標的7 両極端な見解の一致
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《視点:×××× 場所:トーロファミリーアジト正門前》
これは、宮野アゲハが沢田綱吉の護衛として来日する数年前の出来事である。
当時、彼女はボンゴレファミリーに加入してまもなく、世界的にはまだ無名の少女だった。
“世界最強”ですらなかった頃だが、その能力は既にそう呼ばれるのに遜色なかった。
宮野アゲハは兵器として、人類を支配あるいは全滅させるだけの実力を備えていたが、そのことを世界どころかファミリーですら認識していなかった頃だ。
一部の人間は彼女の異常性にすぐに気づいたが、問題視はしても危険視する者は誰もいなかったのだ。
何処かで『いくら異常でも相手は幼い少女だ』という慢心があったのだろう。
これまでに彼女が真価を発揮する機会がほとんどなかったというのも理由の一つかもしれない。
誰も実力を目にすることがなかったため、誰も才能に気づかなかった。
――ただ一人、ボンゴレ九代目を除いては。
アゲハをファミリーにスカウトした張本人の彼だけは、彼女の危険性を認識していた。
宮野アゲハは世界を破滅させることのできる化物であることを知っていた。
そして、彼女を放置しておくことがどれほど危険な行為であるかを理解し、世界にどれほど影響を及ぼすことになるかを危惧していた。
しかし、そんな彼ですら、宮野アゲハの真の限界値までは把握していなかったのだ。
だからこそ、アゲハを制御するためには、そして何より彼女を家族として受け入れるためには、彼女の本質を理解しなければならないと九代目は考えた。
その手段として用いたのが、今回アゲハが与えられた任務――トーロファミリーの殲滅だった。
トーロファミリー。
数年の間で急速に勢力を拡大している新興マフィアだが、一方で勢力拡大のためなら手段を選ばないマフィアとして悪名高い。
さらに、最近ボンゴレの領域内で勝手に悪質な商売を始めたため、とうとう制裁を加えることになったのだ。
そのアジト――ボンゴレ本部より幾分か小規模だが重厚感溢れる屋敷の前に、宮野アゲハはいた。
圧倒的な存在感を放ちながら、彼女は悠然と佇んでいた。
黒い長髪を風になびかせ、碧眼が門の向こうに見える屋敷を睨みつける。
顔立ちはまだ幼さが残っているが、黒いスーツ姿の所為か何処か大人びた雰囲気を醸し出している。
彼女の周囲に人影はなく、風の音以外の雑音は全く聞こえない。
しかし、少し離れた森林では数人のボンゴレの精鋭が息を殺して潜んでいた。
彼女を観察するため、監視するため、そしてもし彼女が任務に失敗した場合、迅速に事態を処理するためである。
今回そのことは直接アゲハには知らせていなかったが、彼女はボンゴレ本部を出発した時から自分を取り巻く人間の存在に気づいていた。
数百メートル離れた、完璧に消された精鋭の気配を感知していた。
とはいえ、それらが敵のものでないということも察知したので、現在まで放置している。
観察されようが監視されようが全く気に留めず、屋敷の検分を続ける。
一見何の変哲もない敵のアジト。
いや――あまりに静かすぎるアジトを観察し続ける。
アゲハがそうして立ち尽くして数分経った頃だった。
ふう、と憂いを帯びたため息が彼女の口から漏れた。
静寂に包まれた屋敷の内部では、想定以上に侵入者を迎撃する体制が整えられていたのだ。
どうやら今日ボンゴレが奇襲を仕掛けるという情報が敵に漏れていたようだ。
アゲハはこの距離から、配置された敵や内部に仕込まれた罠を正確に捉えたのだった。
常識をはるかに逸脱した索敵能力。
これも、ボンゴレはまだ把握していなかった。
事前に彼女がボンゴレから与えられた情報によると、屋敷の内部構造は入り組んでいるので、正攻法で攻略するには相当の時間を要するだろう。
アゲハはそう見極めると、瞬時に正攻法を諦めた。
この任務は、彼女の今後を決定づける重要な任務だ。
ただ成功させるだけではなく、迅速に、そして確実にこなす必要があるとアゲハは理解していた。
なので、迅速に確実に敵を殲滅するために、容赦なく自分の能力を使用することにしたのだった。
自分の才能を生かすことにしたのだった。
豪華な装飾の施された荘厳な門の前で、宮野アゲハは跳躍した。
二メートルを超える門を軽々飛び越えながら、眼前の障害物を真っ直ぐ見据える。
