標的4 時と場合による既視感
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《視点:宮野アゲハ 場所:同教室》
休憩時間になると、綱吉はふて腐れたように教室を出て行った。
まあ、あれほど露骨に喧嘩を売られれば、教室に居づらくなる気持ちも分からなくはない。
対する私はというと、教室に残って京子や花との会話を楽しんでいる。
何も護衛だからと言って、四六時中綱吉の傍に張り付いていなければならない理由はない。
そもそも対象が同じ建物内にいる限りは、何処にいても怪我一つ負わせない自信がある(対象のドジによる怪我は管轄外だが)。
それに、今日は獄寺との“対戦”の日だ。
多少の隙を作っておかなくては、獄寺も喧嘩を売りにくいだろうという私なりの配慮である。
決して女子トークに花を咲かせて任務を疎かにしているわけではない。
ちなみに、同世代の女子と和やかに会話するのは、球技大会の時が人生初だった。
「にしても、この短期間で転入生が二人なんてね」
「うん。なかなかないよね」
花と京子は揃って物珍しげな視線を寄越す。
一般的な中学校の転入生の頻度はよく知らないが、やはり裏事情でもない限り珍しいようだ。
「確か、アンタも獄寺もイタリア出身だったよね。もしかして獄寺とは前から知り合いだったの?」
「まさか」
「そうだよ、花。そんな偶然普通ないよ」
実際は偶然でも普通でもなく、花の想像通りである。
しかし、花は本気で訊いたわけではないようで、京子の言葉にそれもそうね、とあっさり否定した。
綱吉が『私と獄寺が知り合いのはずがない』と心中で決めつけた時は、洞察力と思考力が足りないと感じたが、この場合現実では常識の方が勝るようだ。
すべての常識を完全に捨てて物事を推理する奴など、世界に二人といないだろう。
もしいたとしても、そんな奴がたまたまクラスメイトになるようなご都合主義は、イタリア出身の転入生が偶然同時期に二人現れるより低確率だ。
「それにしてもすごい人気だよね、獄寺君。もうファンクラブが出来てるんだって」
「女子はほんと早いねそういうの。まあ、宮野さんのファンクラブも転入してすぐ作られたらしいけど」
女子達が獄寺の話題で盛り上がっている教室内を見渡していると、何気ない二人の会話(特に花の発言)に思考が止まった。
ファンクラブ?
「ファンクラブって、私の?」
「そうよ。知らなかったの?」
知るはずあるか。
さも当然のように告げられたが、マフィアの裏ボスたる私にファンクラブができるなど、リボーンですら予想しなかったに違いない。
しかし追い打ちをかけるように、京子が「もう相当数の生徒が加入してるらしいよ」と話した。
思わず彼女を凝視すると、「わ、私は入ってないよ!」と何故か焦ったように弁解された。
「ファンクラブって……私はアイドルか何かなの?」
「似たようなもんじゃない。ていうか、本当に気づいてなかったのね。球技大会の時だってあんなに注目されてたのに」
「注目されるようなことは何もしてないわよ」
「アンタの存在が目立つのよ」
花に呆れたような視線を向けられるが、そもそも対象 に関係ない話題など興味も関心も皆無なのだ――とは、さすがに声には出さないが。
すると、京子が思い出したように声を上げた。
「それに、アゲハちゃんが通ると皆道を開けるもんね」
「それは普通のことじゃないの?」
イタリアでもそうだったので、今まで万国共通の礼法の類だと捉えていた。
しかし、二人の反応を見ると、どうやら異常な現象だったらしい。
「まあ、アンタ顔整ってるしオーラあるし、見ちゃうのも避けちゃうのも分かるけどね。芸能人が町歩いてるようなもんだもん」
「そういうものかしらね。じゃあ獄寺も私のような扱いを受けることになるのかしら」
「いや、あれはただ単にカッコいいからモテるんでしょ。私は年上以外興味ないけど」
ならば、獄寺の孤独は、私と違い性質によるものではなく、今後の努力次第でどうとでも改善できる余地があるということだ。
「そうだ。宮野さんはどういう人がタイプなの?」
「えっ!」
何故か唐突に、花からそんな話題を振られた。
私にとっては本日二度目の質問である。
ちなみに、驚いたように声を上げたのは京子だ。
「その話題って流行ってるの?」
「流行ってるっていうか……まあ定番ね。気になるじゃない。宮野さんの好みって想像できないもの。もしかして誰かに訊かれた? たとえば、沢田とか」
ピンポイントで出てきた名前に疑問を覚えたが、よく考えれば転入してからまともに話したのは彼女達を除けば綱吉だけだった。
獄寺と会話したことなど花が知るはずもない。
「ええ、そうよ。でも納得したわ。万人共通で興味のある事項なのね」
「そうだね。気になる相手だと特にね」
成程、自分の命を預ける部下のことは当然気になるだろう。
納得していると、近くで一発の銃声がしたのを感じた。
場所はすぐ傍の中庭だが、あの辺りは先ほど幻術を展開したので、普通の人間には何も聞こえない。
あの銃声は、リボーンの拳銃によるものだ。
こちらで女子トークに興じている間に、とうとう綱吉と獄寺が戦闘を開始したようだ。
私の口から『好きなタイプ』が語られるのを今か今かと待ちかねている二人には悪いが、彼らの戦闘はこの目で直接確認したい。
