標的7 両極端な見解の一致
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《視点:宮野アゲハ 場所:同綱吉の自室》
報告書が完成したので、先ほどまで煩くしていた隣の部屋の様子を見に行くことにした。
綱吉の部屋を覗くと、リボーンが優雅にエスプレッソを飲んでいる。
私の存在に気づくと、傍に来て座るように促されたので、部屋に入って綱吉のベッドに腰を下ろした。
ちなみにこの部屋の主は、リボーンに反撃されたことで号泣したランボを連れて外出している。
最近の綱吉は、私が勝手に部屋に入ることにもベッドに座ることにも無反応になってきた。
面倒がなくなった反面少しつまらない――と思いきや、リボーンが私を見て不機嫌そうに眉を寄せたのだった。
「……何?」
「………………いや、何でもねえ」
「何なのよその沈黙」
なかなか見られない間の長さだった。
しかし、リボーンは暫く何も喋らなかった。
ようやく口を開いたと思ったら、二、三質問がある、と神妙な顔つきで言った。
「さっきランボと接触した時、なんで始末せずに逃がしたんだ?」
「逃がした、というより放っといたのよ。標的はツナじゃないんだもの。ツナの命に関わることじゃなきゃ放置するんでしょう?」
――ツナの命に直接関わる原因は消しとけ。それ以外は放置しろ。
それが、護衛をするにあたり、リボーンと決めた“約束”だったはずだ。
同意を求めたのにそれには答えず、次いくぞ、と淡々と進められた。
「あいつがボヴィーノファミリーだって話は何処で訊いた?」
「ランボを捕まえた時よ。本人がそう言ったの」
「これまでにボヴィーノファミリーもしくはそのボスと接点は?」
「ないわ」
「本当にか?」
「ええ、記憶する限りでは――本当に何なのよ」
「そうか。なら最後の質問だ」
「……答えたらちゃんと説明してよ」
先ほどから会話のキャッチボールが成立していない。
なんとなく、ボヴィーノファミリー絡みということしか把握できていない。
「ボヴィーノファミリーに対する印象は?」
「印象って言われても……、ボンゴレに遠く及ばない中小マフィアとしか知らないわ」
同盟ファミリーでも敵対関係でもなければ、他のファミリーについて知る機会は少ない。
そこまで言って、脳内にある存在が思い浮かんだ。
「ボヴィーノファミリーといえば、個人的に気になっていることがあるわね」
「気になっていること?」
「十年バズーカよ」
十年バズーカ。
それに被弾した者は、十年後の自分と五分間入れ替わることができると言われている、ボヴィーノファミリー秘伝の武器。
そう説明すると、リボーンは納得したように頷いた。
そして、少しの間考え込む素振りを見せた後、重々しくため息を吐いたのだった。
「なら、予め知ってたわけじゃねーんだな」
「は?」
「これだ」
そう言って、テーブルの上に一通の封筒を置いた。
手に取って観察するが、封筒には何も書かれていない。
先にリボーンが読んだのか、開封した跡が残っている。
「お前宛てだ。ボヴィーノファミリーのボスからだぞ」
「ボヴィーノの?」
リボーンがランボを吹き飛ばした時、この手紙がランボの懐から落ちたのだそうだ。
「どうやら、ボヴィーノのボスにその手紙をお前に渡すよう頼まれていたが、すっかり忘れてたみてーだな」
「……なるほど」
届け物をあの五歳児に託すのは、人選ミスではないだろうか。
結果的にこうして手元に届いたとはいえ、ずっとランボの懐に仕舞われる可能性の方が高かっただろう。
ともかく、封筒から便箋を取り出し、文面に目を通す。
手紙の中身は、簡単に要約すると以下の通りだ。
過去にボヴィーノファミリーと敵対関係にあったファミリーを私が壊滅させたことで恩義を感じ、私が十年バズーカに興味があるという話を耳にしたので、お近づきの印にランボに授けたのだそうだ。
さすがに秘伝の武器なので譲渡はできないものの、好きに触っていいとのことだ。
ちなみに、ランボには秘めた資質があり、今回私達の元に送ったのは彼の成長を促すためで、要するに修行の一環らしい。
「修行? 彼、リボーンを倒すって言ってなかった?」
「どうもあのガキがボスの命令を受け取り違えたようだな」
ならば、遠回しの破門宣言ではなかったのか。
それに手紙を読む限り、ランボはボヴィーノに大切にされていることが窺える。
