憂鬱組の家族遊戯
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さて、椿の覗きを警戒しつつ着替えを済ませると、いよいよ家族揃っての朝食である。
準備を終えてドアを開けると、廊下にスーツ姿の男性が跪いていた。
「おはようございます、お嬢」
凛々しい口調で頭を下げるのは、シャムロックである。
忠誠心の強い彼は、椿相手と同じように私に尽くしてくれるばかりか、毎朝部屋の前でこの体勢で出迎えてくれるのだ。
ごく一般的な家庭で育った女子高生にとって、朝から成人男性が自分に傅く姿を目の当たりにするのは精神的苦痛が大きい。
ちなみに、この家の吸血鬼達は、律儀にも私の生活習慣に合わせてくれて、私との朝食に間に合う時刻に必ず起床してくれる。
しかし彼に限って言えば、もう少し寝ていてくれても全然構わないと密かに思っているくらいだ。
「おはよう。もう皆揃ってる?」
「はい。朝食の用意も万全です」
平常心を装ってシャムロックの横を通り過ぎると、ようやく身体を起こして立ち上がってくれた。
彼はこちらが動かない限りいつまでもあの体勢でいるので、できるだけ反応せずさっさと移動した方が私の精神的負担が少なく済むことを最近学んだのだった。
一階のリビングに入ると、私とシャムを除く全員が食卓を囲んで座っていた。
テーブルには、美味しそうな朝食が人数分用意されている。
家事は当番制になっており、確か今日の朝食担当はオトギリのはずだ。
可愛い上に料理上手な彼女は、何処へ嫁に出しても恥ずかしくない。
リビングを見渡しながら、皆に向かって声を掛ける。
「おはよう、皆」
「おはよ、在華」
「おはようございます」
「おはよう、お嬢ちゃん」
「おっそいよォ~ありりん! ボク待ちくたびれちゃったよォ!!」
「ごめんごめん」
桜哉、オトギリ、ヒガン、ベルキアはそれぞれ挨拶を返してくれたが、椿だけは不機嫌そうに頬杖をついて明後日の方向を向いている。
シャムロックが引いてくれた椅子(椿と桜哉の間の席)に腰を下ろすと、椿の右頬が赤く腫れているのが目に入った。
「あれ? 椿、その頬どうしたの? 今朝はなかったよね?」
「……君、さっき僕に何をしたかもう忘れたの?」
じとっと横目で睨まれた。
どうやら部屋から追い出す際に勢いよく投擲したのが災いし、壁に激突してしまったらしい。
恨みがましく言われても、そもそも彼の自業自得なので心は痛まない。
「ねえ在華、最近僕の扱いが雑じゃない? 出会った頃は狐姿の僕をあんなに可愛がってくれたのに」
「どうせまた在華に変なことでもしたんだろ。自業自得ですよ」
「変なことなんてしてないよ! 桜哉ってば人聞きの悪いこと言わないで!」
「私の着替え覗こうとしたんだよ」
「何してんだアンタ!!」
桜哉は椿に苦労をかけられている同士として、こうしてよく私の味方になってくれる。
真昼君への異常な執着を除けば、下位の中でも比較的まともな部類である。
「椿さん、早く食べて下さい。食器が片づかなくて困ります」
椿と桜哉の言い合いを無表情で眺めながら、オトギリは鈴を転がすような声でそう言った。
それまでの会話に介入せず椿にだけ注意する辺り、彼女も扱いに慣れている。
オトギリは私を護衛するという目的で現在私と同じ高校に通っており、椿の次に一緒にいる時間が長い。
本当なら自分が通いたかったと椿が不満を漏らしたのを聞いた時、女子校で良かったと心底思った。
「つばきゅんも懲りないよねェ~。いっつも痛い目に遭うのに」
食事する手は止めないまま、ベルキアが呆れた調子でそう呟いた。
個性的なあだ名をつける彼に、初対面で『ありりん』と呼ばれて面食らったのは記憶に新しい。
そういえば、私に対して最初から分け隔てなく接してくれたのはベルキアだけだった。
派手な外見と奇抜な言動が目立つが、意外にも憂鬱組の中で一番話が合うのは彼なのである。
そして、朝食風景を微笑ましそうに眺めているのがヒガンだ。
この人はいい意味でも悪い意味でも私達のやり取りに口出しすることはほとんどない。
絵が上手くて手先が器用なので、よく私の好きなキャラクターの絵を描いてくれたり、ストラップを作ってくれたりする。
これでお小遣いでもくれたら、本当に親戚のおじさんポジションだ。
