標的13 耳を澄ませて目を凝らせ
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《視点:宮野アゲハ 場所:並盛町某所》
家でのいざこざに一段落つけてから、路上で気絶した例の一般人を並盛公園のベンチまで運んで休ませた。
やはり最初の見立て通り、綱吉と同年代の少年だった。
念のため持ち物を調べた結果、今日の昼食時にランボがリボーンの反撃を食らって吹き飛ばされた際、ロケット弾と共に追突した家の人間であることが分かったのだ。
沢田家の前で一般人にとっては衝撃の強すぎる状況に巻き込んでしまっただけでなく、ランボとそんな破壊的な出会いをしていたとなっては、青い顔をしてうなされている彼をますます放置しておけなくなった。
頬が僅かに切れていた以外目立った外傷がなかったことがせめてもの救いである――というか、もし一般人を傷つけていたら本当に洒落にならなかった。
少年が目を覚ましてから、沢田家であった出来事をどう捉えているかを探ったが、夢や幻覚の類だと現実逃避せず、かといって変に騒ぎ立てることもしなかった。
繊細なのか図太いのかよく分からない少年だ。
ともかく、今日のことを第三者に公言する気がないことを読心術で読み取れたので、少年を残して並盛公園を出たのだった。
ただし、寝ている間に沢田家の住所のメモを彼のポケットから抜き取り、幻術で家の場所の記憶を封じるという最低限の対応はしておいた。
あれで沢田家の位置の記憶だけが曖昧になっていることだろう。
ちなみに、気絶した時に少年が抱えていた木箱(ボヴィーノのお詫びらしい。うちには一度も届いたことはない)は中身を精査した後ベンチに置いてきた。
あれを抱えて家に来たということは、もしかして一度は受け取ったお詫びの品を返しにきたのかもしれないが、本当に迷惑をかけたので納めてほしい。
彼にとって今日の出来事はよほどショッキングだったようで、目が覚めた直後に私のことを『天使』と言ったくらいなのだから。
見ていた夢と現実を混同したのか、精神だけ仮死状態になっていたのか、どちらにせよ多大なストレスを受けたことは間違いない。
そういえば、前にも出会って第一声に似たようなことを言われたことが――
「……あ」
そこまで考えて、足を止めた。
偶然埋もれかけていた思い出を呼び起こしたことで、とても重要なことに気づいたのだ。
急いで近くの路地に隠れ、周囲に人がいないことを確認してから携帯電話を取り出した。
昼過ぎに九条雅也の出題意図について考えた時、私は二つの可能性を提示した上で嫌がらせではないかと結論づけた。
恐らくそれは間違っていない。
そして、嫌がらせをされる時は直前に私が雅也君の気に障ることをした場合が多いのだ。
そこまで考えついていたなら、もう少し先まで思考を進めるべきだった。
“夏の課題”が送られる直前の雅也君とのやり取りと言えば、自分の欠落の意味を考えたあの電話である。
皮肉にも、綱吉の護衛で在りたいと雅也君に告白した電話だ。
家族とは何か、護衛とは何かと雅也君に訊いた時、彼は優しく私を突き放したのだった。
――なら、自分で考えてみろ。お前の今の居場所で、見て聞いて学んで、そして考えろ。自分なりの答えを見つけるんだ。
当時の彼の台詞を反芻し、ふと引っ掛かることがあった。
『自分なりの答え』?
