ボルトの電気が宿った。
「死ねリボーン!!
十年越しの渾身の一撃。
しかし、それは一本のフォークで易々受け止められてしまった。
「が・ま・ん……うわああ」
十年経っても、泣き虫な性格とリボーンとの関係は変わらないようだ。
日本の諺を使うなら、三つ子の魂百までということか。
「うわああん!! アゲハさん!!」
ランボは泣きながら、何故か私の名前を呼んで、こちらに向かって突進して来た。
十年の間で、助けを求められるほど親密な関係になったのだろうか。
呑気にそう分析していたのが悪かった。
そして、いかに悪意も殺意もない行為とは言え、避けも逃げもしなかったのが悪かった。
もしそうしていれば、ランボがリボーンの繰り出したオープンブローによって壁に叩きつけられることはなかっただろう。
私と綱吉は唖然としてリボーンを見つめた。
リボーンは拳銃を構えながら、殺気を込めて呟いた。
「やっぱり殺すか」
「何故」
主義はどうした。
とはいえさほど本気ではなかったらしく、ランボが悲鳴を上げながら玄関へ走っていくのを静観した。
その後、ママンに連れられて子供のランボが泣きながら帰ってきた。
欲を言えば元に戻る瞬間も観察したかったのだが、あの調子なら今後いくらでも機会がありそうだ。
(標的7 了)