標的2 黒猫が語る風の噂
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《視点:沢田綱吉 場所:沢田家アゲハの自室前廊下》
持田先輩との試合を終えた翌日、朝起きて支度を済ませた俺は、アゲハの部屋の前に来ていた。
一昨日アゲハが俺の部屋で読んでいた雑誌が見当たらないので、その行方を訊きに来た――というのが名目上の目的だ。
雑誌はすぐに必要としているものじゃないし、なんならそのまま貸してもいいくらいだ。
本当の目的は別にある――というか、ただアゲハと話がしたかったのだ。
昨日は京子ちゃんに褒められて浮かれたり、リボーンのトラップで爆破されたりと、とても落ち着いて話せる状況じゃなかった。
それに思い返してみても、俺はほとんどリボーンとしか会話していない。
だから、アゲハと二人で話したいと思ったのだ。
そんなわけでこうして部屋の前で待機しているものの、さっきから物音一つしない。
まだ寝ているのだろうか。
想像できないけど、もしかしたら俺より朝に弱いのかもしれない。
女の子の部屋に入るのは躊躇われるけれど、下の階ではもうすぐ朝食の準備が出来る頃だ。
もしまだ寝ているのなら、そろそろ起こした方がいい。
「アゲハー! 朝だぞー! 入るからなー!」
たとえ寝ていても起きるように大声で呼んでから、意を決してドアを開けた。
しかし、中には誰もいなかった。
寝ているどころか、布団は既に以前より綺麗に畳まれ、部屋の隅に片付けられている。
元々物置部屋として使っていたので、家具はほとんど置いてない。
たまたま家にあった折り畳み式のテーブルの上には、探していた雑誌があった。
しかし、その他に私物らしきものは見当たらない。
生活必需品は母さんが大方買ったらしいが、そもそもアゲハはこの家に来た時、荷物を何も持っていなかった。
リボーンですらトランクを持っていたのに、むしろ女の子はそういう荷物が多いんじゃないのか?
「あとで送ってもらう予定……とか?」
何にせよ、私物がないこの部屋には生活感がまるでない。
この部屋でアゲハが過ごしているという痕跡が、この家にアゲハが住んでいるという事実がまるで感じられないのだ。
それ以前に、そもそも宮野アゲハの私生活というものが未だに想像できない。
既に二日はこの部屋で寝泊まりしているというのに、だ。
まあ、一昨日来たばかりの家で自宅のように寛げというのも無理な話だろうけれど。
それでも早くこの家に慣れてほしい。
早く、アゲハに俺達を受け入れてほしいと思う。
「何してんだ、ツナ」
「うわあっ!!」
突然の第三者の声に、思わず情けない悲鳴を上げてしまった。
背後を振り返ると、俺を睨みつけるリボーンが廊下に立っていた。
対する俺は、考え事をしていたせいでいつの間にかアゲハの部屋に立ち入ってしまっていた。
いつものポーカーフェイスのはずなのに、何故か言い知れぬ恐怖を感じる。
なにかあらぬ誤解を受けているような気がしてならない。
リボーンは厳しい表情で、まるで尋問のような威圧感で質問を重ねた。
「アゲハの部屋に何か用でもあんのか」
「えっと……アゲハが持っていった雑誌を返してもらおうと思って……。あの、アゲハってどこに行ったか知ってるか? リビングにはいなかったみたいだけど……」
「……アゲハは出かけるところがあるとか言って、お前が寝ている間に出てったぞ」
冷や汗をかきながらしどろもどろで返す俺に、リボーンは端的にそう答えた。
その間もリボーンの鋭い視線が突き刺さったが、とりあえず疑いは解消されたようだ。
それはさておき、姿がないと思ったら、こんな朝早くに出かけたのか。
俺の護衛だというわりには自由な奴だ。
四六時中張りつかれても困るけれど、出かけるなら一言くらいくれればいいのに。
リボーンには色々喋っていることを匂わせる口振りも、無性に気に食わない。
すると、リボーンは再び目つきを鋭くした。
「おいツナ」
「な、何だよ」
まさか心を読まれたのか、と内心焦ったが、どうやら違うようだ。
けれど、とてつもなく嫌な予感がする。
微妙な空気が流れる中、突然玄関のチャイムが鳴り響いた。
その一息後に、階下から母さんの声が聞こえた。
「ツー君ー! 今ちょっと手が離せないから、代わりに出てくれるー?」
「あ、うん! 分かった!」
一瞬緊張が緩んだ隙に、俺は部屋を飛び出し急いで階段を駆け下りた。
「……来たか」