そういえば、課題のメールにも『私なりの解答を出せ』とあった。
数学の問題のように、答えが一つに定まっているわけではないのかもしれない。
キーワードを丁寧に頭に浮かべていく。
電話。
家族。
護衛。
私の居場所。
手に入らないもの。
欠落。
メール。
夏休みの宿題。
問題は既に提示されている。
ヒントは、あの日起こった出来事の中の何処か。
あの日、綱吉達は課題をすべて解答した。
後で聞いたところ最後の一問はリボーンが解いたらしいのだが、解決したことには違いない。
課題を解きに訪れた山本や獄寺、呼び出された他の来客達の用件は、あの日に余すところなく解決していたのだ。
たまたま遊びに来ていたランボにはそもそも取り組むべき問題がない。
彼らの動向をいくら探っても、何も出て来ないのは当然だ。
最初にピックアップした人物達は、今現在誰も問題を抱えていないのだから。
しかし、たった一つだけ。
あの日、雅也君のメールが届くまでの間に、未解決の問題がたった一つだけあった。
私がこれまで一度も意識しなかったことであり、それこそが、今回彼が私に解かせたがっている問題かもしれない。
メールを作成し終え、送信する。
ある人物に宛てたもので、これから会って話したいという内容だ。
あの日からたった一人、現在に至るまで問題を抱え続けているかもしれない人物である。
一分経たずに是と返事が来た。
今後のことを考えると気が重いが、それでも気づいた以上は進まなくてはならない。
家でのいざこざに一段落つけてから、路上で気絶した例の一般人を並盛公園のベンチまで運んで休ませた。
やはり最初の見立て通り、綱吉と同年代の少年だった。
念のため持ち物を調べた結果、今日の昼食時にランボがリボーンの反撃を食らって吹き飛ばされた際、ロケット弾と共に追突した家の人間であることが分かったのだ。
沢田家の前で一般人にとっては衝撃の強すぎる状況に巻き込んでしまっただけでなく、ランボとそんな破壊的な出会いをしていたとなっては、青い顔をしてうなされている彼をますます放置しておけなくなった。
頬が僅かに切れていた以外目立った外傷がなかったことがせめてもの救いである――というか、もし一般人を傷つけていたら本当に洒落にならなかった。
少年が目を覚ましてから、沢田家であった出来事をどう捉えているかを探ったが、夢や幻覚の類だと現実逃避せず、かといって変に騒ぎ立てることもしなかった。
繊細なのか図太いのかよく分からない少年だ。
ともかく、今日のことを第三者に公言する気がないことを読心術で読み取れたので、少年を残して並盛公園を出たのだった。
ただし、寝ている間に沢田家の住所のメモを彼のポケットから抜き取り、幻術で家の場所の記憶を封じるという最低限の対応はしておいた。
あれで沢田家の位置の記憶だけが曖昧になっていることだろう。
ちなみに、気絶した時に少年が抱えていた木箱(ボヴィーノのお詫びらしい。うちには一度も届いたことはない)は中身を精査した後ベンチに置いてきた。
あれを抱えて家に来たということは、もしかして一度は受け取ったお詫びの品を返しにきたのかもしれないが、本当に迷惑をかけたので納めてほしい。
彼にとって今日の出来事はよほどショッキングだったようで、目が覚めた直後に私のことを『天使』と言ったくらいなのだから。
見ていた夢と現実を混同したのか、精神だけ仮死状態になっていたのか、どちらにせよ多大なストレスを受けたことは間違いない。
そういえば、前にも出会って第一声に似たようなことを言われたことが――
「……あ」
そこまで考えて、足を止めた。
偶然埋もれかけていた思い出を呼び起こしたことで、とても重要なことに気づいたのだ。
急いで近くの路地に隠れ、周囲に人がいないことを確認してから携帯電話を取り出した。
昼過ぎに九条雅也の出題意図について考えた時、私は二つの可能性を提示した上で嫌がらせではないかと結論づけた。
恐らくそれは間違っていない。
そして、嫌がらせをされる時は直前に私が雅也君の気に障ることをした場合が多いのだ。
そこまで考えついていたなら、もう少し先まで思考を進めるべきだった。
“夏の課題”が送られる直前の雅也君とのやり取りと言えば、自分の欠落の意味を考えたあの電話である。
皮肉にも、綱吉の護衛で在りたいと雅也君に告白した電話だ。
家族とは何か、護衛とは何かと雅也君に訊いた時、彼は優しく私を突き放したのだった。
――なら、自分で考えてみろ。お前の今の居場所で、見て聞いて学んで、そして考えろ。自分なりの答えを見つけるんだ。
当時の彼の台詞を反芻し、ふと引っ掛かることがあった。
『自分なりの答え』?
そういえば、課題のメールにも『私なりの解答を出せ』とあった。
数学の問題のように、答えが一つに定まっているわけではないのかもしれない。
キーワードを丁寧に頭に浮かべていく。
電話。
家族。
護衛。
私の居場所。
手に入らないもの。
欠落。
メール。
夏休みの宿題。
問題は既に提示されている。
ヒントは、あの日起こった出来事の中の何処か。
あの日、綱吉達は課題をすべて解答した。
後で聞いたところ最後の一問はリボーンが解いたらしいのだが、解決したことには違いない。
課題を解きに訪れた山本や獄寺、呼び出された他の来客達の用件は、あの日に余すところなく解決していたのだ。
たまたま遊びに来ていたランボにはそもそも取り組むべき問題がない。
彼らの動向をいくら探っても、何も出て来ないのは当然だ。
最初にピックアップした人物達は、今現在誰も問題を抱えていないのだから。
しかし、たった一つだけ。
あの日、雅也君のメールが届くまでの間に、未解決の問題がたった一つだけあった。
私がこれまで一度も意識しなかったことであり、それこそが、今回彼が私に解かせたがっている問題かもしれない。
メールを作成し終え、送信する。
ある人物に宛てたもので、これから会って話したいという内容だ。
あの日からたった一人、現在に至るまで問題を抱え続けているかもしれない人物である。
一分経たずに是と返事が来た。
今後のことを考えると気が重いが、それでも気づいた以上は進まなくてはならない。