標的1 夢と希望と不幸の到来
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《視点:宮野アゲハ 場所:並盛町某所》
あの後、私達の正体と目的を綱吉に説明したものの、充分な理解を得られたとは言いがたい。
私の数歩先を歩きながら言い争っている綱吉とリボーンの会話から、そもそも彼がマフィアという世界をまるで信じていないことが窺える。
正統な後継者なのに、今まで誰も裏社会に触れさせなかったらしい。
さて、彼を観察していると、他にも色々な発見があった。
まず、最初は突然現れた私達に警戒と緊張を示していたが、リボーンとは既に幾らか打ち解けているように見える。
ただし、私に対しては時折視線を送ってくる程度で、積極的に関わる気はないようだ。
リボーンに強気な口調で言い返していた綱吉だったが、ふと口を噤むと素早く曲がり角に身を隠した。
取り残された私とリボーンは、首を傾げながら前方を注視した。
すると、茶髪の少女がこちらに向かって歩いて来る姿があった。
見覚えがある気がして暫く眺めていると、ようやく思い出した――綱吉のクラスメイト、笹川京子だ。
路上で立ち尽くす私達を不審に思ったのか、彼女も目の前で足を止めた。
笹川京子はまず私を物珍しそうに観察したが、目が合うと慌てて逸らされた。
女子にここまではっきりと拒絶されると、さすがにショックを感じる。
その上、リボーンには花の咲くような笑顔を浮かべ、わざわざしゃがんで視線を合わせるという格差を見せつけられた。
「きゃーっ、かわいいーっ」
「ちゃおっス」
綱吉といい彼女といい、どうしてリボーンばかり優遇されるのだろう。
綱吉の様子を確認すると、何故か険しい表情でリボーンを睨みつけている――彼女と仲良くするのが気に入らないのだろうか。
京子は終始綱吉に気づくことなく、リボーンと楽しそうに会話してから、にこやかに手を振って去って行った。
彼女を見送った後、リボーンは隠れていた綱吉へ意地の悪い笑みを向けた。
「マフィアモテモテ」
「んな!」
「それは宣戦布告かしら、リボーン」
「んなー!!」
「なんでお前まで怒ってんだ……」
私の怒気に綱吉は大袈裟に驚き、リボーンは呆れたように突っ込んだ。
「ツナがお前に怒るならまだ分かるが……、相変わらず鈍い女だな」
「は?」
「少しは女心を分かってやれって話だ」
女の私に対して随分と失礼な台詞だ。
それとも、彼の中では殺気を込めて睨みつけながら「は?」と凄む奴は、女として認識されないのか。
私に説明する代わりに、リボーンは綱吉に向き直ってこう言った。
「ツナ、あの女に惚れてんだろ」
「お前に関係ないだろ!?」
当然のように綱吉の心情を言い当てたことも、綱吉がそれを否定しないことも驚いた。
資料にそんなことは記載されていなかったのに、リボーンはどうやって知ったのだろう。
「オレは読心術を習得してる。読心術が使えるのにお前の気持ちに気づかなかったのは、アゲハだけだ」
「煩いわよ」
余計な一言だが、事実なので強く言い返せなかった。
一通りの手ほどきを受けたにも関わらず、最終的に「アゲハちゃんはこういう才能全くないな」と教育係に匙を投げられたほど出来が悪いことを、リボーンも把握しているのだ。
「もういいから、オレのことは放っといてくれよ!」
「嫌だ」
「いでででギブ!! ギブ!!!」
リボーンの胸倉を掴んだ腕を捻られ、綱吉は簡単に降参した。
未だにリボーンをただの赤ん坊だと思っているのか、綱吉は悔しそうに捻られた腕を擦っている。
「告白したのか?」
「するわけないだろ! 笹川京子は我が校のアイドルだよ? どーせオレなんか眼中にないよ。告白するだけ無駄だって」
「すげーな、その負け犬体質」
「放っとけよ」
軽くあしらわれても、リボーンはむしろ生き生きとしている。
やはり、ダメな生徒を教育するのがこの上なく楽しいようだ。
「やっとオレの出番だな」
そう言って懐から取り出したのは、妖しく黒光りする塊。
絶句する綱吉に、静かに“それ”を突き付けた。
「――死ね」
リボーンに銃口を向けられても、一瞬怯んだだけですぐに正気を取り戻したのは将来有望と判断できるかもしれない。
とは言え、おもちゃだろ、とあしらうその拳銃は、勿論本物である。
「いっぺん死んで来い」
取り合おうとしないリボーンに、綱吉は痺れを切らして怒鳴りつけた。
「いつまでも年上をからかうなよ! 大体殺される意味が分かんないよ!」
「死ねば分かる」
ズガンッ、と重たい銃声が町に響いた。
拳銃から放たれた弾は綱吉の額に命中し、綱吉は血を流しながら後ろに倒れ込んだ。
その様子を見た通行人の悲鳴があちこちで上がるが、私達は見向きもしない。
すると、すぐに綱吉の身体に変化が現れた。
胸の辺りが異様に膨らみ出したかと思うと、そこから額にオレンジの炎を灯した下着姿の綱吉が出てきたのだ。
その様子は、普段の彼からは想像できないほど闘志に溢れている。
これが、沢田綱吉の死ぬ気モード。
攻撃的で粗雑な死ぬ気の炎は“あの人”にはほど遠いが、ともかく成功だ。
「復活 !!! オレは笹川京子に死ぬ気で告白する!」
綱吉は私達の視線も周囲の反応も一切気に留めず、自分が裸であることにも構わず、先ほど京子が去った方向へ走り出した。
