標的3 夢のなかの夢の話
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《視点:宮野アゲハ 場所:同廊下》
体育館まで他愛のない会話をしながら向かっていると、案の定、会場とは反対方向へふらふら歩いていく綱吉を発見した。
うまく事が運びそうな予感に微笑みそうになるのを抑えながら、あら、とごく自然に呟いた。
「あそこにいるの、綱吉君じゃない?」
私の指した方向に、二人の視線が移った。
「本当だ。どうしたんだろう。会場とは逆方向に向かってるね」
「まさか沢田の奴、サボろうとしてるんじゃないの?」
「もしかしたら、会場の場所が分からなくなったのかもね」
花の鋭い指摘にひやりとしたが、幸いにも京子は私の言葉をうまく拾ってくれた。
「えっ、大変!! 私、ツナ君を呼んで来るね!」
私が誘導する前に、京子は小走りで綱吉のもとへ向かった。
本当に殊勝な娘 だ。
あの無償の愛情は、綱吉のママンがくれたものに似ている。
綱吉には現状ぱっとしないところしか見当たらないが、女性を見る目はあるようだ。
「アンタってさ」
京子を見送りながら、花がそう切り出した。
てっきり綱吉のもとへ二人を誘導したことがバレたのかと思ったが、どうやらその話ではないようだ。
アンタって、と彼女は繰り返した。
「沢田のこと、どう思ってる?」
――このタイミングできたか。
道中の会話で一度も綱吉の話題が出なかったので、少し不審に感じてはいた。
京子が離れたタイミングで持ち出したのは、京子はこの話題には興味がないということだろうか。
まあ、それはどうでもいいことだ。
視界の端で、京子が綱吉に声を掛けた。
邪心のない笑顔で近づいてくる京子に、綱吉は嬉しさと戸惑いを抱えた愛想笑いで答えている。
「綱吉君のご家族にはとても世話になっているから、感謝はしているわ」
「恋愛感情は?」
「ないわよそんなもの」
あってたまるか。
反射的に否定してしまったので順序が逆になったが、遅ればせながら彼女の思惑を考察してみる。
恋愛感情――過去のやり取りで、それを着想する場面があっただろうか。
綱吉の隣の席を希望したこと、屋上で二人で話したこと――強いて挙げるとしたら、その程度だ。
たったその程度であらぬ誤解をされたら、もしもそれが京子の耳に入ったら、さすがに綱吉が気の毒だ。
なのでより強い否定材料を口にしようとした時、こちらに歩いてくる京子と綱吉を目で捉えたので、仕方なく話を中断した。
クラスメイトになったのだから、今後いくらでも噂を修正する機会はあるはずだ。
私の姿を見つけ驚いた表情をする綱吉に、素知らぬ振りで話しかけた。
「何やってるの、綱吉君。試合に遅れるわよ」
綱吉は『何とかしてくれ』と目で訴えてきたが、私の台詞で意図を悟ったらしく、がっくりと項垂れた。
体育館まで他愛のない会話をしながら向かっていると、案の定、会場とは反対方向へふらふら歩いていく綱吉を発見した。
うまく事が運びそうな予感に微笑みそうになるのを抑えながら、あら、とごく自然に呟いた。
「あそこにいるの、綱吉君じゃない?」
私の指した方向に、二人の視線が移った。
「本当だ。どうしたんだろう。会場とは逆方向に向かってるね」
「まさか沢田の奴、サボろうとしてるんじゃないの?」
「もしかしたら、会場の場所が分からなくなったのかもね」
花の鋭い指摘にひやりとしたが、幸いにも京子は私の言葉をうまく拾ってくれた。
「えっ、大変!! 私、ツナ君を呼んで来るね!」
私が誘導する前に、京子は小走りで綱吉のもとへ向かった。
本当に殊勝な
あの無償の愛情は、綱吉のママンがくれたものに似ている。
綱吉には現状ぱっとしないところしか見当たらないが、女性を見る目はあるようだ。
「アンタってさ」
京子を見送りながら、花がそう切り出した。
てっきり綱吉のもとへ二人を誘導したことがバレたのかと思ったが、どうやらその話ではないようだ。
アンタって、と彼女は繰り返した。
「沢田のこと、どう思ってる?」
――このタイミングできたか。
道中の会話で一度も綱吉の話題が出なかったので、少し不審に感じてはいた。
京子が離れたタイミングで持ち出したのは、京子はこの話題には興味がないということだろうか。
まあ、それはどうでもいいことだ。
視界の端で、京子が綱吉に声を掛けた。
邪心のない笑顔で近づいてくる京子に、綱吉は嬉しさと戸惑いを抱えた愛想笑いで答えている。
「綱吉君のご家族にはとても世話になっているから、感謝はしているわ」
「恋愛感情は?」
「ないわよそんなもの」
あってたまるか。
反射的に否定してしまったので順序が逆になったが、遅ればせながら彼女の思惑を考察してみる。
恋愛感情――過去のやり取りで、それを着想する場面があっただろうか。
綱吉の隣の席を希望したこと、屋上で二人で話したこと――強いて挙げるとしたら、その程度だ。
たったその程度であらぬ誤解をされたら、もしもそれが京子の耳に入ったら、さすがに綱吉が気の毒だ。
なのでより強い否定材料を口にしようとした時、こちらに歩いてくる京子と綱吉を目で捉えたので、仕方なく話を中断した。
クラスメイトになったのだから、今後いくらでも噂を修正する機会はあるはずだ。
私の姿を見つけ驚いた表情をする綱吉に、素知らぬ振りで話しかけた。
「何やってるの、綱吉君。試合に遅れるわよ」
綱吉は『何とかしてくれ』と目で訴えてきたが、私の台詞で意図を悟ったらしく、がっくりと項垂れた。