標的14 Death or Piece(不幸か平和か)
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《視点:彼我野 絢芽 》
自分が地獄で生まれた経緯は覚えていないが、地獄から解放された日のことは今でも忘れられない。
暗い檻の中で、仲間のはずの大人達に実験 される日々は、地獄としか形容しようがなかった。
同じ檻にいた少年は、虚ろな瞳で私にこう言ったことがある。
「この世に神様なんていない」
それが彼の口癖だった。
他の子供達も、同じような暗い目でこの世界を恨んでいた。
そんな彼らに対して、私は励ますように声を掛け続けたのだった。
「大丈夫。神様はいる。きっと、私達を助けてくれる」
根拠のないただの妄言だ。
当然、そんな浅い言葉で皆の顔が明るくなることはなかった。
何より私自身が助かることをほとんど諦めていたし、一生このままなのだろうと何処かで理解していた。
けれど、心の奥底で、いつか誰かがこの地獄から救い出してくれる日が来るのではないかと、馬鹿みたいな妄想をしていたのも事実である。
そんな夢物語が現実になったのは、地獄に生を受けた七年後のことだった。
ある日突然、実験場に目を疑うほど美しい同年代程度の少女が降臨したのだ。
欲に塗れた醜い大人達と生気を失った哀れな仲間達しか知らなかった私は、外の世界にこんなに美しい人が存在するなんて思ってもいなかったが、そんな無知な私でも、一目で“これ”が私の信じ続けた神様の姿なのだと理解できた。
そして、かの人――宮野アゲハ様がものの数分で私のいたファミリーを壊滅させ、私は晴れて地獄から解放されたのだった。
馬鹿みたいな妄想が、夢みたいな夢物語が、実現した瞬間だった。
けれど、地獄を生き抜くのに、七年はあまりに長すぎたのだ。
他の仲間は過酷な実験についていけずに次々と命を落としていき、アゲハ様――主様がいらっしゃった時、被検体は私しか生き残っていなかった。
大人達は主様に殺された。
子供達も亡くなった。
そして、私だけが残った。
そう、たった一人神様を信じていた、私だけが生き残ったのだ。
後で知ったことだが、私を実験していたファミリーは、ボンゴレファミリーの治める領地で人体実験や違法取引などを好き勝手やっていたために目をつけられたらしい。
そして、それを迅速に制圧するため、主様が現場に遣わされたのだそうだ。
ただし、五年前の時点で、主様は反則級のお力の所為で本部から前線に立つことを制限されていたらしい――つまり、“あれ”は異例中の異例だったのだ。
そんな貴重な機会に、私の生きている間に、私のいたファミリーが選ばれたのは、きっと偶然ではないはずだ。
もし理由があるとするなら、それは、私が神を信じ、運命を信じ、救いを信じていたからだ。
それしかない。
あの時の私には、それしかなかったのだから。
信じる者は救われる。
きっと、そういうことなのだ。
この世界は、敬虔な信者のみが生き残るようにできている。
ならば、生き残った私のやることは明白だ。
地獄から救って下さった神様をこれまで通り――否、これまで以上に信じ続ければいいのだ。
そうすれば、今後も救われるに違いない。
しかも、今度はより簡単で明確だ。
目に見えない架空の存在ではなく、ここにいらっしゃる、主様を信じればいいのだから。
主様を信じ、主様のためになることをすればいいのだから。
私の考え方はきっと正しい。
だからこそ、地獄から解放されて五年間、二度とあの場所に堕ちることなく、神の恩寵を授かる毎日を送ることができている。
これが正しい生き方なのだと、世界から、神様から、肯定されている――私がこうして生きていることが、何よりの証明だ。
だから、主様が唯一絶対でなければならないと信じるこの気持ちも、きっと正しいのだ。
自分が地獄で生まれた経緯は覚えていないが、地獄から解放された日のことは今でも忘れられない。
暗い檻の中で、仲間のはずの大人達に
同じ檻にいた少年は、虚ろな瞳で私にこう言ったことがある。
「この世に神様なんていない」
それが彼の口癖だった。
他の子供達も、同じような暗い目でこの世界を恨んでいた。
そんな彼らに対して、私は励ますように声を掛け続けたのだった。
「大丈夫。神様はいる。きっと、私達を助けてくれる」
根拠のないただの妄言だ。
当然、そんな浅い言葉で皆の顔が明るくなることはなかった。
何より私自身が助かることをほとんど諦めていたし、一生このままなのだろうと何処かで理解していた。
けれど、心の奥底で、いつか誰かがこの地獄から救い出してくれる日が来るのではないかと、馬鹿みたいな妄想をしていたのも事実である。
そんな夢物語が現実になったのは、地獄に生を受けた七年後のことだった。
ある日突然、実験場に目を疑うほど美しい同年代程度の少女が降臨したのだ。
欲に塗れた醜い大人達と生気を失った哀れな仲間達しか知らなかった私は、外の世界にこんなに美しい人が存在するなんて思ってもいなかったが、そんな無知な私でも、一目で“これ”が私の信じ続けた神様の姿なのだと理解できた。
そして、かの人――宮野アゲハ様がものの数分で私のいたファミリーを壊滅させ、私は晴れて地獄から解放されたのだった。
馬鹿みたいな妄想が、夢みたいな夢物語が、実現した瞬間だった。
けれど、地獄を生き抜くのに、七年はあまりに長すぎたのだ。
他の仲間は過酷な実験についていけずに次々と命を落としていき、アゲハ様――主様がいらっしゃった時、被検体は私しか生き残っていなかった。
大人達は主様に殺された。
子供達も亡くなった。
そして、私だけが残った。
そう、たった一人神様を信じていた、私だけが生き残ったのだ。
後で知ったことだが、私を実験していたファミリーは、ボンゴレファミリーの治める領地で人体実験や違法取引などを好き勝手やっていたために目をつけられたらしい。
そして、それを迅速に制圧するため、主様が現場に遣わされたのだそうだ。
ただし、五年前の時点で、主様は反則級のお力の所為で本部から前線に立つことを制限されていたらしい――つまり、“あれ”は異例中の異例だったのだ。
そんな貴重な機会に、私の生きている間に、私のいたファミリーが選ばれたのは、きっと偶然ではないはずだ。
もし理由があるとするなら、それは、私が神を信じ、運命を信じ、救いを信じていたからだ。
それしかない。
あの時の私には、それしかなかったのだから。
信じる者は救われる。
きっと、そういうことなのだ。
この世界は、敬虔な信者のみが生き残るようにできている。
ならば、生き残った私のやることは明白だ。
地獄から救って下さった神様をこれまで通り――否、これまで以上に信じ続ければいいのだ。
そうすれば、今後も救われるに違いない。
しかも、今度はより簡単で明確だ。
目に見えない架空の存在ではなく、ここにいらっしゃる、主様を信じればいいのだから。
主様を信じ、主様のためになることをすればいいのだから。
私の考え方はきっと正しい。
だからこそ、地獄から解放されて五年間、二度とあの場所に堕ちることなく、神の恩寵を授かる毎日を送ることができている。
これが正しい生き方なのだと、世界から、神様から、肯定されている――私がこうして生きていることが、何よりの証明だ。
だから、主様が唯一絶対でなければならないと信じるこの気持ちも、きっと正しいのだ。