彼の作った土埃が舞う中、リボーンは満足そうに呟いた。
「イッツ死ぬ気タイム」
あの後、私達の正体と目的を綱吉に説明したものの、充分な理解を得られたとは言いがたい。
私の数歩先を歩きながら言い争っている綱吉とリボーンの会話から、そもそも彼がマフィアという世界をまるで信じていないことが窺える。
正統な後継者なのに、今まで誰も裏社会に触れさせなかったらしい。
さて、彼を観察していると、他にも色々な発見があった。
まず、最初は突然現れた私達に警戒と緊張を示していたが、リボーンとは既に幾らか打ち解けているように見える。
ただし、私に対しては時折視線を送ってくる程度で、積極的に関わる気はないようだ。
リボーンに強気な口調で言い返していた綱吉だったが、ふと口を噤むと素早く曲がり角に身を隠した。
取り残された私とリボーンは、首を傾げながら前方を注視した。
すると、茶髪の少女がこちらに向かって歩いて来る姿があった。
見覚えがある気がして暫く眺めていると、ようやく思い出した――綱吉のクラスメイト、笹川京子だ。
路上で立ち尽くす私達を不審に思ったのか、彼女も目の前で足を止めた。
笹川京子はまず私を物珍しそうに観察したが、目が合うと慌てて逸らされた。
女子にここまではっきりと拒絶されると、さすがにショックを感じる。
その上、リボーンには花の咲くような笑顔を浮かべ、わざわざしゃがんで視線を合わせるという格差を見せつけられた。
「きゃーっ、かわいいーっ」
「ちゃおっス」
綱吉といい彼女といい、どうしてリボーンばかり優遇されるのだろう。
綱吉の様子を確認すると、何故か険しい表情でリボーンを睨みつけている――彼女と仲良くするのが気に入らないのだろうか。
京子は終始綱吉に気づくことなく、リボーンと楽しそうに会話してから、にこやかに手を振って去って行った。
彼女を見送った後、リボーンは隠れていた綱吉へ意地の悪い笑みを向けた。
「マフィアモテモテ」
「んな!」
「それは宣戦布告かしら、リボーン」
「んなー!!」
「なんでお前まで怒ってんだ……」
私の怒気に綱吉は大袈裟に驚き、リボーンは呆れたように突っ込んだ。
「ツナがお前に怒るならまだ分かるが……、相変わらず鈍い女だな」
「は?」
「少しは女心を分かってやれって話だ」
女の私に対して随分と失礼な台詞だ。
それとも、彼の中では殺気を込めて睨みつけながら「は?」と凄む奴は、女として認識されないのか。
私に説明する代わりに、リボーンは綱吉に向き直ってこう言った。
「ツナ、あの女に惚れてんだろ」
「お前に関係ないだろ!?」
当然のように綱吉の心情を言い当てたことも、綱吉がそれを否定しないことも驚いた。
資料にそんなことは記載されていなかったのに、リボーンはどうやって知ったのだろう。
「オレは読心術を習得してる。読心術が使えるのにお前の気持ちに気づかなかったのは、アゲハだけだ」
「煩いわよ」
余計な一言だが、事実なので強く言い返せなかった。
一通りの手ほどきを受けたにも関わらず、最終的に「アゲハちゃんはこういう才能全くないな」と教育係に匙を投げられたほど出来が悪いことを、リボーンも把握しているのだ。
「もういいから、オレのことは放っといてくれよ!」
「嫌だ」
「いでででギブ!! ギブ!!!」
リボーンの胸倉を掴んだ腕を捻られ、綱吉は簡単に降参した。
未だにリボーンをただの赤ん坊だと思っているのか、綱吉は悔しそうに捻られた腕を擦っている。
「告白したのか?」
「するわけないだろ! 笹川京子は我が校のアイドルだよ? どーせオレなんか眼中にないよ。告白するだけ無駄だって」
「すげーな、その負け犬体質」
「放っとけよ」
軽くあしらわれても、リボーンはむしろ生き生きとしている。
やはり、ダメな生徒を教育するのがこの上なく楽しいようだ。
「やっとオレの出番だな」
そう言って懐から取り出したのは、妖しく黒光りする塊。
絶句する綱吉に、静かに“それ”を突き付けた。
「――死ね」
リボーンに銃口を向けられても、一瞬怯んだだけですぐに正気を取り戻したのは将来有望と判断できるかもしれない。
とは言え、おもちゃだろ、とあしらうその拳銃は、勿論本物である。
「いっぺん死んで来い」
取り合おうとしないリボーンに、綱吉は痺れを切らして怒鳴りつけた。
「いつまでも年上をからかうなよ! 大体殺される意味が分かんないよ!」
「死ねば分かる」
ズガンッ、と重たい銃声が町に響いた。
拳銃から放たれた弾は綱吉の額に命中し、綱吉は血を流しながら後ろに倒れ込んだ。
その様子を見た通行人の悲鳴があちこちで上がるが、私達は見向きもしない。
すると、すぐに綱吉の身体に変化が現れた。
胸の辺りが異様に膨らみ出したかと思うと、そこから額にオレンジの炎を灯した下着姿の綱吉が出てきたのだ。
その様子は、普段の彼からは想像できないほど闘志に溢れている。
これが、沢田綱吉の死ぬ気モード。
攻撃的で粗雑な死ぬ気の炎は“あの人”にはほど遠いが、ともかく成功だ。
「
綱吉は私達の視線も周囲の反応も一切気に留めず、自分が裸であることにも構わず、先ほど京子が去った方向へ走り出した。
彼の作った土埃が舞う中、リボーンは満足そうに呟いた。
「イッツ死ぬ気タイム」