戦いの勝敗以上に、獄寺隼人が綱吉をどう評価するか、それが気になるのだ。
休憩時間になると、綱吉はふて腐れたように教室を出て行った。
まあ、あれほど露骨に喧嘩を売られれば、教室に居づらくなる気持ちも分からなくはない。
対する私はというと、教室に残って京子や花との会話を楽しんでいる。
何も護衛だからと言って、四六時中綱吉の傍に張り付いていなければならない理由はない。
そもそも対象が同じ建物内にいる限りは、何処にいても怪我一つ負わせない自信がある(対象のドジによる怪我は管轄外だが)。
それに、今日は獄寺との“対戦”の日だ。
多少の隙を作っておかなくては、獄寺も喧嘩を売りにくいだろうという私なりの配慮である。
決して女子トークに花を咲かせて任務を疎かにしているわけではない。
ちなみに、同世代の女子と和やかに会話するのは、球技大会の時が人生初だった。
「にしても、この短期間で転入生が二人なんてね」
「うん。なかなかないよね」
花と京子は揃って物珍しげな視線を寄越す。
一般的な中学校の転入生の頻度はよく知らないが、やはり裏事情でもない限り珍しいようだ。
「確か、アンタも獄寺もイタリア出身だったよね。もしかして獄寺とは前から知り合いだったの?」
「まさか」
「そうだよ、花。そんな偶然普通ないよ」
実際は偶然でも普通でもなく、花の想像通りである。
しかし、花は本気で訊いたわけではないようで、京子の言葉にそれもそうね、とあっさり否定した。
綱吉が『私と獄寺が知り合いのはずがない』と心中で決めつけた時は、洞察力と思考力が足りないと感じたが、この場合現実では常識の方が勝るようだ。
すべての常識を完全に捨てて物事を推理する奴など、世界に二人といないだろう。
もしいたとしても、そんな奴がたまたまクラスメイトになるようなご都合主義は、イタリア出身の転入生が偶然同時期に二人現れるより低確率だ。
「それにしてもすごい人気だよね、獄寺君。もうファンクラブが出来てるんだって」
「女子はほんと早いねそういうの。まあ、宮野さんのファンクラブも転入してすぐ作られたらしいけど」
女子達が獄寺の話題で盛り上がっている教室内を見渡していると、何気ない二人の会話(特に花の発言)に思考が止まった。
ファンクラブ?
「ファンクラブって、私の?」
「そうよ。知らなかったの?」
知るはずあるか。
さも当然のように告げられたが、マフィアの裏ボスたる私にファンクラブができるなど、リボーンですら予想しなかったに違いない。
しかし追い打ちをかけるように、京子が「もう相当数の生徒が加入してるらしいよ」と話した。
思わず彼女を凝視すると、「わ、私は入ってないよ!」と何故か焦ったように弁解された。
「ファンクラブって……私はアイドルか何かなの?」
「似たようなもんじゃない。ていうか、本当に気づいてなかったのね。球技大会の時だってあんなに注目されてたのに」
「注目されるようなことは何もしてないわよ」
「アンタの存在が目立つのよ」
花に呆れたような視線を向けられるが、そもそも
すると、京子が思い出したように声を上げた。
「それに、アゲハちゃんが通ると皆道を開けるもんね」
「それは普通のことじゃないの?」
イタリアでもそうだったので、今まで万国共通の礼法の類だと捉えていた。
しかし、二人の反応を見ると、どうやら異常な現象だったらしい。
「まあ、アンタ顔整ってるしオーラあるし、見ちゃうのも避けちゃうのも分かるけどね。芸能人が町歩いてるようなもんだもん」
「そういうものかしらね。じゃあ獄寺も私のような扱いを受けることになるのかしら」
「いや、あれはただ単にカッコいいからモテるんでしょ。私は年上以外興味ないけど」
ならば、獄寺の孤独は、私と違い性質によるものではなく、今後の努力次第でどうとでも改善できる余地があるということだ。
「そうだ。宮野さんはどういう人がタイプなの?」
「えっ!」
何故か唐突に、花からそんな話題を振られた。
私にとっては本日二度目の質問である。
ちなみに、驚いたように声を上げたのは京子だ。
「その話題って流行ってるの?」
「流行ってるっていうか……まあ定番ね。気になるじゃない。宮野さんの好みって想像できないもの。もしかして誰かに訊かれた? たとえば、沢田とか」
ピンポイントで出てきた名前に疑問を覚えたが、よく考えれば転入してからまともに話したのは彼女達を除けば綱吉だけだった。
獄寺と会話したことなど花が知るはずもない。
「ええ、そうよ。でも納得したわ。万人共通で興味のある事項なのね」
「そうだね。気になる相手だと特にね」
成程、自分の命を預ける部下のことは当然気になるだろう。
納得していると、近くで一発の銃声がしたのを感じた。
場所はすぐ傍の中庭だが、あの辺りは先ほど幻術を展開したので、普通の人間には何も聞こえない。
あの銃声は、リボーンの拳銃によるものだ。
こちらで女子トークに興じている間に、とうとう綱吉と獄寺が戦闘を開始したようだ。
私の口から『好きなタイプ』が語られるのを今か今かと待ちかねている二人には悪いが、彼らの戦闘はこの目で直接確認したい。
戦いの勝敗以上に、獄寺隼人が綱吉をどう評価するか、それが気になるのだ。