ボヴィーノのボスの言う『素質』についての詳細な記載はないが、文面からランボを長期滞在させるつもりのようだし、そのうち明らかになるだろう。
「そこに書いてある壊滅させたファミリーの名前、記憶にあるか?」
「正確に覚えてないけど、きっとボンゴレに入ったばかりの頃じゃないかしら。今度確認してみるわ」
「……いや、いい」
リボーンが渋い顔をして、首を振った。
既に裏を取っていたのだろうか。
ボンゴレに加入したての頃は今より実戦投入されることが多かったので、『壊滅させたファミリー』の正確な数すら覚えていない。
しかしどの任務も身内に散々な評価を下されたので、『恩義を感じた』と言われたのは初めてだ。
ともかく、これでようやくリボーンの質問の意味を理解できた。
彼は、私がボヴィーノから刺客が来ることを予め聞いていたのではないかと疑っていたのだ。
けれど、その疑いはこれで払拭されたはずだ。
ボヴィーノのボスとは会ったことがないし、手紙を貰ったのも初めてなのだから。
しかし、リボーンは更に難しい顔で手紙を睨みつけた。
「それだけじゃねー。一番の問題は、どうしてお前が十年バズーカに興味があることを、ボヴィーノのボスが知ってんだってことだ」
「さあ……、言いふらしたつもりはないけどね。何処かで漏れたんじゃない?」
「何処で漏れるんだ。お前の情報だぞ?」
語気が強められた発言。
そこには、『復讐者 に管理されているお前の情報を誰が漏らすんだ』という意図が込められている。
「『私の情報を流すと復讐者 に消される』っていう掟のことよね。けれど、実際に消された人がいるなんて聞いたことないわよ。私の情報なんて、噂話を含めばそこら中でされているのにね」
実際にどの程度の情報までなら流しても問題ないか、その境界線は誰も知らない。
もしも『宮野アゲハが十年バズーカに興味を持っている』という情報が掟に抵触するなら、リボーンもボヴィーノのボスもとっくに消されているはずだ。
現時点で何も起きていないのは、それが取るに足りない情報であることの証左だ。
「そんなどうでもいい情報、何処かの情報屋にでも聞いたんじゃない?」
「気にならねーのか? 誰に聞いたのか」
「ならないわ。それよりも十年バズーカの方が魅力的ね」
手紙の存在すら忘れている五歳児相手に、どうやって伝説の武器を見せてもらうか――そちらの方がよほど重要な問題に思えた。
報告書が完成したので、先ほどまで煩くしていた隣の部屋の様子を見に行くことにした。
綱吉の部屋を覗くと、リボーンが優雅にエスプレッソを飲んでいる。
私の存在に気づくと、傍に来て座るように促されたので、部屋に入って綱吉のベッドに腰を下ろした。
ちなみにこの部屋の主は、リボーンに反撃されたことで号泣したランボを連れて外出している。
最近の綱吉は、私が勝手に部屋に入ることにもベッドに座ることにも無反応になってきた。
面倒がなくなった反面少しつまらない――と思いきや、リボーンが私を見て不機嫌そうに眉を寄せたのだった。
「……何?」
「………………いや、何でもねえ」
「何なのよその沈黙」
なかなか見られない間の長さだった。
しかし、リボーンは暫く何も喋らなかった。
ようやく口を開いたと思ったら、二、三質問がある、と神妙な顔つきで言った。
「さっきランボと接触した時、なんで始末せずに逃がしたんだ?」
「逃がした、というより放っといたのよ。標的はツナじゃないんだもの。ツナの命に関わることじゃなきゃ放置するんでしょう?」
――ツナの命に直接関わる原因は消しとけ。それ以外は放置しろ。
それが、護衛をするにあたり、リボーンと決めた“約束”だったはずだ。
同意を求めたのにそれには答えず、次いくぞ、と淡々と進められた。
「あいつがボヴィーノファミリーだって話は何処で訊いた?」
「ランボを捕まえた時よ。本人がそう言ったの」
「これまでにボヴィーノファミリーもしくはそのボスと接点は?」
「ないわ」
「本当にか?」
「ええ、記憶する限りでは――本当に何なのよ」
「そうか。なら最後の質問だ」
「……答えたらちゃんと説明してよ」
先ほどから会話のキャッチボールが成立していない。
なんとなく、ボヴィーノファミリー絡みということしか把握できていない。
「ボヴィーノファミリーに対する印象は?」
「印象って言われても……、ボンゴレに遠く及ばない中小マフィアとしか知らないわ」
