標的15 死線をみた日
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《視点:沢田綱吉 場所:同綱吉の自室》
シャマルの指示に従ってアゲハが出て行き、京子ちゃんにも帰ってもらってから、俺の治療が開始された。
既に俺の余命は二分もないはずだが、Dr.シャマルは慌てている素振りもない。
「そこでじっとしていればいい」
「あの……本当に不治の病を治せるんですか?」
この人が医者だというのも未だに信じがたいし、訳の分からない病気が治せるというのも信じられない。
そもそも、治らないからこそ、不治の病というのではないのか。
「オレは生まれつき菌やウイルスが吸着しやすい体質でな、現在666の不治の病にかかっている」
「はあ!!?」
ドクター曰く、ペアとなる病気同士が互いの症状を打ち消しているため、本人には一切の害がないのだそうだ。
つまり、俺にもドクロ病の対となる病気(エンジェル病というそうだ)を移すことで相殺しようとするらしい。
そう説明しながらカプセルを指で弾くと、中から一匹の蚊が飛び出した。
「シャマルは普段は医者だが、“トライデント・シャマル”っていう殺し屋でもある」
蚊が俺の周りを飛び回るのを眺めていると、リボーンがそう解説した。
この蚊に自分の中の病気を媒介させ、蚊を操り敵を病死させる“三又矛の蚊 ”という技を使う殺し屋だそうだ――恐ろしすぎる。
医者と殺し屋って、兼業していいのか?
そんな疑問をよそに、エンジェル病の病原菌をもつ蚊が、俺の腕に止まって吸血した。
「これで病気は相殺されたはずだぜ」
「文字が消えていく……」
シャマルの診断を裏付けるように、身体中のドクロがみるみる薄くなっていき、跡形もなく消えた。
完治した――助かったのだ。
「でも、どーして急に治療してくれる気になったんですか?」
病魔が去った気の緩みからか、颯爽と部屋を出て行こうとするDr.シャマルの背中にそう質問を投げかけていた。
シャマルが振り返る。
何気なく訊いただけだったけど、返ってきたのは、予想外の回答だった。
「お前、アゲハちゃんと話すまで女子と会話したことなかったんだってな。悲惨すぎる」
「ほっといて下さい!!」
まさかの同情だった。
さっきシャツを脱いだ時に、背中の秘密に書いてあったのを読んだらしい。
自分のダメっぷりで命が救われるなんて、素直に喜べない――内容も恥ずかしいし。
今まであまり意識したことがなかったけど、あの娘 がドラマチックに俺の前に現れた“あれ”が、女子との最初の会話だったのか。
……なんだかなあ。
地球上に溢れるほど女子がいて、最初がアゲハって……。
「……いや、でも考えようによっては、最初に話した女子がアゲハちゃんってかなり貴重で恵まれたことかもな。これまでの人生をアゲハちゃんと話す一瞬のために捧げるとは、大した男だ」
「捧げてないです!」
「……へえ。珍しい奴もいたもんだ」
なるほどなあ、と神妙に呟かれた。
何故そこで感心されるのか分からない。
神様でもない、ただの女子中学生なのに。
――主様と言えば、世界の主たるお方に決まっている。
「あの……、彼我野絢芽って知ってますか?」
一時間前の邂逅を唐突に思い出し、この人がアゲハの知り合いならばと訊いてみることにした。
それこそ、ただの気まぐれ、物のついでの質問だったが、返答はまたしても予想を超えたものだった。
「ああ。ボンゴレ工作部隊のホープだろう? あれこそ、アゲハちゃんに人生を捧げた典型だよな」
Dr.シャマルの口調は、彼女の態度を呆れつつも仕方ないと諦めているようだった。
思わずリボーンに目を向けてみても、シャマルの評価に特に異論はない様子で、そこで強烈な違和感を覚えた。
――あれが、普通?
同年代の女の子を神と崇めるのが?
「あとは、まあ、アゲハちゃんに頼まれちゃったからな」
シャマルが付け加えた言葉の意味が一瞬分からなかったが、一呼吸おいてそれが一つ前の質問の答えだと気づいた。
――どうして急に治療してくれる気になったのか?
