標的14 Death or Piece(不幸か平和か)
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《視点:宮野アゲハ 場所:同部室棟ボクシング部部室前》
放課後、笹川了平が勝手に取り付けた約束通り、私と綱吉は指定されたジムへと足を運んだ。
綱吉の顔色はすこぶる悪い。
「やっぱり無理だよ……ボクシングなんて」
「だったら素直に断ればいいじゃない」
「でも京子ちゃんのお兄さんに嫌われたくないし……。どーやって断ろう……」
あの京子が、身内に何か言われたくらいで綱吉の評価を変えるとは思えないが、面倒臭いので黙殺した。
とうとう頭を抱え出した綱吉を尻目に、部室内の気配を探って中の様子を確認する。
――なるほど、確かに簡単に断らせてはくれなさそうだ。
密かに覚悟を決めたところで、内側から引き戸が開き、了平が顔を見せた。
「おお、沢田、宮野、待ってたぞ!」
綱吉が入部を断ろうと話を持ち出す前に、了平は部室に引っ込んでしまった。
そして導かれるままに、私達は部室へと足を踏み入れる。
室内はそう広くない。
部屋の中央にリングが陣取っているため、余計にそう感じるのかもしれない。
了平の他に部員らしき人物が数名、それぞれ練習に取り組んでいる。
そんな練習風景に不似合いなのが、彼らの邪魔にならないよう壁際に立っている制服姿の獄寺、山本、京子の三人と、リングのコーナーポストの上に乗り、何故か象を模した被り物とボクシンググローブをつけたリボーンである。
三人はともかく、リボーンがこの場にいるということは、今回の件を存分にひっかき回すつもりなのだろう。
いざとなったら、綱吉に巻き込まれて私まで入部させられる羽目にならないよう暗躍しなければならなくなるかもしれない。
「お前達の評判を聞きつけて、タイからムエタイの長老まで駆けつけているぞ――パオパオ老師だ」
了平が示した先にいるのは、言わずもがなリボーンである。
色々言いたいことはあるが、とりあえず設定に無理があることを指摘したい。
あんな素顔のコスプレで、近しい人間でも正体がバレないのが常日頃から不思議でならなかったが、綱吉は初見で正体に気づいたようだ。
ボンゴレの血筋の所為かもしれないが、私が気づくならそれはあまり関係ないのだろう。
唖然とする綱吉と呆れかえる私の前で、リボーンは素知らぬ顔で「パオーン!!」と遠吠えてから、
「オレは新入部員と主将のガチンコ勝負が見たいぞ」
と言ったのだった。
「んな! 何言ってんだよ! お前、オレにボクシングやらす気か!?」
「当たり前だ。ちったー強くなりやがれ」
二人の会話に耳を傾けながら、ひとまず安堵した。
リボーンが『新入部員』と曖昧な表現をしたので、私に飛び火しないか冷や冷やしたが、綱吉の応酬のおかげで私からうまく意識が逸れた。
そして、そのまま気配を消しながら、静観する京子達にうまく交ざり込むことにも成功した。
京子の隣に立つのを見送って、山本が質問を投げかけた。
「アゲハもボクシング部に入るのか?」
「入らないわよ。今日はツナについて来ただけだから」
どうせ彼らもリボーンに唆されてこの場にいるのだろうが、本当に私がボクシングをやるように見えるのか。
批判も込めて睨みつけると、山本は「ふーん……」と言って目線を僅かに逸らした後、爽やかに微笑んだ。
「じゃあ、野球部に入らねーか?」
「入らない」
何故野球部ならいいと思ったんだ。
ボクシングよりは他人に怪我をさせる危険性が少ないかもしれないが……。
「アゲハが部活動なんて無理だろ。道具とかぶっ壊しそうじゃねーか」
「貴方に言われたくないわよ、獄寺」
「そうか? いいと思ったんだけどなー」
「アゲハちゃんは何でも似合うと思うよ」
観客が盛り上がっているうちに、向こうで話がまとまったようだ。
よく通る了平の声に、会話を止めて注目した。
「うむ。オレとのスパーリングは、沢田の実力を計るいい方法かもしれない」
青ざめる綱吉の横でリボーンがほくそ笑むのを見て、彼の意図をなんとなく察した。