同盟ファミリーでも敵対関係でもなければ、他のファミリーについて知る機会は少ない。
そこまで言って、脳内にある存在が思い浮かんだ。
「ボヴィーノファミリーといえば、個人的に気になっていることがあるわね」
「気になっていること?」
「十年バズーカよ」
十年バズーカ。
それに被弾した者は、十年後の自分と五分間入れ替わることができると言われている、ボヴィーノファミリー秘伝の武器。
そう説明すると、リボーンは納得したように頷いた。
そして、少しの間考え込む素振りを見せた後、重々しくため息を吐いたのだった。
「なら、予め知ってたわけじゃねーんだな」
「は?」
「これだ」
そう言って、テーブルの上に一通の封筒を置いた。
手に取って観察するが、封筒には何も書かれていない。
先にリボーンが読んだのか、開封した跡が残っている。
「お前宛てだ。ボヴィーノファミリーのボスからだぞ」
「ボヴィーノの?」
リボーンがランボを吹き飛ばした時、この手紙がランボの懐から落ちたのだそうだ。
「どうやら、ボヴィーノのボスにその手紙をお前に渡すよう頼まれていたが、すっかり忘れてたみてーだな」
「……なるほど」
届け物をあの五歳児に託すのは、人選ミスではないだろうか。
結果的にこうして手元に届いたとはいえ、ずっとランボの懐に仕舞われる可能性の方が高かっただろう。
ともかく、封筒から便箋を取り出し、文面に目を通す。
手紙の中身は、簡単に要約すると以下の通りだ。
過去にボヴィーノファミリーと敵対関係にあったファミリーを私が壊滅させたことで恩義を感じ、私が十年バズーカに興味があるという話を耳にしたので、お近づきの印にランボに授けたのだそうだ。
さすがに秘伝の武器なので譲渡はできないものの、好きに触っていいとのことだ。
ちなみに、ランボには秘めた資質があり、今回私達の元に送ったのは彼の成長を促すためで、要するに修行の一環らしい。
「修行? 彼、リボーンを倒すって言ってなかった?」
「どうもあのガキがボスの命令を受け取り違えたようだな」
ならば、遠回しの破門宣言ではなかったのか。
それに手紙を読む限り、ランボはボヴィーノに大切にされていることが窺える。
ボヴィーノのボスの言う『素質』についての詳細な記載はないが、文面からランボを長期滞在させるつもりのようだし、そのうち明らかになるだろう。
「そこに書いてある壊滅させたファミリーの名前、記憶にあるか?」
「正確に覚えてないけど、きっとボンゴレに入ったばかりの頃じゃないかしら。今度確認してみるわ」
「……いや、いい」
リボーンが渋い顔をして、首を振った。
既に裏を取っていたのだろうか。
ボンゴレに加入したての頃は今より実戦投入されることが多かったので、『壊滅させたファミリー』の正確な数すら覚えていない。
しかしどの任務も身内に散々な評価を下されたので、『恩義を感じた』と言われたのは初めてだ。
ともかく、これでようやくリボーンの質問の意味を理解できた。
彼は、私がボヴィーノから刺客が来ることを予め聞いていたのではないかと疑っていたのだ。
けれど、その疑いはこれで払拭されたはずだ。
ボヴィーノのボスとは会ったことがないし、手紙を貰ったのも初めてなのだから。
しかし、リボーンは更に難しい顔で手紙を睨みつけた。
「それだけじゃねー。一番の問題は、どうしてお前が十年バズーカに興味があることを、ボヴィーノのボスが知ってんだってことだ」
「さあ……、言いふらしたつもりはないけどね。何処かで漏れたんじゃない?」
「何処で漏れるんだ。お前の情報だぞ?」
語気が強められた発言。
そこには、『
「『私の情報を流すと
実際にどの程度の情報までなら流しても問題ないか、その境界線は誰も知らない。
もしも『宮野アゲハが十年バズーカに興味を持っている』という情報が掟に抵触するなら、リボーンもボヴィーノのボスもとっくに消されているはずだ。
現時点で何も起きていないのは、それが取るに足りない情報であることの証左だ。
「そんなどうでもいい情報、何処かの情報屋にでも聞いたんじゃない?」
「気にならねーのか? 誰に聞いたのか」
「ならないわ。それよりも十年バズーカの方が魅力的ね」
手紙の存在すら忘れている五歳児相手に、どうやって伝説の武器を見せてもらうか――そちらの方がよほど重要な問題に思えた。