俺はとにかくその場から逃げるのに必死で、リボーンが苦々しくそう呟いたことには気づかなかった。
持田先輩との試合を終えた翌日、朝起きて支度を済ませた俺は、アゲハの部屋の前に来ていた。
一昨日アゲハが俺の部屋で読んでいた雑誌が見当たらないので、その行方を訊きに来た――というのが名目上の目的だ。
雑誌はすぐに必要としているものじゃないし、なんならそのまま貸してもいいくらいだ。
本当の目的は別にある――というか、ただアゲハと話がしたかったのだ。
昨日は京子ちゃんに褒められて浮かれたり、リボーンのトラップで爆破されたりと、とても落ち着いて話せる状況じゃなかった。
それに思い返してみても、俺はほとんどリボーンとしか会話していない。
だから、アゲハと二人で話したいと思ったのだ。
そんなわけでこうして部屋の前で待機しているものの、さっきから物音一つしない。
まだ寝ているのだろうか。
想像できないけど、もしかしたら俺より朝に弱いのかもしれない。
女の子の部屋に入るのは躊躇われるけれど、下の階ではもうすぐ朝食の準備が出来る頃だ。
もしまだ寝ているのなら、そろそろ起こした方がいい。
「アゲハー! 朝だぞー! 入るからなー!」
たとえ寝ていても起きるように大声で呼んでから、意を決してドアを開けた。
しかし、中には誰もいなかった。
寝ているどころか、布団は既に以前より綺麗に畳まれ、部屋の隅に片付けられている。
元々物置部屋として使っていたので、家具はほとんど置いてない。
たまたま家にあった折り畳み式のテーブルの上には、探していた雑誌があった。
しかし、その他に私物らしきものは見当たらない。
生活必需品は母さんが大方買ったらしいが、そもそもアゲハはこの家に来た時、荷物を何も持っていなかった。
リボーンですらトランクを持っていたのに、むしろ女の子はそういう荷物が多いんじゃないのか?
「あとで送ってもらう予定……とか?」
何にせよ、私物がないこの部屋には生活感がまるでない。
この部屋でアゲハが過ごしているという痕跡が、この家にアゲハが住んでいるという事実がまるで感じられないのだ。
それ以前に、そもそも宮野アゲハの私生活というものが未だに想像できない。
既に二日はこの部屋で寝泊まりしているというのに、だ。
まあ、一昨日来たばかりの家で自宅のように寛げというのも無理な話だろうけれど。
それでも早くこの家に慣れてほしい。
早く、アゲハに俺達を受け入れてほしいと思う。
「何してんだ、ツナ」
「うわあっ!!」
突然の第三者の声に、思わず情けない悲鳴を上げてしまった。
背後を振り返ると、俺を睨みつけるリボーンが廊下に立っていた。
対する俺は、考え事をしていたせいでいつの間にかアゲハの部屋に立ち入ってしまっていた。
いつものポーカーフェイスのはずなのに、何故か言い知れぬ恐怖を感じる。
なにかあらぬ誤解を受けているような気がしてならない。
リボーンは厳しい表情で、まるで尋問のような威圧感で質問を重ねた。
「アゲハの部屋に何か用でもあんのか」
「えっと……アゲハが持っていった雑誌を返してもらおうと思って……。あの、アゲハってどこに行ったか知ってるか? リビングにはいなかったみたいだけど……」
「……アゲハは出かけるところがあるとか言って、お前が寝ている間に出てったぞ」
冷や汗をかきながらしどろもどろで返す俺に、リボーンは端的にそう答えた。
その間もリボーンの鋭い視線が突き刺さったが、とりあえず疑いは解消されたようだ。
それはさておき、姿がないと思ったら、こんな朝早くに出かけたのか。
俺の護衛だというわりには自由な奴だ。
四六時中張りつかれても困るけれど、出かけるなら一言くらいくれればいいのに。
リボーンには色々喋っていることを匂わせる口振りも、無性に気に食わない。
すると、リボーンは再び目つきを鋭くした。
「おいツナ」
「な、何だよ」
まさか心を読まれたのか、と内心焦ったが、どうやら違うようだ。
けれど、とてつもなく嫌な予感がする。
微妙な空気が流れる中、突然玄関のチャイムが鳴り響いた。
その一息後に、階下から母さんの声が聞こえた。
「ツー君ー! 今ちょっと手が離せないから、代わりに出てくれるー?」
「あ、うん! 分かった!」
一瞬緊張が緩んだ隙に、俺は部屋を飛び出し急いで階段を駆け下りた。
「……来たか」
俺はとにかくその場から逃げるのに必死で、リボーンが苦々しくそう呟いたことには気づかなかった。