標的18 貴方と私の決定的な差異
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ~~やっぱりダメだ~~!! 人殺しちゃったー本当に殺しちゃった~~!!!」
綱吉は頭を抱えながら泣き叫び、他三人も深刻な面持ちで俯いている。
一時は仕込みがバレるかと思われたが、シャマルのおかげで誰も死体が生きていると疑う者はいなくなった。
ただ、リボーンはこの後どのように展開させ、どうやってネタばらしするのだろう。
ふと疑問が沸いてリボーンに目線を送ると、彼は意味深な笑みを見せた。
そして、綱吉に向けてこう言った。
「こんな時のためにもう一人呼んどいたぞ」
「え?」
綱吉の声を、バイクのエンジン音が掻き消した。
バイクは沢田家の目の前で停止し、何かが壁を登ってくる音が聞こえたかと思うと、黒い影が二階の窓の外に現れた。
休日だというのにいつも通りの学ランを身に纏った、雲雀恭弥である。
雲雀は窓を開けると、やあ、と軽く挨拶して室内に踏み入った。
瞬時に、綱吉、獄寺、山本の三人の顔に緊張が走った。
私も雲雀が来るとは聞いていなかったので驚きはしたものの、珍しく闘争心が見えないのでひとまず静観する。
「今日は君達と遊ぶために来たわけじゃないんだ。赤ん坊に貸しを作りに来たんだ。ま、取り引きだね」
「待ってたぞ、ヒバリ」
雲雀とリボーンのやり取りを聞いて、ようやく彼が役者の一人なのだと悟った。
しかし、雲雀こそ、シャマル以上に何処まで事情を承服しているのか想像がつかない。
現時点で推測できるのは、六人も密集している空間で雲雀が暴れずにいることから、よほどの好条件を握らされたであろうということだ。
一体何を貸しにしたのだろう。
そして“誰が”その貸しを返すことになっているのだろう。
そう疑問に感じたのを見計らったようなタイミングで、雲雀は私に視線を寄越した。
「楽しみにしてるよ」
たった一言、それだけで、嫌でもすべてを察した。
雲雀の中で『リボーンか私に貸しを作れば、私と戦うことができる』という方程式が出来上がりつつあるのは正直好ましくない。
好ましくないのだが、リボーンは積極的に私と雲雀を関わらせようとしている節がある。
いつかうっかり殺してしまってもいいのだろうか。
そんなことを考えているうちに、雲雀は死体役のモレッティを足で転がした。
「うん、この死体は僕が処理してもいいよ」
そういう役どころか。
マフィアの工作部隊でなければあり得ないような設定だが、雲雀ならやりかねないという妙な説得力がある。
雲雀の発言に綱吉の理解が追いついていないのを見ると、リボーンが引き継いで答えた。
「死体を見つからないように消して、殺し自体を無かったことにしてくれるんだぞ」
「いろんな意味でマズいよそれは!! アゲハじゃないんだから!!」
後半に余計な一言が聞こえた。
苦心して慰めようとした気持ちをなんだと思っている。
「絢芽 にも声掛けたんだが、『主様の命令じゃないなら動く義理はねぇ』って断られたからな」
「ほんとに呼ぼうとしたの!?」
「どういうことよ、その反応」
絢芽の名前が出たことよりも綱吉のリアクションが気になったので訊いてみると、私が『死体はすぐに始末させる』と発言した時に、絢芽の顔が反射的に浮かんだらしい。
つくづく綱吉に変なイメージを与えてしまったと自覚した。
「じゃあ、あとで風紀委員の人間よこすよ」
「委員会で殺しもみ消してんの~~!!?」
逆に雲雀は、自分(と風紀委員)に特殊なイメージがつくことを全く厭わないようだ。
この芝居に乗り気な分、それだけ“貸し”が大きくなるのが恐ろしい。
そして、雲雀はまたね、と言い残して、来た時と同様に窓から帰っていったのだが、それを黙っていなかったのが獄寺だ。
「十代目!! どいてください!! あいつだけはやり返さねーと気が済まねぇ!!」
獄寺はそう叫ぶと、手持ちのダイナマイトに火を点け、窓の外に投げつけた。
しかし、すぐにダイナマイトが地上から跳ね返ってきて、獄寺の表情が硬直した。
私のいる位置からは目視できなかったものの、恐らく雲雀のトンファーによって弾き返されたのだろう。
敵の投擲物を利用して反撃するのは私もよくやる手なのだが、獄寺にとっては予想外だったらしい。
次からはその辺りを対策した上で攻撃してほしい――と思いながら、立ち尽くす獄寺と綱吉を押し退けた。
室内に到達する前に爆発しそうだったので、回し蹴りによる風圧を起こし、すべてのダイナマイトを塵にした。
ついでに窓ガラスが粉砕し、部屋の家具がいくつか吹っ飛んだが、爆発よりは被害は小さく済んだだろう。
本当なら再び雲雀にダイナマイトを投げ返してやっても良かったのだが、開戦の狼煙だと解釈されたらより面倒だ。
家の外を見ると、ちょうどこちらの様子を伺っていた雲雀と目が合った。
