標的5 弱者と強者の事情
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《視点:宮野アゲハ 場所:並盛中学校校長室前廊下》
静かな廊下に、校長室からの怒鳴り声が響き渡った。
「貴様ら退学だーっ」
突然だが、綱吉と獄寺が退学の危機のようだ。
授業中に獄寺が教師に暴力を振るった件で、何故か綱吉まで校長室に呼び出されたので興味本位でついて来たのだが、事態は思ったより深刻そうだ。
暴力を振るわれたその理科教師は相当頭に血が上っているのか、覚えたてかと突っ込みたいほど退学という言葉を連呼している。
これは長引きそうだとそのまま成り行きを観察していると、話題は十五年前グラウンドに埋めたというタイムカプセルに移った。
「今日中に十五年前のタイムカプセルを掘り出せば、今回の件は水に流してやる……。だができなければ即退学だ!!!」
校長室から聞こえた理科教師、根津の提案に眉を顰める。
突然タイムカプセルの話を持ち出した不自然な提案、そして妙に余裕ぶった態度が引っ掛かる。
タイムカプセルが絶対に見つからないような細工でもしてあるのだろうか。
タイムカプセルはグラウンド以外の場所に埋まっているか、そもそも存在すらしないか――ともかく、『水に流してやる』つもりがないことは確かだろう。
綱吉達が校長室から出て来たのは、そのすぐ後だった。
獄寺が不満そうに校長室を睨みつけているのに対し、綱吉は意気消沈している。
「面白いくらい正反対の反応をするわね」
「アゲハ」
私の声にそう反応したのは獄寺だ。
「随分不公平な条件をつけられたわね」
「全くだ。ふざけやがって、あいつ……」
ぶつぶつと獄寺が文句を言う間も、綱吉は呆然として一言も話さない。
そしてしまいには、覚束ない足取りで何処かへ歩き出した。
「十代目? どうしたんですか?」
獄寺が気が付いて声を掛けるが、反応せずそのまま廊下を歩いていく。
「……獄寺。さっきリボーンが呼んでたわよ」
「え、リボーンさんが?」
「殺しのイロハでも教えてくれるんじゃない? ツナは私が見ておくから行っていいわよ」
獄寺は暫く渋っていたが、さすがにリボーンの誘いは無視できないようで、最終的に分かった、と頷いた。
獄寺にリボーンの居場所を教え、急いで綱吉の後を追う。
急いでとは言っても、ふらふらと蛇行して進む綱吉に追いつくのはあまりに容易だった。
横に並んでも何の反応も見せない綱吉に、思わず声を掛ける。
「大丈夫よ、ツナ」
「アゲハ……?」
驚いて振り向いた綱吉に、私はこう言った。
「たとえ退学になっても、ツナにはマフィアという就職先が決まっているのだから。将来は安泰よ」
「そういう問題じゃないし、それにマフィアになったらお先真っ暗だよ!!」
このご時世で既に就職口を確保しているというのはかなり魅力的だと思うのだが、綱吉は何が気に入らなかったのか更に落ち込んでしまった。
どうやら相当退学したくないようだ。
どうしたものかと周囲を見渡し、ふと目に映ったものに足を止める。
――そうか、この手があったか。
幸いにも、この学校には校長以上の権力者がいるじゃないか。
彼を使えば、退学などどうとでもできるはずだ。
タイムカプセルを見つけるよりも手っ取り早くて確実なのは間違いない――が、リスクは相応に高くなる。
視線を戻し、遠ざかる背中に最後の確認を取った。
「そんなに退学が嫌なの?」
「当たり前だよ。京子ちゃんに会えなくなるんだから」
振り向かずに即答され、思わず閉口した。
どうやら、学校がなくても自分から会いに行こうとする積極性はないようだ。
理由は不純だが、ともかくこれで私の行動が決定した。
覚悟を決め、『応接室』と書かれたプレートを見上げた。
静かな廊下に、校長室からの怒鳴り声が響き渡った。
「貴様ら退学だーっ」
突然だが、綱吉と獄寺が退学の危機のようだ。
授業中に獄寺が教師に暴力を振るった件で、何故か綱吉まで校長室に呼び出されたので興味本位でついて来たのだが、事態は思ったより深刻そうだ。
暴力を振るわれたその理科教師は相当頭に血が上っているのか、覚えたてかと突っ込みたいほど退学という言葉を連呼している。
これは長引きそうだとそのまま成り行きを観察していると、話題は十五年前グラウンドに埋めたというタイムカプセルに移った。
「今日中に十五年前のタイムカプセルを掘り出せば、今回の件は水に流してやる……。だができなければ即退学だ!!!」
校長室から聞こえた理科教師、根津の提案に眉を顰める。
突然タイムカプセルの話を持ち出した不自然な提案、そして妙に余裕ぶった態度が引っ掛かる。
タイムカプセルが絶対に見つからないような細工でもしてあるのだろうか。
タイムカプセルはグラウンド以外の場所に埋まっているか、そもそも存在すらしないか――ともかく、『水に流してやる』つもりがないことは確かだろう。
綱吉達が校長室から出て来たのは、そのすぐ後だった。
獄寺が不満そうに校長室を睨みつけているのに対し、綱吉は意気消沈している。
「面白いくらい正反対の反応をするわね」
「アゲハ」
私の声にそう反応したのは獄寺だ。
「随分不公平な条件をつけられたわね」
「全くだ。ふざけやがって、あいつ……」
ぶつぶつと獄寺が文句を言う間も、綱吉は呆然として一言も話さない。
そしてしまいには、覚束ない足取りで何処かへ歩き出した。
「十代目? どうしたんですか?」
獄寺が気が付いて声を掛けるが、反応せずそのまま廊下を歩いていく。
「……獄寺。さっきリボーンが呼んでたわよ」
「え、リボーンさんが?」
「殺しのイロハでも教えてくれるんじゃない? ツナは私が見ておくから行っていいわよ」
獄寺は暫く渋っていたが、さすがにリボーンの誘いは無視できないようで、最終的に分かった、と頷いた。
獄寺にリボーンの居場所を教え、急いで綱吉の後を追う。
急いでとは言っても、ふらふらと蛇行して進む綱吉に追いつくのはあまりに容易だった。
横に並んでも何の反応も見せない綱吉に、思わず声を掛ける。
「大丈夫よ、ツナ」
「アゲハ……?」
驚いて振り向いた綱吉に、私はこう言った。
「たとえ退学になっても、ツナにはマフィアという就職先が決まっているのだから。将来は安泰よ」
「そういう問題じゃないし、それにマフィアになったらお先真っ暗だよ!!」
このご時世で既に就職口を確保しているというのはかなり魅力的だと思うのだが、綱吉は何が気に入らなかったのか更に落ち込んでしまった。
どうやら相当退学したくないようだ。
どうしたものかと周囲を見渡し、ふと目に映ったものに足を止める。
――そうか、この手があったか。
幸いにも、この学校には校長以上の権力者がいるじゃないか。
彼を使えば、退学などどうとでもできるはずだ。
タイムカプセルを見つけるよりも手っ取り早くて確実なのは間違いない――が、リスクは相応に高くなる。
視線を戻し、遠ざかる背中に最後の確認を取った。
「そんなに退学が嫌なの?」
「当たり前だよ。京子ちゃんに会えなくなるんだから」
振り向かずに即答され、思わず閉口した。
どうやら、学校がなくても自分から会いに行こうとする積極性はないようだ。
理由は不純だが、ともかくこれで私の行動が決定した。
覚悟を決め、『応接室』と書かれたプレートを見上げた。