憂鬱組の家族遊戯
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椿と契約して間もない頃、私達が一緒に暮らしていくにあたって、サーヴァンプの制約から家事当番まで多岐にわたる内容を話し合った。
「じゃあ、在華の護衛役として一緒に学校に通うのは、オトギリってことでいいね?」
「いいねっていうか……、女子校なんだから、オトギリ以外無理でしょ」
「はい。頑張ります」
「制服とか必要な備品は私が手配しておくから」
「ありがとうございます、在華」
「それじゃ、次は僕がどうやって学校に潜入するかを相談しようか」
「え? 椿も行くの?」
驚いて聞き返すと、当たり前でしょ、と即答された。
「前にも話したけど、僕と在華は限界距離のせいで離れられないからね。だから僕も在華について行かなきゃいけないんだよ。面倒だよねえ」
「とか言って、つばきゅん、すッごく楽しそうだよォ! 全ッ然面倒臭がってないねェ!」
「あ、分かる? 僕、一度学校に行ってみたかったんだよねえ」
「椿も行くなら、なんでオトギリを護衛にしたの? あとさっきはスルーしたけど、そもそも護衛って何なの? 私、何から狙われてるの?」
「可愛い在華を付け狙うストーカーから守るんだよ。僕だけじゃ守り切れないこともあるかもしれないからね」
「ストーカーって、毎晩こっそり布団に入って来るような奴のこと?」
「そうそう……って違うよ! 僕のは愛情ゆえだよ!」
世間のストーカーは大抵愛情ゆえの行為だと思う。
そして、その大半は自覚がない。
「……まあいいや。話を戻すけど、どうやって椿も学校に行くつもり? うち女子校だよ」
「うーん、やっぱり僕も転入しようかな」
「だから女子校だっつってんだろ。自分の性別鑑みろ」
「だから女装すればいいんだよ! ほら、僕ってイケメンだから、美少女だって完璧にこなせると思うんだよね」
「お前の転入手続きなんか絶対受理しないからね」
うちの学校の制服を着た椿を想像してみて、それが案外似合っていたので、余計に腹が立った。
「なら、いっそのこと先生とかどォ? それなら男でも問題ないじゃん」
「あ、それいいね! ベルってばナイス!」
「問題大有りだよ。何処の世界に椿を教師として迎え入れる学校があると思ってんの」
「やっぱり教員免許がないと駄目かな」
「それ以前に資質の問題だよ」
全く進展しない展開に耐えかねたのか、それまで黙って聞いていた桜哉が、携帯電話を弄りながら呟いた。
「別に人型のままでなくてもいいんじゃないですか」
その場にいた全員が桜哉に注目する。
彼は携帯電話の画面から目を離さず、興味なさそうに続けた。
「真昼は怠惰の猫をペットとして連れてきてましたよ」
この頃はまだ他の主人のことを知らなかったのだが、とにかく桜哉の提案はなかなか悪くないように思えた――少なくとも生徒や教師として潜入するよりは現実味がある。
「でもうちの学校、校則厳しいからなあ。ペット連れて行っても大丈夫かな」
「ペット禁止って校則があるの?」
「ないけど、常識でしょそんなもん」
「なら、ペットじゃなくてぬいぐるみとしてならいいんじゃないのォ?」
べルキアは名案とばかりにパチンッと指を鳴らした。
「狐姿でじっとしてればぬいぐるみっぽく見えるジャン! それなら学校に許可取る必要ないし、鞄に入れとけばバレないよォ!」
「万が一鞄の中見られた時、あんな大きなぬいぐるみを持ち歩いてると思われるのは嫌だな……」
高校生としてはぎりぎりアウトのメルヘンさだ。
この時は他の主人について知らなかったので、天使を自称する電波ピアニストのこともお人形を持ち歩く骨董品屋のことも知らなかった。
「でもそれって、ほとんど一日中鞄の中でじっとしてなきゃいけないんだよね? それは面白くないなあ」
「それ以前に椿の負担が大きいでしょ」
ほぼ一日中狭い鞄の中に詰め込まれるのは、椿にとってかなり苦痛になるはずだ。
それに耐えきれず椿が鞄から抜け出したところを誰かに見られ大騒ぎになる未来が容易に想像できる。
とはいえ、ぬいぐるみ案を否定すると、残るペット案を採用せざるを得なくなる。
「まあいっか。学校にはうまく言って、椿をペットとして連れて行けるよう認めてもらうよ。確か、うちのクラスに動物アレルギーの子はいなかったはずだから、多分大丈夫でしょ」
「………」
「……え、何? どうかした?」
気がつくと、全員が黙り込んで私の顔を凝視している。
私が問いかけると、彼らは互いに同意を求めるように視線を送り合い、やがて各々口を開いた。
「いや、口では色々言ってるけど、意外と椿さんのこと大事にしてんだなって」
「ありりんって、何だかんだでつばきゅんのこと大好きだよねェ~」
「僕ってば愛されてるなあ」
色々と好き勝手言われた。
とはいえ自分達のリーダーをそれなりに大切に思っていることが伝わったらしく、その日以来下位吸血鬼達が私を見る目は変わったように思う。
