憂鬱組の家族遊戯
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小説を流し読みしていると、『吸血鬼』という単語が登場したので、ふとページを捲る手を止めた。
当然だが、フィクションの吸血鬼は、実在する吸血鬼とは性質も性格も異なる。
そういえば、椿と契約した際に、C3から吸血鬼関係の情報を入手して閲覧したことがある。
しかし、フィクションよりも事実に即しているはずの資料の内容すら、実際に生活しているあの陽気な人達の印象とはかけ離れているように感じたのだった。
とはいえ折角興味が出てきたので、この機会に我が家の吸血鬼と世間一般の吸血鬼像を比べてみたら暇潰しくらいにはなるかもしれない。
本を閉じてテーブルに置き、代わりに自分のケータイを取った。
とりあえず、比較するのはネットの知識でいいだろう。
インターネットで『吸血鬼』と検索すると、万人が想像するようなスタンダードな吸血鬼の特徴が羅列してあるページに行き当たった。
まず、『吸血鬼はさまざまな姿に変身できる』とある。
椿は狐に変身できるが、ネットによると動物だけでなく霧に姿を変えどんな場所にも入り込むことができるという。
「へえ……お話の吸血鬼はポテンシャル高いんだな」
感心して思わず独り言が零れた。
さて、次の特徴は『心臓に杭を打ち付けると死ぬ』か。
「………」
これは吸血鬼じゃなくても死ぬんじゃないか?
椿達はどうだろう。
不老不死という触れ込みだし、下位でも真祖に血を吸われない限り大丈夫だと聞いたが、心臓に杭を打たれたらどうなるだろうか。
少し興味はあるものの、試す機会は多分永遠に訪れないだろう。
暴力的だと椿によく揶揄される私だが、さすがに家族の心臓に穴を開けるほどサイコパスではない。
気を取り直して続いては、『銀を恐れる』。
これは当てはまらないことを知っている――何故なら、家に銀食器があるからだ。
そして、『ニンニクや匂いの強い香草などを苦手とする』だが、実はこれは試したことがある。
彼らが家にやって来てすぐの頃、ニンニクの入った餃子を出したのだが、皆美味しそうに完食していた。
椿曰く、「確かにニンニク嫌いな吸血鬼もいるよ。そのくらいの好き嫌いは人間と同じじゃない?」とのことだった。
『十字架、聖水を嫌う』。
十字架は家にはないのだが、苦手だと聞いたことがないので多分大丈夫だろう。
聖水の方は、その効果を実証済みだ――ただし、フィクションのように致命傷になるほどの威力ではない。
特に真祖の場合、椿が煩すぎる時にぶっかけると数秒黙らせられる程度の影響力しかない。
『日光を浴びると弱る』。
これは、数ある特徴の中でも一番当てはまる事項だと思う。
憂鬱の吸血鬼は日光に強いが、他の真祖の下位は当たると灰になってしまうらしい。
だから下位の部屋には日差しが入らないよう特に気を遣っていると、有栖院御園が前に話してくれた。
『緩い水流や穏やかな海面を歩いて渡ることができる』。
もはやマジックの域だ。
ベルキアならできるだろうか。
さて次は、と画面をスクロールしたところで、背中に重みを感じた。
直後に背後から腕が回って身体をがっちり固定され、自分は後ろから抱きしめられているのだと遅れて気づいた。
服の袖と香る匂いは、彼のものだ。
「……何? いつの間に入って来たの?」
拘束されながらも身を捩って背後に顔を向けると、首元に顔を埋める椿と近距離で目が合った。
「さっきだよ。オトギリがもうすぐご飯できるって」
「ありがとう。それで、なんでこの体勢?」
「だって在華が可愛い過ぎるから」
答えになっていない。
「在華、今吸血鬼について調べてたんでしょ? 画面が見えたよ」
「そうだけど」
それがどうしてこうなった。
調べ物をしただけでこの有様では、そのうち日常生活もままならなくなりそうだ。
「可愛い顔で僕達について調べてるんだもん。抱きしめたくもなるよ」
そう言って、椿は腕の力を強くした。
私が吸血鬼について調べていると後ろから抱きしめてくることは、ネットにも書籍にも、C3の資料にも書かれていないことだ。
一緒に住まなければ知らなかった、椿の個性だ。
「……お前の萌えがよく分かんないよ」
言い捨ててから、ネットを閉じてケータイの画面を暗くした。
