標的16 的外れな妄信、あるいは至極当然な反応
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《視点:宮野アゲハ 場所:並盛中学校1年A組教室》
リボーンの企みの一端を見た翌日の昼休み、京子や花と談笑しながら、ママン特製の弁当に舌鼓を打っていた。
ちなみに、普段は綱吉と行動を共にすることが多いのだが、昼食の時間だけは別行動だ。
だがこれには特に深い思惑があるわけではなく、毎回彼女達に誘われているからという単純で女子中学生らしい理由である。
そして、綱吉、獄寺、山本の三人は、現在屋上にいるらしい。
九月に入って比較的過ごしやすい気候になったので、最近は屋上で昼食をとることが多いようだ。
しかし今日に限っては、昼休みを半分以上残した時刻に、綱吉が教室に戻って来たのだった。
「何かあったの?」
綱吉が私達の机の傍を通りかかったので、たまらず彼に声を掛けた。
ついでに一瞥すると、廊下で獄寺と山本が待機しているのが見えたが、どちらも纏う雰囲気に深刻さはない。
「いや、何かあったわけじゃないんだけど」
綱吉は京子や花に聞こえないように配慮して、私の耳元に顔を寄せて囁いた。
「これから、ファミリーのアジト? を作るらしいんだけど、アゲハも行くか? リボーンがお前も誘えって言ってるんだけど」
「アジト……? 学校に作るの?」
昼休みという時間の制限を考慮してそう問うと、綱吉は戸惑いながらも頷いた。
ただし、説明する本人も頭上に疑問符を浮かべている。
もう一度だけ、悟られないように廊下へ視線を送った。
「……それで、何処へ行くの?」
「えっと……、確か、応接室だって」
「………」
何故。
何故、昨日の今日でその単語が出てくる。
――雲雀恭弥。面白ぇーな。
「リボーンが提案したの?」
「ああ。なんかそこが立地条件がいいんだってさ。ほとんど使われてないらしいし」
「……リボーンがそう言ったの?」
「そうだけど」
なるほど、思いついたら即実行する決断力と多少の無茶を厭わない行動力は相変わらずだ。
そして相変わらず、私への報連相が欠落している。
私を誘うように口添えしただけで、最低限の義務は果たしたと考えていそうだ。
それはさておき、リボーンは偶然を装って綱吉達と雲雀を引き合わせようという算段なのだと思われる。
それだけ雲雀の実力を買っているというのは理解できるが――果たして大丈夫だろうか?
昨日三人で『群れている』と判断されたのだから、綱吉達と私とリボーンの合わせて五人は絶対に多すぎる。
昨日の疑問が思わぬ形で解消されそうだが、十中八九愉快な結果にはならないだろう。
「……もしかして、なんかマズいのか?」
無言でいると、綱吉は何か良からぬ気配を感じ取ったのか、不安げに声を潜めて訊いてきた。
私の煮え切らない反応も一因かもしれないが、リボーンの提案というだけで疑心暗鬼になっている節がある。
可哀想に、既に大分苦労させられている。
私と同じだ。
「大丈夫よ。私も行くから」
「アゲハちゃん?」
綱吉に返事して腰を上げようとしたところで、京子の困惑した声に呼び止められ我に返った。
忘れていたが、そういえば今は食事中だった。
中途半端な体勢のままどうしようか迷っていると、花がこちらに向けて手で払うような仕草をした。
「あーいいよ、いいよ。行ってきな」
「花……」
「なんかよくわかんないけど、たまにはいいんじゃない? 弁当なんていつでも食べられるんだしさ。ね、京子」
そう言ってから、京子に視線を送った。
同意を求められた京子は暫く逡巡していたが、最終的には笑顔を見せてくれた。
「そうだね。行ってらっしゃい、アゲハちゃん」
Dr.シャマルが私に友人がいることに驚いていたが、それは一重に彼女達の人柄のおかげに他ならない。
こんな風に、事情も訊かずに送り出してくれるような類の友人もいるのかと、私でも驚いているくらいだ。
