標的4 時と場合による既視感
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《視点:宮野アゲハ 場所:同廊下》
京子達を言いくるめて教室を抜け出し、中庭を見渡せる二階の窓から戦闘の一部始終を見物した。
結論から言うと、綱吉が極めて平和裏に勝利した。
死ぬ気状態の綱吉が、獄寺のダイナマイトの火を爆発前にすべて――獄寺がミスをして自分の足元に落とした分もすべて握り消した様を見て、獄寺が自ら降伏したのだ。
彼曰く、身を挺して自分を助けた綱吉に感銘を受けたらしい。
もし消火していなければ近距離にいた綱吉にも危険が及んでいたので、『身を挺した』というより『身を守った』結果だと言える。
しかし、獄寺はそうは捉えなかった。
「御見逸れしました!!! 貴方こそボスにふさわしい!!! 十代目!! 貴方についていきます!! なんなりと申しつけて下さい!!」
先ほどまで殺そうとしていた相手に、土下座しながら尊敬の眼差しを向けている。
負けた奴が勝った奴の下につくのがファミリーの掟。
とは言え、ただ敗北させただけだったら、これほど純粋な忠誠は得られなかっただろう。
その点を鑑みれば、リボーンが珍しく綱吉を褒めるのも理解できる。
私も余計な先入観さえなければ、今すぐここから飛び降りて綱吉に賞賛の言葉を浴びせただろう。
確かに、獄寺は必ず綱吉を認めることになると確信してはいた。
それは直感であり、既視感であり、あるいはただの希望的観測でもあった。
ただしこの光景は、予想していなかった。
ここまで劇的な光景は、見たことがなかった。
眼下の状況を遮るように目を閉じても、聴覚は容赦なく彼らの声を拾う。
「そんなっ、困るって命とか……。ふ……普通にクラスメイトでいいんじゃないかな?」
「そーはいきません!」
嗚呼、綱吉が絶句している様子が目に浮かぶ。
不覚にも浮かんでしまう。
私の知っている“彼ら”のイメージと盛大にズレていて、ありもしない既視感に眩暈がする。
沢田綱吉と獄寺隼人の主従関係は“見慣れている”つもりだった。
けれど、私の知っているものとは、たとえ本質が同じでも、様相が大きく異なっている。
共通点を見つけても、相違点を見つけても、この既視感は時と場合により中身を変えながらつきまとい、消えることはないのだと知った。
(標的4 了)
京子達を言いくるめて教室を抜け出し、中庭を見渡せる二階の窓から戦闘の一部始終を見物した。
結論から言うと、綱吉が極めて平和裏に勝利した。
死ぬ気状態の綱吉が、獄寺のダイナマイトの火を爆発前にすべて――獄寺がミスをして自分の足元に落とした分もすべて握り消した様を見て、獄寺が自ら降伏したのだ。
彼曰く、身を挺して自分を助けた綱吉に感銘を受けたらしい。
もし消火していなければ近距離にいた綱吉にも危険が及んでいたので、『身を挺した』というより『身を守った』結果だと言える。
しかし、獄寺はそうは捉えなかった。
「御見逸れしました!!! 貴方こそボスにふさわしい!!! 十代目!! 貴方についていきます!! なんなりと申しつけて下さい!!」
先ほどまで殺そうとしていた相手に、土下座しながら尊敬の眼差しを向けている。
負けた奴が勝った奴の下につくのがファミリーの掟。
とは言え、ただ敗北させただけだったら、これほど純粋な忠誠は得られなかっただろう。
その点を鑑みれば、リボーンが珍しく綱吉を褒めるのも理解できる。
私も余計な先入観さえなければ、今すぐここから飛び降りて綱吉に賞賛の言葉を浴びせただろう。
確かに、獄寺は必ず綱吉を認めることになると確信してはいた。
それは直感であり、既視感であり、あるいはただの希望的観測でもあった。
ただしこの光景は、予想していなかった。
ここまで劇的な光景は、見たことがなかった。
眼下の状況を遮るように目を閉じても、聴覚は容赦なく彼らの声を拾う。
「そんなっ、困るって命とか……。ふ……普通にクラスメイトでいいんじゃないかな?」
「そーはいきません!」
嗚呼、綱吉が絶句している様子が目に浮かぶ。
不覚にも浮かんでしまう。
私の知っている“彼ら”のイメージと盛大にズレていて、ありもしない既視感に眩暈がする。
沢田綱吉と獄寺隼人の主従関係は“見慣れている”つもりだった。
けれど、私の知っているものとは、たとえ本質が同じでも、様相が大きく異なっている。
共通点を見つけても、相違点を見つけても、この既視感は時と場合により中身を変えながらつきまとい、消えることはないのだと知った。
(標的4 了)