彼は私が爆発物をすべて処理したことを知ると、ぞっとするような眼光で破顔した。
「またね」
先ほどと同じ台詞。
けれどずっと耳に残るような、嫌な重みを持っていた。
綱吉は頭を抱えながら泣き叫び、他三人も深刻な面持ちで俯いている。
一時は仕込みがバレるかと思われたが、シャマルのおかげで誰も死体が生きていると疑う者はいなくなった。
ただ、リボーンはこの後どのように展開させ、どうやってネタばらしするのだろう。
ふと疑問が沸いてリボーンに目線を送ると、彼は意味深な笑みを見せた。
そして、綱吉に向けてこう言った。
「こんな時のためにもう一人呼んどいたぞ」
「え?」
綱吉の声を、バイクのエンジン音が掻き消した。
バイクは沢田家の目の前で停止し、何かが壁を登ってくる音が聞こえたかと思うと、黒い影が二階の窓の外に現れた。
休日だというのにいつも通りの学ランを身に纏った、雲雀恭弥である。
雲雀は窓を開けると、やあ、と軽く挨拶して室内に踏み入った。
瞬時に、綱吉、獄寺、山本の三人の顔に緊張が走った。
私も雲雀が来るとは聞いていなかったので驚きはしたものの、珍しく闘争心が見えないのでひとまず静観する。
「今日は君達と遊ぶために来たわけじゃないんだ。赤ん坊に貸しを作りに来たんだ。ま、取り引きだね」
「待ってたぞ、ヒバリ」
雲雀とリボーンのやり取りを聞いて、ようやく彼が役者の一人なのだと悟った。
しかし、雲雀こそ、シャマル以上に何処まで事情を承服しているのか想像がつかない。
現時点で推測できるのは、六人も密集している空間で雲雀が暴れずにいることから、よほどの好条件を握らされたであろうということだ。
一体何を貸しにしたのだろう。
そして“誰が”その貸しを返すことになっているのだろう。
そう疑問に感じたのを見計らったようなタイミングで、雲雀は私に視線を寄越した。
「楽しみにしてるよ」
たった一言、それだけで、嫌でもすべてを察した。
雲雀の中で『リボーンか私に貸しを作れば、私と戦うことができる』という方程式が出来上がりつつあるのは正直好ましくない。
好ましくないのだが、リボーンは積極的に私と雲雀を関わらせようとしている節がある。
いつかうっかり殺してしまってもいいのだろうか。
そんなことを考えているうちに、雲雀は死体役のモレッティを足で転がした。
「うん、この死体は僕が処理してもいいよ」
そういう役どころか。
マフィアの工作部隊でなければあり得ないような設定だが、雲雀ならやりかねないという妙な説得力がある。
雲雀の発言に綱吉の理解が追いついていないのを見ると、リボーンが引き継いで答えた。
「死体を見つからないように消して、殺し自体を無かったことにしてくれるんだぞ」
「いろんな意味でマズいよそれは!! アゲハじゃないんだから!!」
後半に余計な一言が聞こえた。
苦心して慰めようとした気持ちをなんだと思っている。
「
「ほんとに呼ぼうとしたの!?」
「どういうことよ、その反応」
絢芽の名前が出たことよりも綱吉のリアクションが気になったので訊いてみると、私が『死体はすぐに始末させる』と発言した時に、絢芽の顔が反射的に浮かんだらしい。
つくづく綱吉に変なイメージを与えてしまったと自覚した。
「じゃあ、あとで風紀委員の人間よこすよ」
「委員会で殺しもみ消してんの~~!!?」
逆に雲雀は、自分(と風紀委員)に特殊なイメージがつくことを全く厭わないようだ。
この芝居に乗り気な分、それだけ“貸し”が大きくなるのが恐ろしい。
そして、雲雀はまたね、と言い残して、来た時と同様に窓から帰っていったのだが、それを黙っていなかったのが獄寺だ。
「十代目!! どいてください!! あいつだけはやり返さねーと気が済まねぇ!!」
獄寺はそう叫ぶと、手持ちのダイナマイトに火を点け、窓の外に投げつけた。
しかし、すぐにダイナマイトが地上から跳ね返ってきて、獄寺の表情が硬直した。
私のいる位置からは目視できなかったものの、恐らく雲雀のトンファーによって弾き返されたのだろう。
敵の投擲物を利用して反撃するのは私もよくやる手なのだが、獄寺にとっては予想外だったらしい。
次からはその辺りを対策した上で攻撃してほしい――と思いながら、立ち尽くす獄寺と綱吉を押し退けた。
室内に到達する前に爆発しそうだったので、回し蹴りによる風圧を起こし、すべてのダイナマイトを塵にした。
ついでに窓ガラスが粉砕し、部屋の家具がいくつか吹っ飛んだが、爆発よりは被害は小さく済んだだろう。
本当なら再び雲雀にダイナマイトを投げ返してやっても良かったのだが、開戦の狼煙だと解釈されたらより面倒だ。
家の外を見ると、ちょうどこちらの様子を伺っていた雲雀と目が合った。
彼は私が爆発物をすべて処理したことを知ると、ぞっとするような眼光で破顔した。
「またね」
先ほどと同じ台詞。
けれどずっと耳に残るような、嫌な重みを持っていた。