綱吉の成長も勿論そうだが、きっとリボーンは、笹川了平という男にも注目しているのだろう。
放課後、笹川了平が勝手に取り付けた約束通り、私と綱吉は指定されたジムへと足を運んだ。
綱吉の顔色はすこぶる悪い。
「やっぱり無理だよ……ボクシングなんて」
「だったら素直に断ればいいじゃない」
「でも京子ちゃんのお兄さんに嫌われたくないし……。どーやって断ろう……」
あの京子が、身内に何か言われたくらいで綱吉の評価を変えるとは思えないが、面倒臭いので黙殺した。
とうとう頭を抱え出した綱吉を尻目に、部室内の気配を探って中の様子を確認する。
――なるほど、確かに簡単に断らせてはくれなさそうだ。
密かに覚悟を決めたところで、内側から引き戸が開き、了平が顔を見せた。
「おお、沢田、宮野、待ってたぞ!」
綱吉が入部を断ろうと話を持ち出す前に、了平は部室に引っ込んでしまった。
そして導かれるままに、私達は部室へと足を踏み入れる。
室内はそう広くない。
部屋の中央にリングが陣取っているため、余計にそう感じるのかもしれない。
了平の他に部員らしき人物が数名、それぞれ練習に取り組んでいる。
そんな練習風景に不似合いなのが、彼らの邪魔にならないよう壁際に立っている制服姿の獄寺、山本、京子の三人と、リングのコーナーポストの上に乗り、何故か象を模した被り物とボクシンググローブをつけたリボーンである。
三人はともかく、リボーンがこの場にいるということは、今回の件を存分にひっかき回すつもりなのだろう。
いざとなったら、綱吉に巻き込まれて私まで入部させられる羽目にならないよう暗躍しなければならなくなるかもしれない。
「お前達の評判を聞きつけて、タイからムエタイの長老まで駆けつけているぞ――パオパオ老師だ」
了平が示した先にいるのは、言わずもがなリボーンである。
色々言いたいことはあるが、とりあえず設定に無理があることを指摘したい。
あんな素顔のコスプレで、近しい人間でも正体がバレないのが常日頃から不思議でならなかったが、綱吉は初見で正体に気づいたようだ。
ボンゴレの血筋の所為かもしれないが、私が気づくならそれはあまり関係ないのだろう。
唖然とする綱吉と呆れかえる私の前で、リボーンは素知らぬ顔で「パオーン!!」と遠吠えてから、
「オレは新入部員と主将のガチンコ勝負が見たいぞ」
と言ったのだった。
「んな! 何言ってんだよ! お前、オレにボクシングやらす気か!?」
「当たり前だ。ちったー強くなりやがれ」
二人の会話に耳を傾けながら、ひとまず安堵した。
リボーンが『新入部員』と曖昧な表現をしたので、私に飛び火しないか冷や冷やしたが、綱吉の応酬のおかげで私からうまく意識が逸れた。
そして、そのまま気配を消しながら、静観する京子達にうまく交ざり込むことにも成功した。
京子の隣に立つのを見送って、山本が質問を投げかけた。
「アゲハもボクシング部に入るのか?」
「入らないわよ。今日はツナについて来ただけだから」
どうせ彼らもリボーンに唆されてこの場にいるのだろうが、本当に私がボクシングをやるように見えるのか。
批判も込めて睨みつけると、山本は「ふーん……」と言って目線を僅かに逸らした後、爽やかに微笑んだ。
「じゃあ、野球部に入らねーか?」
「入らない」
何故野球部ならいいと思ったんだ。
ボクシングよりは他人に怪我をさせる危険性が少ないかもしれないが……。
「アゲハが部活動なんて無理だろ。道具とかぶっ壊しそうじゃねーか」
「貴方に言われたくないわよ、獄寺」
「そうか? いいと思ったんだけどなー」
「アゲハちゃんは何でも似合うと思うよ」
観客が盛り上がっているうちに、向こうで話がまとまったようだ。
よく通る了平の声に、会話を止めて注目した。
「うむ。オレとのスパーリングは、沢田の実力を計るいい方法かもしれない」
青ざめる綱吉の横でリボーンがほくそ笑むのを見て、彼の意図をなんとなく察した。
綱吉の成長も勿論そうだが、きっとリボーンは、笹川了平という男にも注目しているのだろう。