「え? アゲハに? でも、あいつは今日……」
「アゲハちゃんはお前に知られるのを嫌がるだろうけど、女が自分のために尽くしてくれるのを、男はちゃんと分かっててやるもんだぜ」
そして、俺は聞かされる。
俺の命がどんな風に守られているのかを。
宮野アゲハの、隠された尽力を。
シャマルの指示に従ってアゲハが出て行き、京子ちゃんにも帰ってもらってから、俺の治療が開始された。
既に俺の余命は二分もないはずだが、Dr.シャマルは慌てている素振りもない。
「そこでじっとしていればいい」
「あの……本当に不治の病を治せるんですか?」
この人が医者だというのも未だに信じがたいし、訳の分からない病気が治せるというのも信じられない。
そもそも、治らないからこそ、不治の病というのではないのか。
「オレは生まれつき菌やウイルスが吸着しやすい体質でな、現在666の不治の病にかかっている」
「はあ!!?」
ドクター曰く、ペアとなる病気同士が互いの症状を打ち消しているため、本人には一切の害がないのだそうだ。
つまり、俺にもドクロ病の対となる病気(エンジェル病というそうだ)を移すことで相殺しようとするらしい。
そう説明しながらカプセルを指で弾くと、中から一匹の蚊が飛び出した。
「シャマルは普段は医者だが、“トライデント・シャマル”っていう殺し屋でもある」
蚊が俺の周りを飛び回るのを眺めていると、リボーンがそう解説した。
この蚊に自分の中の病気を媒介させ、蚊を操り敵を病死させる“
医者と殺し屋って、兼業していいのか?
そんな疑問をよそに、エンジェル病の病原菌をもつ蚊が、俺の腕に止まって吸血した。
「これで病気は相殺されたはずだぜ」
「文字が消えていく……」
シャマルの診断を裏付けるように、身体中のドクロがみるみる薄くなっていき、跡形もなく消えた。
完治した――助かったのだ。
「でも、どーして急に治療してくれる気になったんですか?」
病魔が去った気の緩みからか、颯爽と部屋を出て行こうとするDr.シャマルの背中にそう質問を投げかけていた。
シャマルが振り返る。
何気なく訊いただけだったけど、返ってきたのは、予想外の回答だった。
「お前、アゲハちゃんと話すまで女子と会話したことなかったんだってな。悲惨すぎる」
「ほっといて下さい!!」
まさかの同情だった。
さっきシャツを脱いだ時に、背中の秘密に書いてあったのを読んだらしい。
自分のダメっぷりで命が救われるなんて、素直に喜べない――内容も恥ずかしいし。
今まであまり意識したことがなかったけど、あの
……なんだかなあ。
地球上に溢れるほど女子がいて、最初がアゲハって……。
「……いや、でも考えようによっては、最初に話した女子がアゲハちゃんってかなり貴重で恵まれたことかもな。これまでの人生をアゲハちゃんと話す一瞬のために捧げるとは、大した男だ」
「捧げてないです!」
「……へえ。珍しい奴もいたもんだ」
なるほどなあ、と神妙に呟かれた。
何故そこで感心されるのか分からない。
神様でもない、ただの女子中学生なのに。
――主様と言えば、世界の主たるお方に決まっている。
「あの……、彼我野絢芽って知ってますか?」
一時間前の邂逅を唐突に思い出し、この人がアゲハの知り合いならばと訊いてみることにした。
それこそ、ただの気まぐれ、物のついでの質問だったが、返答はまたしても予想を超えたものだった。
「ああ。ボンゴレ工作部隊のホープだろう? あれこそ、アゲハちゃんに人生を捧げた典型だよな」
Dr.シャマルの口調は、彼女の態度を呆れつつも仕方ないと諦めているようだった。
思わずリボーンに目を向けてみても、シャマルの評価に特に異論はない様子で、そこで強烈な違和感を覚えた。
――あれが、普通?
同年代の女の子を神と崇めるのが?
「あとは、まあ、アゲハちゃんに頼まれちゃったからな」
シャマルが付け加えた言葉の意味が一瞬分からなかったが、一呼吸おいてそれが一つ前の質問の答えだと気づいた。
――どうして急に治療してくれる気になったのか?
「え? アゲハに? でも、あいつは今日……」
「アゲハちゃんはお前に知られるのを嫌がるだろうけど、女が自分のために尽くしてくれるのを、男はちゃんと分かっててやるもんだぜ」
そして、俺は聞かされる。
俺の命がどんな風に守られているのかを。
宮野アゲハの、隠された尽力を。