標的2 黒猫が語る風の噂
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《視点:宮野アゲハ 場所:並盛中学校応接室》
重々しくなった空気を破るように、わざと机を叩いて乱暴に立ち上がった。
「とにかくもう行くわ。貴方とは戦わないし、戦うつもりもない。次会う時までに相手との力量差を見極める能力くらい身につけておきなさい」
それを聞いた途端、雲雀は目の色を変えた。
「待ちなよ。このまま帰すとでも――」
そこで、不自然に言葉を止めた。
ソファから腰を浮かせたことで、足に触れた“それ”にようやく気づいたようだ。
机の下の、手榴弾の存在に。
「――っ!!」
手榴弾を目視して動揺したその刹那は、応接室の窓から脱出するのに充分な時間だ。
飛び降りて地上に足が触れたところで、背後で爆発音が響いた。
粉々になった窓ガラスの破片が降ってくるなか、応接室の気配を探る。
雲雀は無事なようだが、追ってくる様子はないようだ。
ここまですれば、今日はひとまず絡まれないだろう。
大分時間がかかってしまったが、これでようやく本来の目的が果たせる。
改めて校長室へ足を進めると、タイミング良くスカートのポケットから機械的な振動を感じた。
携帯を取り出し相手を確認してから、通話ボタンを押した。
「どうしたの? リボーン」
≪それはこっちの台詞だ。予定より大分時間かかってんじゃねーか。何かあったのか≫
「いいえ、別にたいしたことはなかったわよ。ちょっと並盛中の生徒と話し込んでいただけ」
≪……後ろの方で爆発音が聞こえるんだが≫
「気のせいよ」
すっとぼけると、リボーンも諦めたようで、短くため息を吐いただけで≪まあいいか≫と話を続けた。
≪黒猫がツナに接触したぞ≫
知っている。
そもそも、私の荷物をあの娘 に届けさせるよう仕向けたのは私なのだから。
それに、リボーンも渋々ながら同意してくれたはずだ。
だから、今更≪良かったのか?≫などと問う意図が分からない。
「別にいいんじゃない? この世界に入る以上、どの道黒猫に会うのは避けられないもの。遅いか早いかの違いでしかないわ」
≪俺はあいつを信用してねー。あいつは絶対危険だ≫
この台詞も聞き飽きた。
どうやらリボーンが黒猫を嫌うのは、彼女の性質以上に私情が絡んでいるようだ。
リボーンにも自覚はあるのか、それ以上言葉を続けず、最後にこう質問した。
≪そういや、なんで“あいつ”の相手してやったんだ?≫
『あいつ』とは、雲雀恭弥のことだろうか。
どうやらすっとぼけていたのは、リボーンの方だったようだ。
「相手ってほどのことはしてないわよ。逃げるためにしただけだもの」
≪ただ逃げるためなら、お前ならいくらでもやりようあっただろ≫
「そうかしら」
数ある手段の中で、うまく雲雀の隙を突き、適度に満足させ、かつ怪我をさせない手段は、あれくらいだったと思う。
≪……あいつも≫
「え?」
電話口で何か聞こえたが、やがて通話が切れた。
通信障害かもしれない。
さて、気を取り直して、校長室に向かうとしよう。
早く転入手続きを済ませて、綱吉の顔が見たくなった。
(標的2 了)
重々しくなった空気を破るように、わざと机を叩いて乱暴に立ち上がった。
「とにかくもう行くわ。貴方とは戦わないし、戦うつもりもない。次会う時までに相手との力量差を見極める能力くらい身につけておきなさい」
それを聞いた途端、雲雀は目の色を変えた。
「待ちなよ。このまま帰すとでも――」
そこで、不自然に言葉を止めた。
ソファから腰を浮かせたことで、足に触れた“それ”にようやく気づいたようだ。
机の下の、手榴弾の存在に。
「――っ!!」
手榴弾を目視して動揺したその刹那は、応接室の窓から脱出するのに充分な時間だ。
飛び降りて地上に足が触れたところで、背後で爆発音が響いた。
粉々になった窓ガラスの破片が降ってくるなか、応接室の気配を探る。
雲雀は無事なようだが、追ってくる様子はないようだ。
ここまですれば、今日はひとまず絡まれないだろう。
大分時間がかかってしまったが、これでようやく本来の目的が果たせる。
改めて校長室へ足を進めると、タイミング良くスカートのポケットから機械的な振動を感じた。
携帯を取り出し相手を確認してから、通話ボタンを押した。
「どうしたの? リボーン」
≪それはこっちの台詞だ。予定より大分時間かかってんじゃねーか。何かあったのか≫
「いいえ、別にたいしたことはなかったわよ。ちょっと並盛中の生徒と話し込んでいただけ」
≪……後ろの方で爆発音が聞こえるんだが≫
「気のせいよ」
すっとぼけると、リボーンも諦めたようで、短くため息を吐いただけで≪まあいいか≫と話を続けた。
≪黒猫がツナに接触したぞ≫
知っている。
そもそも、私の荷物をあの
それに、リボーンも渋々ながら同意してくれたはずだ。
だから、今更≪良かったのか?≫などと問う意図が分からない。
「別にいいんじゃない? この世界に入る以上、どの道黒猫に会うのは避けられないもの。遅いか早いかの違いでしかないわ」
≪俺はあいつを信用してねー。あいつは絶対危険だ≫
この台詞も聞き飽きた。
どうやらリボーンが黒猫を嫌うのは、彼女の性質以上に私情が絡んでいるようだ。
リボーンにも自覚はあるのか、それ以上言葉を続けず、最後にこう質問した。
≪そういや、なんで“あいつ”の相手してやったんだ?≫
『あいつ』とは、雲雀恭弥のことだろうか。
どうやらすっとぼけていたのは、リボーンの方だったようだ。
「相手ってほどのことはしてないわよ。逃げるためにしただけだもの」
≪ただ逃げるためなら、お前ならいくらでもやりようあっただろ≫
「そうかしら」
数ある手段の中で、うまく雲雀の隙を突き、適度に満足させ、かつ怪我をさせない手段は、あれくらいだったと思う。
≪……あいつも≫
「え?」
電話口で何か聞こえたが、やがて通話が切れた。
通信障害かもしれない。
さて、気を取り直して、校長室に向かうとしよう。
早く転入手続きを済ませて、綱吉の顔が見たくなった。
(標的2 了)