標的6 誰も知らない舞台裏
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《視点:宮野アゲハ 場所:沢田家綱吉の自室》
綱吉のベッドの上で寛いでいる時、ふと鼻歌が聞こえてきた。
声の主に視線を向けると、武器の手入れをしているリボーンの隣で嬉しそうな顔でゲームをしている。
「……ツナ、随分楽しそうね」
「え? ああ、まあね」
綱吉は首肯しつつもこちらを見て何か言いたそうにしたが、結局口を閉ざした。
私が彼のベッドで好き勝手することに対して意見することを諦めたようだ。
リボーンは銃を磨く手を止めて綱吉に尋ねる。
「いいことでもあったのか?」
「分かるか? 今日クラスの人気者から相談受けちゃってさー」
その言葉に、雑誌をめくりながら思考を巡らす。
『クラスの人気者』とは山本武のことだろうか。
体育の授業後に、綱吉と山本が親しげに話していた様子を思い出した。
けれど、何故山本に相談されたことが嬉しいのだろう。
「その山本だけどな」
「なんで知ってんだよ!!?」
「やっぱり山本武なのね」
「アゲハまで知ってんの!?」
「私はクラスメイトでしょ」
冷静に突っ込むと、綱吉は虚を突かれて黙り込んだ。
どうやら相当リボーンに毒されているようだ。
リボーンはそんな綱吉の様子など意に返さず口を開く。
私は、リボーンの次の台詞が容易に想像できた。
「お前の部下にしろ」
「なっ」
綱吉の顔色が一変した。
クラスメイトをマフィアにするという提案に、綱吉は声を荒げて必死に反論した。
「山本は野球に燃えてるんだぞ。オレはそんな山本を友達として手助けしたいの!!」
山本武は、野球に青春を捧げている。
血縁で選ばれた綱吉や裏社会で生まれた獄寺とは、精神的な意味で一線を画している。
私が彼をファミリーに加えることを躊躇う理由はそれかもしれない。
もとから平和な世界で生きる人間が、好き好んで裏社会で生きようと思うだろうか。
安穏な将来が用意されているのに、わざわざ修羅を選ぶだろうか。
けれどリボーンは、あくまでも山本を綱吉のファミリー候補として認識しているようだ。
昼間、リボーンに『山本がマフィアになる可能性が見えるか』と尋ねた時、彼は迷いなく肯定したのだった。
ただ、その後でこうも言っていた。
――山本に可能性があるかどうかは、お前の方がよく知ってるだろ。
――むしろ、オレよりお前の方がアイツに期待してるんじゃねーのか?
しかも、私の質問が意外だったかのように、少し驚いた口調だった。
正直、意味がまったく分からない。
当時を思い返しながら何気なく顔を上げると、リボーンが火炎放射器を綱吉に向けているのが目に入った。
一瞬、思考回路が停止した。
綱吉が悲鳴を上げて炎から逃れようとする様を眺めながら、鈍い頭を働かせる。
――これは、私が排除するべき『綱吉の命に直接関わる原因』だろうか?
……いや、リボーンの行為なのでセーフか。
「燃えるの意味がちげーよ」
「オレの台詞を言うな!!」
そんな一度のボケのためにこんな大掛かりなものを用意したのか。
付き合いが長いのに、リボーンのキャラがたまに本気で掴めない時がある。
なんだか馬鹿馬鹿しくなって、騒いでいる彼らを横目に、雑誌をベッドの上に放り投げた。
そんな風にひと時を過ごす私達は、明日大きな問題が起こることをまだ知らない。
きっと、誰も知らない。
綱吉のベッドの上で寛いでいる時、ふと鼻歌が聞こえてきた。
声の主に視線を向けると、武器の手入れをしているリボーンの隣で嬉しそうな顔でゲームをしている。
「……ツナ、随分楽しそうね」
「え? ああ、まあね」
綱吉は首肯しつつもこちらを見て何か言いたそうにしたが、結局口を閉ざした。
私が彼のベッドで好き勝手することに対して意見することを諦めたようだ。
リボーンは銃を磨く手を止めて綱吉に尋ねる。
「いいことでもあったのか?」
「分かるか? 今日クラスの人気者から相談受けちゃってさー」
その言葉に、雑誌をめくりながら思考を巡らす。
『クラスの人気者』とは山本武のことだろうか。
体育の授業後に、綱吉と山本が親しげに話していた様子を思い出した。
けれど、何故山本に相談されたことが嬉しいのだろう。
「その山本だけどな」
「なんで知ってんだよ!!?」
「やっぱり山本武なのね」
「アゲハまで知ってんの!?」
「私はクラスメイトでしょ」
冷静に突っ込むと、綱吉は虚を突かれて黙り込んだ。
どうやら相当リボーンに毒されているようだ。
リボーンはそんな綱吉の様子など意に返さず口を開く。
私は、リボーンの次の台詞が容易に想像できた。
「お前の部下にしろ」
「なっ」
綱吉の顔色が一変した。
クラスメイトをマフィアにするという提案に、綱吉は声を荒げて必死に反論した。
「山本は野球に燃えてるんだぞ。オレはそんな山本を友達として手助けしたいの!!」
山本武は、野球に青春を捧げている。
血縁で選ばれた綱吉や裏社会で生まれた獄寺とは、精神的な意味で一線を画している。
私が彼をファミリーに加えることを躊躇う理由はそれかもしれない。
もとから平和な世界で生きる人間が、好き好んで裏社会で生きようと思うだろうか。
安穏な将来が用意されているのに、わざわざ修羅を選ぶだろうか。
けれどリボーンは、あくまでも山本を綱吉のファミリー候補として認識しているようだ。
昼間、リボーンに『山本がマフィアになる可能性が見えるか』と尋ねた時、彼は迷いなく肯定したのだった。
ただ、その後でこうも言っていた。
――山本に可能性があるかどうかは、お前の方がよく知ってるだろ。
――むしろ、オレよりお前の方がアイツに期待してるんじゃねーのか?
しかも、私の質問が意外だったかのように、少し驚いた口調だった。
正直、意味がまったく分からない。
当時を思い返しながら何気なく顔を上げると、リボーンが火炎放射器を綱吉に向けているのが目に入った。
一瞬、思考回路が停止した。
綱吉が悲鳴を上げて炎から逃れようとする様を眺めながら、鈍い頭を働かせる。
――これは、私が排除するべき『綱吉の命に直接関わる原因』だろうか?
……いや、リボーンの行為なのでセーフか。
「燃えるの意味がちげーよ」
「オレの台詞を言うな!!」
そんな一度のボケのためにこんな大掛かりなものを用意したのか。
付き合いが長いのに、リボーンのキャラがたまに本気で掴めない時がある。
なんだか馬鹿馬鹿しくなって、騒いでいる彼らを横目に、雑誌をベッドの上に放り投げた。
そんな風にひと時を過ごす私達は、明日大きな問題が起こることをまだ知らない。
きっと、誰も知らない。