「――“疾風迅雷”」
そして、彼女がそう呟いた瞬間。
屋敷は跡形もなく消し飛んだ。
これは、宮野アゲハが沢田綱吉の護衛として来日する数年前の出来事である。
当時、彼女はボンゴレファミリーに加入してまもなく、世界的にはまだ無名の少女だった。
“世界最強”ですらなかった頃だが、その能力は既にそう呼ばれるのに遜色なかった。
宮野アゲハは兵器として、人類を支配あるいは全滅させるだけの実力を備えていたが、そのことを世界どころかファミリーですら認識していなかった頃だ。
一部の人間は彼女の異常性にすぐに気づいたが、問題視はしても危険視する者は誰もいなかったのだ。
何処かで『いくら異常でも相手は幼い少女だ』という慢心があったのだろう。
これまでに彼女が真価を発揮する機会がほとんどなかったというのも理由の一つかもしれない。
誰も実力を目にすることがなかったため、誰も才能に気づかなかった。
――ただ一人、ボンゴレ九代目を除いては。
アゲハをファミリーにスカウトした張本人の彼だけは、彼女の危険性を認識していた。
宮野アゲハは世界を破滅させることのできる化物であることを知っていた。
そして、彼女を放置しておくことがどれほど危険な行為であるかを理解し、世界にどれほど影響を及ぼすことになるかを危惧していた。
しかし、そんな彼ですら、宮野アゲハの真の限界値までは把握していなかったのだ。
だからこそ、アゲハを制御するためには、そして何より彼女を家族として受け入れるためには、彼女の本質を理解しなければならないと九代目は考えた。
その手段として用いたのが、今回アゲハが与えられた任務――トーロファミリーの殲滅だった。
トーロファミリー。
数年の間で急速に勢力を拡大している新興マフィアだが、一方で勢力拡大のためなら手段を選ばないマフィアとして悪名高い。
さらに、最近ボンゴレの領域内で勝手に悪質な商売を始めたため、とうとう制裁を加えることになったのだ。
そのアジト――ボンゴレ本部より幾分か小規模だが重厚感溢れる屋敷の前に、宮野アゲハはいた。
圧倒的な存在感を放ちながら、彼女は悠然と佇んでいた。
黒い長髪を風になびかせ、碧眼が門の向こうに見える屋敷を睨みつける。
顔立ちはまだ幼さが残っているが、黒いスーツ姿の所為か何処か大人びた雰囲気を醸し出している。
彼女の周囲に人影はなく、風の音以外の雑音は全く聞こえない。
しかし、少し離れた森林では数人のボンゴレの精鋭が息を殺して潜んでいた。
彼女を観察するため、監視するため、そしてもし彼女が任務に失敗した場合、迅速に事態を処理するためである。
今回そのことは直接アゲハには知らせていなかったが、彼女はボンゴレ本部を出発した時から自分を取り巻く人間の存在に気づいていた。
数百メートル離れた、完璧に消された精鋭の気配を感知していた。
とはいえ、それらが敵のものでないということも察知したので、現在まで放置している。
観察されようが監視されようが全く気に留めず、屋敷の検分を続ける。
一見何の変哲もない敵のアジト。
いや――あまりに静かすぎるアジトを観察し続ける。
アゲハがそうして立ち尽くして数分経った頃だった。
ふう、と憂いを帯びたため息が彼女の口から漏れた。
静寂に包まれた屋敷の内部では、想定以上に侵入者を迎撃する体制が整えられていたのだ。
どうやら今日ボンゴレが奇襲を仕掛けるという情報が敵に漏れていたようだ。
アゲハはこの距離から、配置された敵や内部に仕込まれた罠を正確に捉えたのだった。
常識をはるかに逸脱した索敵能力。
これも、ボンゴレはまだ把握していなかった。
事前に彼女がボンゴレから与えられた情報によると、屋敷の内部構造は入り組んでいるので、正攻法で攻略するには相当の時間を要するだろう。
アゲハはそう見極めると、瞬時に正攻法を諦めた。
この任務は、彼女の今後を決定づける重要な任務だ。
ただ成功させるだけではなく、迅速に、そして確実にこなす必要があるとアゲハは理解していた。
なので、迅速に確実に敵を殲滅するために、容赦なく自分の能力を使用することにしたのだった。
自分の才能を生かすことにしたのだった。
豪華な装飾の施された荘厳な門の前で、宮野アゲハは跳躍した。
二メートルを超える門を軽々飛び越えながら、眼前の障害物を真っ直ぐ見据える。
「――“疾風迅雷”」
そして、彼女がそう呟いた瞬間。
屋敷は跡形もなく消し飛んだ。