標的4 時と場合による既視感
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《視点:宮野アゲハ 場所:同体育館》
周囲に目を配るが、何故か綱吉の姿が見当たらない。
代わりに京子と花は見つかったので、人混みを縫って二人に近づく。
すると、いち早く私に気づいた京子が声を上げた。
「あっ、アゲハちゃん!」
「遅かったじゃない。もう第一セット終わったわよ」
「ちょっと道に迷ってたの。試合はどんな感じ?」
花が空けてくれたスペースに入り込み、京子の隣に立つ。
試合開始直前に来た割には、コート全体を見渡せるなかなかいい位置だ。
花がこれまでの試合状況を教えてくれたが、やはり綱吉のプレーは酷いものだったらしい。
得点板を見ると相手チームとの点差は大きく、チーム全体の雰囲気も殺伐としている。
でもね、と京子は深刻そうな声で続けた。
「ツナ君、足を怪我したみたいなの」
「怪我?」
「それで今保健室に行ってるみたいよ。そのまま早退するのかもね」
何をやっているんだ。
二人の会話に、そう喉まで出かかった。
足を怪我したというのは恐らく嘘だろう。
バイクにひかれても平気だった奴が、剣道やバレーで怪我をしたなんて説得力がなさすぎる。
それに本当に怪我をしたのなら、リボーンから何かしら連絡があるはずだ。
――まさか、本当に早退するつもりなのか?
本来なら、綱吉が死ぬ気弾に頼らず試合に取り組む意思が確認できれば、すぐにリボーンが特殊弾でアシストする予定だった。
しかし、試合から降りるつもりだとしたら、私が力ずくでも止めに行くべきだろう。
再びこの場を離れようとした時、ポケットで携帯が震えた。
急いで確認すると、リボーンからのメールでたった一言こう書かれてあった。
『大丈夫だからそこにいろ』
………。
ここまで心が読めるのも気味が悪い。
今リボーンの気配は体育館にないのだが、何故こちらの様子が分かるのだろう。
複雑な心境で携帯をしまったところで、ちょうど綱吉が入って来た。
その表情は何かを覚悟したように引き締まっている。
成程、確かにリボーンの言った通り大丈夫のようだ。
真っ直ぐコートに向かう彼の瞳には、何の迷いも見当たらない。
ふと。
その目が“あの人”のものと重なった。
不覚にも重ねてしまった。
――ああ、まずい。
ありもしない既視感に眩暈がする。
苦し紛れに視線を外すと、隣で京子が安堵した表情を見せていた。
「良かった。ツナ君、怪我は大丈夫だったみたいだね」
笑顔でそう振られたが、そうね、と返すので精一杯だった。
そして試合開始直後、綱吉は太ももに受けた特殊弾により驚異的なジャンプを披露し、再び生徒達から一目置かれることになった。
本来喜ぶべき沢田綱吉の成長を――私は少しだけ恨んだ。
周囲に目を配るが、何故か綱吉の姿が見当たらない。
代わりに京子と花は見つかったので、人混みを縫って二人に近づく。
すると、いち早く私に気づいた京子が声を上げた。
「あっ、アゲハちゃん!」
「遅かったじゃない。もう第一セット終わったわよ」
「ちょっと道に迷ってたの。試合はどんな感じ?」
花が空けてくれたスペースに入り込み、京子の隣に立つ。
試合開始直前に来た割には、コート全体を見渡せるなかなかいい位置だ。
花がこれまでの試合状況を教えてくれたが、やはり綱吉のプレーは酷いものだったらしい。
得点板を見ると相手チームとの点差は大きく、チーム全体の雰囲気も殺伐としている。
でもね、と京子は深刻そうな声で続けた。
「ツナ君、足を怪我したみたいなの」
「怪我?」
「それで今保健室に行ってるみたいよ。そのまま早退するのかもね」
何をやっているんだ。
二人の会話に、そう喉まで出かかった。
足を怪我したというのは恐らく嘘だろう。
バイクにひかれても平気だった奴が、剣道やバレーで怪我をしたなんて説得力がなさすぎる。
それに本当に怪我をしたのなら、リボーンから何かしら連絡があるはずだ。
――まさか、本当に早退するつもりなのか?
本来なら、綱吉が死ぬ気弾に頼らず試合に取り組む意思が確認できれば、すぐにリボーンが特殊弾でアシストする予定だった。
しかし、試合から降りるつもりだとしたら、私が力ずくでも止めに行くべきだろう。
再びこの場を離れようとした時、ポケットで携帯が震えた。
急いで確認すると、リボーンからのメールでたった一言こう書かれてあった。
『大丈夫だからそこにいろ』
………。
ここまで心が読めるのも気味が悪い。
今リボーンの気配は体育館にないのだが、何故こちらの様子が分かるのだろう。
複雑な心境で携帯をしまったところで、ちょうど綱吉が入って来た。
その表情は何かを覚悟したように引き締まっている。
成程、確かにリボーンの言った通り大丈夫のようだ。
真っ直ぐコートに向かう彼の瞳には、何の迷いも見当たらない。
ふと。
その目が“あの人”のものと重なった。
不覚にも重ねてしまった。
――ああ、まずい。
ありもしない既視感に眩暈がする。
苦し紛れに視線を外すと、隣で京子が安堵した表情を見せていた。
「良かった。ツナ君、怪我は大丈夫だったみたいだね」
笑顔でそう振られたが、そうね、と返すので精一杯だった。
そして試合開始直後、綱吉は太ももに受けた特殊弾により驚異的なジャンプを披露し、再び生徒達から一目置かれることになった。
本来喜ぶべき沢田綱吉の成長を――私は少しだけ恨んだ。