余談だが、ペットを学校へ連れて行くことに関して、予想以上にあっさりと学校側から許可が下り、箱庭育ちのお嬢様方は得体の知れない狐を大層可愛がってくれたのだった。
憂鬱組の評価
「じゃあ、在華の護衛役として一緒に学校に通うのは、オトギリってことでいいね?」
「いいねっていうか……、女子校なんだから、オトギリ以外無理でしょ」
「はい。頑張ります」
「制服とか必要な備品は私が手配しておくから」
「ありがとうございます、在華」
「それじゃ、次は僕がどうやって学校に潜入するかを相談しようか」
「え? 椿も行くの?」
驚いて聞き返すと、当たり前でしょ、と即答された。
「前にも話したけど、僕と在華は限界距離のせいで離れられないからね。だから僕も在華について行かなきゃいけないんだよ。面倒だよねえ」
「とか言って、つばきゅん、すッごく楽しそうだよォ! 全ッ然面倒臭がってないねェ!」
「あ、分かる? 僕、一度学校に行ってみたかったんだよねえ」
「椿も行くなら、なんでオトギリを護衛にしたの? あとさっきはスルーしたけど、そもそも護衛って何なの? 私、何から狙われてるの?」
「可愛い在華を付け狙うストーカーから守るんだよ。僕だけじゃ守り切れないこともあるかもしれないからね」
「ストーカーって、毎晩こっそり布団に入って来るような奴のこと?」
「そうそう……って違うよ! 僕のは愛情ゆえだよ!」
世間のストーカーは大抵愛情ゆえの行為だと思う。
そして、その大半は自覚がない。
「……まあいいや。話を戻すけど、どうやって椿も学校に行くつもり? うち女子校だよ」
「うーん、やっぱり僕も転入しようかな」
「だから女子校だっつってんだろ。自分の性別鑑みろ」
「だから女装すればいいんだよ! ほら、僕ってイケメンだから、美少女だって完璧にこなせると思うんだよね」
「お前の転入手続きなんか絶対受理しないからね」
うちの学校の制服を着た椿を想像してみて、それが案外似合っていたので、余計に腹が立った。
「なら、いっそのこと先生とかどォ? それなら男でも問題ないじゃん」
「あ、それいいね! ベルってばナイス!」
「問題大有りだよ。何処の世界に椿を教師として迎え入れる学校があると思ってんの」
「やっぱり教員免許がないと駄目かな」
「それ以前に資質の問題だよ」
全く進展しない展開に耐えかねたのか、それまで黙って聞いていた桜哉が、携帯電話を弄りながら呟いた。
「別に人型のままでなくてもいいんじゃないですか」
その場にいた全員が桜哉に注目する。
彼は携帯電話の画面から目を離さず、興味なさそうに続けた。
「真昼は怠惰の猫をペットとして連れてきてましたよ」
この頃はまだ他の主人のことを知らなかったのだが、とにかく桜哉の提案はなかなか悪くないように思えた――少なくとも生徒や教師として潜入するよりは現実味がある。
「でもうちの学校、校則厳しいからなあ。ペット連れて行っても大丈夫かな」
「ペット禁止って校則があるの?」
「ないけど、常識でしょそんなもん」
「なら、ペットじゃなくてぬいぐるみとしてならいいんじゃないのォ?」
べルキアは名案とばかりにパチンッと指を鳴らした。
「狐姿でじっとしてればぬいぐるみっぽく見えるジャン! それなら学校に許可取る必要ないし、鞄に入れとけばバレないよォ!」
「万が一鞄の中見られた時、あんな大きなぬいぐるみを持ち歩いてると思われるのは嫌だな……」
高校生としてはぎりぎりアウトのメルヘンさだ。
この時は他の主人について知らなかったので、天使を自称する電波ピアニストのこともお人形を持ち歩く骨董品屋のことも知らなかった。
「でもそれって、ほとんど一日中鞄の中でじっとしてなきゃいけないんだよね? それは面白くないなあ」
「それ以前に椿の負担が大きいでしょ」
ほぼ一日中狭い鞄の中に詰め込まれるのは、椿にとってかなり苦痛になるはずだ。
それに耐えきれず椿が鞄から抜け出したところを誰かに見られ大騒ぎになる未来が容易に想像できる。
とはいえ、ぬいぐるみ案を否定すると、残るペット案を採用せざるを得なくなる。
「まあいっか。学校にはうまく言って、椿をペットとして連れて行けるよう認めてもらうよ。確か、うちのクラスに動物アレルギーの子はいなかったはずだから、多分大丈夫でしょ」
「………」
「……え、何? どうかした?」
気がつくと、全員が黙り込んで私の顔を凝視している。
私が問いかけると、彼らは互いに同意を求めるように視線を送り合い、やがて各々口を開いた。
「いや、口では色々言ってるけど、意外と椿さんのこと大事にしてんだなって」
「ありりんって、何だかんだでつばきゅんのこと大好きだよねェ~」
「僕ってば愛されてるなあ」
色々と好き勝手言われた。
とはいえ自分達のリーダーをそれなりに大切に思っていることが伝わったらしく、その日以来下位吸血鬼達が私を見る目は変わったように思う。
余談だが、ペットを学校へ連れて行くことに関して、予想以上にあっさりと学校側から許可が下り、箱庭育ちのお嬢様方は得体の知れない狐を大層可愛がってくれたのだった。
憂鬱組の評価