標的1 夢と希望と不幸の到来
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《視点:宮野アゲハ 場所:沢田家玄関前》
沢田綱吉の家は、資料で見た通りの小さな家だ。
世情に疎い所為で知らなかったが、リボーン曰く、むしろこの程度のサイズが一般的らしい。
確かに見渡せば、周囲の家々も似たような形をしている。
ファミリーの屋敷とは比較にならないほど小規模なこの家に長期滞在すると思うと、多少不安がないでもない。
ふと視線を落とすと、スーツケース片手に楽しげな雰囲気の相棒と目が合った。
「家庭教師の仕事がそんなに楽しみなの?」
「まあな」
前に家庭教師をしていた時も、今のようにご機嫌な様子で教えていたのだろうか。
このテンションであのスパルタぶりなら、過去に教えられた生徒はかなり苦痛だっただろう。
さて、次に犠牲となる沢田綱吉はというと、今日は学校をサボって家にいるらしい。
彼が怠惰なおかげでリボーンの家庭教師スイッチが入ってしまい、予定より三時間も早く到着する羽目になったのである。
まだ会ってもいないのに恨み言をぶつけたい気分だ。
スーツのポケットを探り、日本に来る前に情報屋から受け取ったこの家の鍵を取り出した。
ちなみに、合鍵作成について、家主の許可は取っていない。
リボーンと目線で合図を交わしてから、鍵を開けた。
ドアを開けた途端、二階から二人分の会話がクリアに聞こえてきた。
ほぼ音を立てずに侵入したので、勘付かれた気配はない。
「ツーっ君、今日家庭教師の先生来るの」
ちょうど、女性の声で――きっと沢田綱吉の母親のそんな台詞が耳に入った。
私達は無言で顔を見合わせる。
彼女の言う家庭教師とは、ここにいるリボーンのことだ。
ボンゴレの工作員が、数日前に家庭教師のチラシを沢田家のポストに入れておいたのだ。
確かそこには、『お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず リボーン』と書いてあったはずだ。
リボーンが考案した謳い文句を読んだ時は正直胡散臭さを感じたのだが、実際に依頼があったということは効果のある文言なのだろう。
「きっと凄腕の青年実業家庭教師よ! 母さん、こういう先生に見てほしかったの」
期待に満ちた母親の反応には、さすがに耳を疑った。
あのチラシには催眠効果もあったのだろうか。
視界の端でドヤ顔をしているリボーンが腹立つ。
軽快に階段を上るリボーンを追い越し、声のする部屋の前へ到達した。
ドアを静かに開けると、確かに写真で見た彼がいる。
彼は私達に全く気づかずに、母親と会話を続けている。
気配を消しているとはいえ、こんなに近くにいても違和感すら抱かないとは、一体どこまで鈍いのだろう。
いくら正統な血筋のボス候補と言っても、今はただの子供ということか。
ならばより一層、こんな藁の家に等しいセキュリティレベルの家屋に置いておくのは危険すぎる。
私を護衛につける前に、まずその辺りの危機管理能力を教育すべきではないだろうか。
――そんな顔をするな。平和なのはいいことじゃないか。
――彼らの平和を守るのが、俺達の仕事だろう?
“あの人”のかつての言葉が、呪いのように脳内で反響する。
護衛を任された以上、何処でも誰でも守るのが今の私の仕事だ。
沢田綱吉をマフィアのボスにするのは、私の役割ではない。
そう心の中で割り切った後、まずは気配を消すのを止めた。
沢田綱吉の家は、資料で見た通りの小さな家だ。
世情に疎い所為で知らなかったが、リボーン曰く、むしろこの程度のサイズが一般的らしい。
確かに見渡せば、周囲の家々も似たような形をしている。
ファミリーの屋敷とは比較にならないほど小規模なこの家に長期滞在すると思うと、多少不安がないでもない。
ふと視線を落とすと、スーツケース片手に楽しげな雰囲気の相棒と目が合った。
「家庭教師の仕事がそんなに楽しみなの?」
「まあな」
前に家庭教師をしていた時も、今のようにご機嫌な様子で教えていたのだろうか。
このテンションであのスパルタぶりなら、過去に教えられた生徒はかなり苦痛だっただろう。
さて、次に犠牲となる沢田綱吉はというと、今日は学校をサボって家にいるらしい。
彼が怠惰なおかげでリボーンの家庭教師スイッチが入ってしまい、予定より三時間も早く到着する羽目になったのである。
まだ会ってもいないのに恨み言をぶつけたい気分だ。
スーツのポケットを探り、日本に来る前に情報屋から受け取ったこの家の鍵を取り出した。
ちなみに、合鍵作成について、家主の許可は取っていない。
リボーンと目線で合図を交わしてから、鍵を開けた。
ドアを開けた途端、二階から二人分の会話がクリアに聞こえてきた。
ほぼ音を立てずに侵入したので、勘付かれた気配はない。
「ツーっ君、今日家庭教師の先生来るの」
ちょうど、女性の声で――きっと沢田綱吉の母親のそんな台詞が耳に入った。
私達は無言で顔を見合わせる。
彼女の言う家庭教師とは、ここにいるリボーンのことだ。
ボンゴレの工作員が、数日前に家庭教師のチラシを沢田家のポストに入れておいたのだ。
確かそこには、『お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず リボーン』と書いてあったはずだ。
リボーンが考案した謳い文句を読んだ時は正直胡散臭さを感じたのだが、実際に依頼があったということは効果のある文言なのだろう。
「きっと凄腕の青年実業家庭教師よ! 母さん、こういう先生に見てほしかったの」
期待に満ちた母親の反応には、さすがに耳を疑った。
あのチラシには催眠効果もあったのだろうか。
視界の端でドヤ顔をしているリボーンが腹立つ。
軽快に階段を上るリボーンを追い越し、声のする部屋の前へ到達した。
ドアを静かに開けると、確かに写真で見た彼がいる。
彼は私達に全く気づかずに、母親と会話を続けている。
気配を消しているとはいえ、こんなに近くにいても違和感すら抱かないとは、一体どこまで鈍いのだろう。
いくら正統な血筋のボス候補と言っても、今はただの子供ということか。
ならばより一層、こんな藁の家に等しいセキュリティレベルの家屋に置いておくのは危険すぎる。
私を護衛につける前に、まずその辺りの危機管理能力を教育すべきではないだろうか。
――そんな顔をするな。平和なのはいいことじゃないか。
――彼らの平和を守るのが、俺達の仕事だろう?
“あの人”のかつての言葉が、呪いのように脳内で反響する。
護衛を任された以上、何処でも誰でも守るのが今の私の仕事だ。
沢田綱吉をマフィアのボスにするのは、私の役割ではない。
そう心の中で割り切った後、まずは気配を消すのを止めた。