「――ええ。行ってきます」
謝罪の代わりに二人にそう告げて、今度こそ立ち上がった。
リボーンの企みの一端を見た翌日の昼休み、京子や花と談笑しながら、ママン特製の弁当に舌鼓を打っていた。
ちなみに、普段は綱吉と行動を共にすることが多いのだが、昼食の時間だけは別行動だ。
だがこれには特に深い思惑があるわけではなく、毎回彼女達に誘われているからという単純で女子中学生らしい理由である。
そして、綱吉、獄寺、山本の三人は、現在屋上にいるらしい。
九月に入って比較的過ごしやすい気候になったので、最近は屋上で昼食をとることが多いようだ。
しかし今日に限っては、昼休みを半分以上残した時刻に、綱吉が教室に戻って来たのだった。
「何かあったの?」
綱吉が私達の机の傍を通りかかったので、たまらず彼に声を掛けた。
ついでに一瞥すると、廊下で獄寺と山本が待機しているのが見えたが、どちらも纏う雰囲気に深刻さはない。
「いや、何かあったわけじゃないんだけど」
綱吉は京子や花に聞こえないように配慮して、私の耳元に顔を寄せて囁いた。
「これから、ファミリーのアジト? を作るらしいんだけど、アゲハも行くか? リボーンがお前も誘えって言ってるんだけど」
「アジト……? 学校に作るの?」
昼休みという時間の制限を考慮してそう問うと、綱吉は戸惑いながらも頷いた。
ただし、説明する本人も頭上に疑問符を浮かべている。
もう一度だけ、悟られないように廊下へ視線を送った。
「……それで、何処へ行くの?」
「えっと……、確か、応接室だって」
「………」
何故。
何故、昨日の今日でその単語が出てくる。
――雲雀恭弥。面白ぇーな。
「リボーンが提案したの?」
「ああ。なんかそこが立地条件がいいんだってさ。ほとんど使われてないらしいし」
「……リボーンがそう言ったの?」
「そうだけど」
なるほど、思いついたら即実行する決断力と多少の無茶を厭わない行動力は相変わらずだ。
そして相変わらず、私への報連相が欠落している。
私を誘うように口添えしただけで、最低限の義務は果たしたと考えていそうだ。
それはさておき、リボーンは偶然を装って綱吉達と雲雀を引き合わせようという算段なのだと思われる。
それだけ雲雀の実力を買っているというのは理解できるが――果たして大丈夫だろうか?
昨日三人で『群れている』と判断されたのだから、綱吉達と私とリボーンの合わせて五人は絶対に多すぎる。
昨日の疑問が思わぬ形で解消されそうだが、十中八九愉快な結果にはならないだろう。
「……もしかして、なんかマズいのか?」
無言でいると、綱吉は何か良からぬ気配を感じ取ったのか、不安げに声を潜めて訊いてきた。
私の煮え切らない反応も一因かもしれないが、リボーンの提案というだけで疑心暗鬼になっている節がある。
可哀想に、既に大分苦労させられている。
私と同じだ。
「大丈夫よ。私も行くから」
「アゲハちゃん?」
綱吉に返事して腰を上げようとしたところで、京子の困惑した声に呼び止められ我に返った。
忘れていたが、そういえば今は食事中だった。
中途半端な体勢のままどうしようか迷っていると、花がこちらに向けて手で払うような仕草をした。
「あーいいよ、いいよ。行ってきな」
「花……」
「なんかよくわかんないけど、たまにはいいんじゃない? 弁当なんていつでも食べられるんだしさ。ね、京子」
そう言ってから、京子に視線を送った。
同意を求められた京子は暫く逡巡していたが、最終的には笑顔を見せてくれた。
「そうだね。行ってらっしゃい、アゲハちゃん」
Dr.シャマルが私に友人がいることに驚いていたが、それは一重に彼女達の人柄のおかげに他ならない。
こんな風に、事情も訊かずに送り出してくれるような類の友人もいるのかと、私でも驚いているくらいだ。
「――ええ。行ってきます」
謝罪の代わりに二人にそう告げて、今度こそ立ち上がった。