標的3 夢のなかの夢の話
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《視点:宮野アゲハ 場所:同屋上》
授業が終わってすぐに綱吉に連れて行かれた先は、学校の屋上だった。
綱吉は人目を避ける目的でこの場所を選んだのだろうが、屋上のドア越しに相当数の生徒が聞き耳を立てているので、残念ながらあまり意味はない。
もっとも、綱吉は全く気づいていないようだ。
私やリボーンはともかく、せめて一般人の気配くらいは察してほしい。
苛々したので殴っておいた。
「いってー!! いきなり何するんだよ!」
「むしゃくしゃしたから」
「そんな曖昧な理由で殴られたの!?」
殴られた頭を押さえ大袈裟にしゃがみ込む綱吉。
ひとまず気分は晴れたので、本題に移ることにする。
「それで、私をこんなところに連れ込んで何の用? まさかとは思うけど、身の程知らずに決闘する気なら受けて立つわよ」
「しないよ!!」
冗談はさておき、授業中に嫌というほど視線を送られていたので、どんな用件かは想像がついている。
そして、想像通り、私の転入の話だった。
「なんでアゲハがうちのクラスに転入してきたんだよ!! しかも、アゲハってオレの一個年上だろ? なんで同じ学年なんだよ」
「なんでって……裏から手を回して同じクラスにしたのよ。教室でも言ったように、ツナの遠い親戚ということにしてね」
あながち嘘では、ない。
「そういうことを訊いてるんじゃなくて……。どうしてうちに転入してきたのかってことなんだけど」
「おかしなことを訊くわね。年齢を誤魔化していても、本来は中学生であることに変わりはないのよ。この国では中学までは義務教育でしょう。なら、私が中学校に通うのは何も問題ないはずよ」
「いやそうなんだけど!」
そういう意味じゃなくて! と悶絶する綱吉。
質問の意図がうまく伝わらず、もどかしく感じているのだろう。
しかし、私だって日本語は理解できるし空気も読める方なので、綱吉の発言の意味は当然把握できている。
要するに、そのくらい頭を使って自分で考えろ、ということだ。
ちなみに、イタリアでは十六歳までが義務教育なのだが、私は七歳でマフィアの学校を卒業して以来、学校には通っていない。
「……まあいいや。じゃあ、今日朝早くに出かけてたのって、転入の手続きか何かか?」
「そんなところよ」
実際は、風紀委員長に喧嘩を売られていたのだが。
なんなら重要な手続きは事前にほぼ済ませていたので、本来ならもっと早く終わるはずだった。
そういえば、部屋ひとつ爆破したのに、想定より騒ぎにならなかったのが引っ掛かる。
飛び散ったガラスの破片は跡形もなく、先ほど覗いたら応接室も粗方片づいていた。
一連の対応があまりに迅速すぎる。
もしかしたら、彼の部下たちは日常的に戦闘の後始末を強いられているのかもしれない。
委員長の好戦的な性格を考えると、充分あり得る話だ。
などと考えていると、綱吉が不機嫌そうな顔をしていた。
「なんでもっと早く転入のこと教えてくれなかったんだよ! リボーンは知ってたんだろ? なんでオレには何も言わないんだよ」
声を荒げてそう問いただされ、少し驚いた。
突然怒られたことではなく、突然リボーンの名前が出てきたことにだ。
家庭教師と生徒では立場が違うし、当然与える情報も変わってくる――その程度、綱吉も承知していると思っていた。
とはいえ、綱吉に話さなかった理由なら、より単純な論理で説明できる。
「その方が面白そうだったからよ」
そう言い捨てると、綱吉は脱力した。
正確にはリボーンの発案なのだが、これは黙っておいた方がいいだろう。
綱吉は深くため息を吐いてから、姿勢を正して難しい顔を作った。
「リボーンとアゲハって、どういう関係なんだ?」
本人は努めてさり気なく質問したつもりなのだろうが、話の流れが不自然すぎる。
このリボーンに対する不自然な執着は、一体何が原因だろうか。
読心術で彼の目的を探ろうとしても、全く読み取れない。
そういえば、他人の言動で理解できない場合は、大抵恋愛事が絡んでいると昔言われたのだが――いやしかし、その理屈で言うと、綱吉がリボーンを好きということに……。
「……同業者として付き合いが長いだけよ」
何故か、これ以上思考すると、危険な境地に辿り着いてしまいそうな予感がした。
