標的2 黒猫が語る風の噂
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《視点:宮野アゲハ 場所:並盛中学校応接室》
一体どういう教育をすればこうなるのだろうかと、柄にもなく考えてしまった。
資料によれば、彼も綱吉と同じく平和な世界を生きる一般人のはずだ。
この世界は、危機感を欠片も必要としない世界ではなかったのか。
それが、どうして会って数分しか経っていない人間に、これほど好戦的な眼を向けられるのだろう。
獲物を狙う肉食獣のような眼光は、一体どういう暮らしをして身につけたのだろうか。
一応こうしてソファーに座ることは許されたし、紅茶も(彼の部下に)出してもらったが、歓談の雰囲気はまるで感じられない。
どころか、両手にトンファーを装備していることから、私と一戦交える気でいるようだ。
ティーカップをソーサーに置くと、彼は何を勘違いしたのか、嬉しそうに口角を上げ、トンファーを持つ手に力を込めた。
どうやら、この男は。
私と戦うことを望んでいる。
私と戦えることに喜びを感じている――ようだ。
とても信じがたいが。
正直、彼の態度は扱いに困る。
そもそも、この学校には“ある手続き”のために訪れたに過ぎないのだ。
やることといえば、学校のトップと当たり障りのない会話をする程度のはずだった。
そういえば、何故教師陣は、校長への挨拶を後回しにさせてまで応接室に立ち寄るよう促したのだろうか。
思わぬ形で、この学校の権力構造を垣間見た気がした。
「ねえ」
ついに、彼の方から口火を切った。
このまま見つめ合う展開も気まずいが、話の流れは私の希望に沿うものではないようだ。
「いい加減にしてくれる? いつになったら戦う気になってくれるの?」
その発言に異論は山ほどあるが、努めて冷静に否定した。
「貴方と戦う気なんて最初からないわよ。そもそも私は、この学校の校長に会いに来たのよ。今度相手してあげるから、今日はもう帰っていいかしら」
「……校長より僕の方が強いよ」
別に校長と戦う気もない。
不機嫌そうに反論する彼に、思わずそう突っ込みそうになるのをぎりぎりで堪えた。
素の発言なのか私を引き留めるための演技なのか判断がつかない――彼の恐ろしいところは、本当に戦うことしか頭にない可能性を否定できないことだ。
それとも、もしかして権力的な意味での強さを言っているのだろうか。
それはそれで可能性がありそうなので、どちらの意味かは訊かないでおいた。
「君はそれだけ強いのに、どうして戦おうとしないの? 戦いたいと思わないの?」
『それだけ』とは、何処まで把握しているのか。
そこには触れず、適当に話を濁す道を選んだ。
「むしろ、何故そこまで戦いたがるのか分からないわ」
平和な世界で生きているのに。
戦わなくても生きているのに。
「それとも、それなりの目的でもあるのかしら」
「目的? そんなのは考えたことないけど」
そう言って、彼は――雲雀恭弥は笑った。
見る人によっては恐怖を与えるような、肉食獣のそれで。
「強い奴と戦うのは、楽しいじゃない」
それが当然であり常識であるとでもいうように、あっさりとそう言ってのけた。
ああ、嫌だな。
柄にもなくそう思った。
一体どういう教育をすればこうなるのだろうかと、柄にもなく考えてしまった。
資料によれば、彼も綱吉と同じく平和な世界を生きる一般人のはずだ。
この世界は、危機感を欠片も必要としない世界ではなかったのか。
それが、どうして会って数分しか経っていない人間に、これほど好戦的な眼を向けられるのだろう。
獲物を狙う肉食獣のような眼光は、一体どういう暮らしをして身につけたのだろうか。
一応こうしてソファーに座ることは許されたし、紅茶も(彼の部下に)出してもらったが、歓談の雰囲気はまるで感じられない。
どころか、両手にトンファーを装備していることから、私と一戦交える気でいるようだ。
ティーカップをソーサーに置くと、彼は何を勘違いしたのか、嬉しそうに口角を上げ、トンファーを持つ手に力を込めた。
どうやら、この男は。
私と戦うことを望んでいる。
私と戦えることに喜びを感じている――ようだ。
とても信じがたいが。
正直、彼の態度は扱いに困る。
そもそも、この学校には“ある手続き”のために訪れたに過ぎないのだ。
やることといえば、学校のトップと当たり障りのない会話をする程度のはずだった。
そういえば、何故教師陣は、校長への挨拶を後回しにさせてまで応接室に立ち寄るよう促したのだろうか。
思わぬ形で、この学校の権力構造を垣間見た気がした。
「ねえ」
ついに、彼の方から口火を切った。
このまま見つめ合う展開も気まずいが、話の流れは私の希望に沿うものではないようだ。
「いい加減にしてくれる? いつになったら戦う気になってくれるの?」
その発言に異論は山ほどあるが、努めて冷静に否定した。
「貴方と戦う気なんて最初からないわよ。そもそも私は、この学校の校長に会いに来たのよ。今度相手してあげるから、今日はもう帰っていいかしら」
「……校長より僕の方が強いよ」
別に校長と戦う気もない。
不機嫌そうに反論する彼に、思わずそう突っ込みそうになるのをぎりぎりで堪えた。
素の発言なのか私を引き留めるための演技なのか判断がつかない――彼の恐ろしいところは、本当に戦うことしか頭にない可能性を否定できないことだ。
それとも、もしかして権力的な意味での強さを言っているのだろうか。
それはそれで可能性がありそうなので、どちらの意味かは訊かないでおいた。
「君はそれだけ強いのに、どうして戦おうとしないの? 戦いたいと思わないの?」
『それだけ』とは、何処まで把握しているのか。
そこには触れず、適当に話を濁す道を選んだ。
「むしろ、何故そこまで戦いたがるのか分からないわ」
平和な世界で生きているのに。
戦わなくても生きているのに。
「それとも、それなりの目的でもあるのかしら」
「目的? そんなのは考えたことないけど」
そう言って、彼は――雲雀恭弥は笑った。
見る人によっては恐怖を与えるような、肉食獣のそれで。
「強い奴と戦うのは、楽しいじゃない」
それが当然であり常識であるとでもいうように、あっさりとそう言ってのけた。
ああ、嫌だな。
柄にもなくそう思った。