――以上がこの家に住まう個性的な吸血鬼達であり、私の愛しい家族である。
憂鬱組の人物紹介
準備を終えてドアを開けると、廊下にスーツ姿の男性が跪いていた。
「おはようございます、お嬢」
凛々しい口調で頭を下げるのは、シャムロックである。
忠誠心の強い彼は、椿相手と同じように私に尽くしてくれるばかりか、毎朝部屋の前でこの体勢で出迎えてくれるのだ。
ごく一般的な家庭で育った女子高生にとって、朝から成人男性が自分に傅く姿を目の当たりにするのは精神的苦痛が大きい。
ちなみに、この家の吸血鬼達は、律儀にも私の生活習慣に合わせてくれて、私との朝食に間に合う時刻に必ず起床してくれる。
しかし彼に限って言えば、もう少し寝ていてくれても全然構わないと密かに思っているくらいだ。
「おはよう。もう皆揃ってる?」
「はい。朝食の用意も万全です」
平常心を装ってシャムロックの横を通り過ぎると、ようやく身体を起こして立ち上がってくれた。
彼はこちらが動かない限りいつまでもあの体勢でいるので、できるだけ反応せずさっさと移動した方が私の精神的負担が少なく済むことを最近学んだのだった。
一階のリビングに入ると、私とシャムを除く全員が食卓を囲んで座っていた。
テーブルには、美味しそうな朝食が人数分用意されている。
家事は当番制になっており、確か今日の朝食担当はオトギリのはずだ。
可愛い上に料理上手な彼女は、何処へ嫁に出しても恥ずかしくない。
リビングを見渡しながら、皆に向かって声を掛ける。
「おはよう、皆」
「おはよ、在華」
「おはようございます」
「おはよう、お嬢ちゃん」
「おっそいよォ~ありりん! ボク待ちくたびれちゃったよォ!!」
「ごめんごめん」
桜哉、オトギリ、ヒガン、ベルキアはそれぞれ挨拶を返してくれたが、椿だけは不機嫌そうに頬杖をついて明後日の方向を向いている。
シャムロックが引いてくれた椅子(椿と桜哉の間の席)に腰を下ろすと、椿の右頬が赤く腫れているのが目に入った。
「あれ? 椿、その頬どうしたの? 今朝はなかったよね?」
「……君、さっき僕に何をしたかもう忘れたの?」
じとっと横目で睨まれた。
どうやら部屋から追い出す際に勢いよく投擲したのが災いし、壁に激突してしまったらしい。
恨みがましく言われても、そもそも彼の自業自得なので心は痛まない。
「ねえ在華、最近僕の扱いが雑じゃない? 出会った頃は狐姿の僕をあんなに可愛がってくれたのに」
「どうせまた在華に変なことでもしたんだろ。自業自得ですよ」
「変なことなんてしてないよ! 桜哉ってば人聞きの悪いこと言わないで!」
「私の着替え覗こうとしたんだよ」
「何してんだアンタ!!」
桜哉は椿に苦労をかけられている同士として、こうしてよく私の味方になってくれる。
真昼君への異常な執着を除けば、下位の中でも比較的まともな部類である。
「椿さん、早く食べて下さい。食器が片づかなくて困ります」
椿と桜哉の言い合いを無表情で眺めながら、オトギリは鈴を転がすような声でそう言った。
それまでの会話に介入せず椿にだけ注意する辺り、彼女も扱いに慣れている。
オトギリは私を護衛するという目的で現在私と同じ高校に通っており、椿の次に一緒にいる時間が長い。
本当なら自分が通いたかったと椿が不満を漏らしたのを聞いた時、女子校で良かったと心底思った。
「つばきゅんも懲りないよねェ~。いっつも痛い目に遭うのに」
食事する手は止めないまま、ベルキアが呆れた調子でそう呟いた。
個性的なあだ名をつける彼に、初対面で『ありりん』と呼ばれて面食らったのは記憶に新しい。
そういえば、私に対して最初から分け隔てなく接してくれたのはベルキアだけだった。
派手な外見と奇抜な言動が目立つが、意外にも憂鬱組の中で一番話が合うのは彼なのである。
そして、朝食風景を微笑ましそうに眺めているのがヒガンだ。
この人はいい意味でも悪い意味でも私達のやり取りに口出しすることはほとんどない。
絵が上手くて手先が器用なので、よく私の好きなキャラクターの絵を描いてくれたり、ストラップを作ってくれたりする。
これでお小遣いでもくれたら、本当に親戚のおじさんポジションだ。
――以上がこの家に住まう個性的な吸血鬼達であり、私の愛しい家族である。
憂鬱組の人物紹介