やはり慣れないことはするものではない。
そう心に誓いつつ、早々に話題を変えることにした。
授業が終わってすぐに綱吉に連れて行かれた先は、学校の屋上だった。
綱吉は人目を避ける目的でこの場所を選んだのだろうが、屋上のドア越しに相当数の生徒が聞き耳を立てているので、残念ながらあまり意味はない。
もっとも、綱吉は全く気づいていないようだ。
私やリボーンはともかく、せめて一般人の気配くらいは察してほしい。
苛々したので殴っておいた。
「いってー!! いきなり何するんだよ!」
「むしゃくしゃしたから」
「そんな曖昧な理由で殴られたの!?」
殴られた頭を押さえ大袈裟にしゃがみ込む綱吉。
ひとまず気分は晴れたので、本題に移ることにする。
「それで、私をこんなところに連れ込んで何の用? まさかとは思うけど、身の程知らずに決闘する気なら受けて立つわよ」
「しないよ!!」
冗談はさておき、授業中に嫌というほど視線を送られていたので、どんな用件かは想像がついている。
そして、想像通り、私の転入の話だった。
「なんでアゲハがうちのクラスに転入してきたんだよ!! しかも、アゲハってオレの一個年上だろ? なんで同じ学年なんだよ」
「なんでって……裏から手を回して同じクラスにしたのよ。教室でも言ったように、ツナの遠い親戚ということにしてね」
あながち嘘では、ない。
「そういうことを訊いてるんじゃなくて……。どうしてうちに転入してきたのかってことなんだけど」
「おかしなことを訊くわね。年齢を誤魔化していても、本来は中学生であることに変わりはないのよ。この国では中学までは義務教育でしょう。なら、私が中学校に通うのは何も問題ないはずよ」
「いやそうなんだけど!」
そういう意味じゃなくて! と悶絶する綱吉。
質問の意図がうまく伝わらず、もどかしく感じているのだろう。
しかし、私だって日本語は理解できるし空気も読める方なので、綱吉の発言の意味は当然把握できている。
要するに、そのくらい頭を使って自分で考えろ、ということだ。
ちなみに、イタリアでは十六歳までが義務教育なのだが、私は七歳でマフィアの学校を卒業して以来、学校には通っていない。
「……まあいいや。じゃあ、今日朝早くに出かけてたのって、転入の手続きか何かか?」
「そんなところよ」
実際は、風紀委員長に喧嘩を売られていたのだが。
なんなら重要な手続きは事前にほぼ済ませていたので、本来ならもっと早く終わるはずだった。
そういえば、部屋ひとつ爆破したのに、想定より騒ぎにならなかったのが引っ掛かる。
飛び散ったガラスの破片は跡形もなく、先ほど覗いたら応接室も粗方片づいていた。
一連の対応があまりに迅速すぎる。
もしかしたら、彼の部下たちは日常的に戦闘の後始末を強いられているのかもしれない。
委員長の好戦的な性格を考えると、充分あり得る話だ。
などと考えていると、綱吉が不機嫌そうな顔をしていた。
「なんでもっと早く転入のこと教えてくれなかったんだよ! リボーンは知ってたんだろ? なんでオレには何も言わないんだよ」
声を荒げてそう問いただされ、少し驚いた。
突然怒られたことではなく、突然リボーンの名前が出てきたことにだ。
家庭教師と生徒では立場が違うし、当然与える情報も変わってくる――その程度、綱吉も承知していると思っていた。
とはいえ、綱吉に話さなかった理由なら、より単純な論理で説明できる。
「その方が面白そうだったからよ」
そう言い捨てると、綱吉は脱力した。
正確にはリボーンの発案なのだが、これは黙っておいた方がいいだろう。
綱吉は深くため息を吐いてから、姿勢を正して難しい顔を作った。
「リボーンとアゲハって、どういう関係なんだ?」
本人は努めてさり気なく質問したつもりなのだろうが、話の流れが不自然すぎる。
このリボーンに対する不自然な執着は、一体何が原因だろうか。
読心術で彼の目的を探ろうとしても、全く読み取れない。
そういえば、他人の言動で理解できない場合は、大抵恋愛事が絡んでいると昔言われたのだが――いやしかし、その理屈で言うと、綱吉がリボーンを好きということに……。
「……同業者として付き合いが長いだけよ」
何故か、これ以上思考すると、危険な境地に辿り着いてしまいそうな予感がした。
やはり慣れないことはするものではない。
そう心に誓いつつ、早々に話題を変えることにした。