これ以上何を読んでも、きっと頭に入りそうにない。
憂鬱組と吸血鬼
当然だが、フィクションの吸血鬼は、実在する吸血鬼とは性質も性格も異なる。
そういえば、椿と契約した際に、C3から吸血鬼関係の情報を入手して閲覧したことがある。
しかし、フィクションよりも事実に即しているはずの資料の内容すら、実際に生活しているあの陽気な人達の印象とはかけ離れているように感じたのだった。
とはいえ折角興味が出てきたので、この機会に我が家の吸血鬼と世間一般の吸血鬼像を比べてみたら暇潰しくらいにはなるかもしれない。
本を閉じてテーブルに置き、代わりに自分のケータイを取った。
とりあえず、比較するのはネットの知識でいいだろう。
インターネットで『吸血鬼』と検索すると、万人が想像するようなスタンダードな吸血鬼の特徴が羅列してあるページに行き当たった。
まず、『吸血鬼はさまざまな姿に変身できる』とある。
椿は狐に変身できるが、ネットによると動物だけでなく霧に姿を変えどんな場所にも入り込むことができるという。
「へえ……お話の吸血鬼はポテンシャル高いんだな」
感心して思わず独り言が零れた。
さて、次の特徴は『心臓に杭を打ち付けると死ぬ』か。
「………」
これは吸血鬼じゃなくても死ぬんじゃないか?
椿達はどうだろう。
不老不死という触れ込みだし、下位でも真祖に血を吸われない限り大丈夫だと聞いたが、心臓に杭を打たれたらどうなるだろうか。
少し興味はあるものの、試す機会は多分永遠に訪れないだろう。
暴力的だと椿によく揶揄される私だが、さすがに家族の心臓に穴を開けるほどサイコパスではない。
気を取り直して続いては、『銀を恐れる』。
これは当てはまらないことを知っている――何故なら、家に銀食器があるからだ。
そして、『ニンニクや匂いの強い香草などを苦手とする』だが、実はこれは試したことがある。
彼らが家にやって来てすぐの頃、ニンニクの入った餃子を出したのだが、皆美味しそうに完食していた。
椿曰く、「確かにニンニク嫌いな吸血鬼もいるよ。そのくらいの好き嫌いは人間と同じじゃない?」とのことだった。
『十字架、聖水を嫌う』。
十字架は家にはないのだが、苦手だと聞いたことがないので多分大丈夫だろう。
聖水の方は、その効果を実証済みだ――ただし、フィクションのように致命傷になるほどの威力ではない。
特に真祖の場合、椿が煩すぎる時にぶっかけると数秒黙らせられる程度の影響力しかない。
『日光を浴びると弱る』。
これは、数ある特徴の中でも一番当てはまる事項だと思う。
憂鬱の吸血鬼は日光に強いが、他の真祖の下位は当たると灰になってしまうらしい。
だから下位の部屋には日差しが入らないよう特に気を遣っていると、有栖院御園が前に話してくれた。
『緩い水流や穏やかな海面を歩いて渡ることができる』。
もはやマジックの域だ。
ベルキアならできるだろうか。
さて次は、と画面をスクロールしたところで、背中に重みを感じた。
直後に背後から腕が回って身体をがっちり固定され、自分は後ろから抱きしめられているのだと遅れて気づいた。
服の袖と香る匂いは、彼のものだ。
「……何? いつの間に入って来たの?」
拘束されながらも身を捩って背後に顔を向けると、首元に顔を埋める椿と近距離で目が合った。
「さっきだよ。オトギリがもうすぐご飯できるって」
「ありがとう。それで、なんでこの体勢?」
「だって在華が可愛い過ぎるから」
答えになっていない。
「在華、今吸血鬼について調べてたんでしょ? 画面が見えたよ」
「そうだけど」
それがどうしてこうなった。
調べ物をしただけでこの有様では、そのうち日常生活もままならなくなりそうだ。
「可愛い顔で僕達について調べてるんだもん。抱きしめたくもなるよ」
そう言って、椿は腕の力を強くした。
私が吸血鬼について調べていると後ろから抱きしめてくることは、ネットにも書籍にも、C3の資料にも書かれていないことだ。
一緒に住まなければ知らなかった、椿の個性だ。
「……お前の萌えがよく分かんないよ」
言い捨ててから、ネットを閉じてケータイの画面を暗くした。
これ以上何を読んでも、きっと頭に入りそうにない。
憂鬱組と吸血鬼
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