憂鬱組の家族遊戯
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私の通う高校は、所謂お嬢様学校である。
総合病院の院長、大物政治家、警察庁の幹部、世界的な女優、大企業の社長、銀行頭取など、裕福な家庭を容易に想像できる職種の両親を持ち、旧家名家の家柄の娘達が全国から集っている。
莫大な寄付金によって建設された絢爛豪華な校舎、偏差値向上だけでなく花嫁修業も兼ねた高度なカリキュラムとそれに適応した教師陣――まさに非の打ち所のない国内でもトップクラスの進学校なのだ。
ちなみに、有栖院御園が通っている帝一瀬学園の姉妹校でもある。
何故そんな学校に私のような一般人が紛れ込んでいるのかという説明は、また別の機会に回すとする――特に大した理由ではない。
その学校に、先述したようにオトギリは留学生、椿は私のペットとして学校に潜入しているのだが、箱庭で生まれ育ち俗世に疎いお嬢様達は、オトギリは勿論、狐の椿すら容易く受け入れ、可愛がっている。
それだけでもこの学校に満足しているし(余談だが、制服のデザインが可愛くてオトギリによく似合っているのも高評価だ)、学校生活においてそれほど不満はない。
しかしたった一つだけ、不満というか、気になる点があるのだ。
たとえば、ある日のことである。
休み時間に、桜哉から『北校舎の屋上に来てほしい』とメールがあったので行ってみると、何故か家で留守番しているはずの桜哉がいた。
「お前、今日数学の教科書家に忘れていっただろ? ちょうど暇だったから、届けに来た」
そう言って、今朝家を出る直前まで鞄の中にあったはずの教科書を差し出した。
何故私のクラスの時間割を把握しているのか、どうやってセキュリティの高い学校の、しかも鍵の掛かった屋上に忍び込んだのか、疑問が絶えない。
それに、彼らと一緒に住むようになってから、忘れ物をして桜哉に届けてもらう回数が激増しているのは、ただの偶然だろうか。
また、ある日の体育の時間である。
屋外の校庭での授業だったのだが、ふと視線を感じた方向を見ると、見覚えのある白スーツの男が双眼鏡を手に塀の向こうから身を乗り出していた。
「お嬢に危険が及ぶことのないよう、陰ながら見守っておりました!」
胸を張って報告するシャムロックの姿は、身内から見ても不審者に相違なかった。
私が声を掛けるまでよく通報されなかったと心底思う。
あるいは、美術の授業があった日は、いつの間にかヒガンが無人の美術室で煙草を吸っていた。
「お嬢ちゃん、人物画や風景画は下手だけど、抽象画は味があっていいね」
私の描いたキャンバスを眺めながら、画力についてそう批評した――絵心なくて悪かったな。
極めつけは、ある昼休みに『食堂に派手な手品師が居座っている』と聞き駆けつけると、テーブル一面にビュッフェ料理を広げて楽しそうに笑うベルキアがいたのだ。
「この学校、学食が豪華でおいしいよねェ~。いっぱいあるから、ありりん達も一緒に食べよーよォ!」
部外者が我が物顔で食堂を占拠している光景に、頭が痛くなった。
せめて他の三人のように人目を忍ぶ努力をしてほしい。
――と例を挙げればキリがないが、このように気がつけば高確率で校内で誰かしらの姿を発見しているのだ。
ある日、私はたまらずこんな疑問を口にした。
「最初に私と学校に行く人を話し合って決めたけどさ、あれって意味あったの? 女子校だからオトギリしか生徒として潜入できなかったとは言え、皆がこんなに来るなら護衛を一人選ばなくても良かったんじゃない?」
「意味はなかったと思います」
私の意見に対し、オトギリは容赦なくそう切り捨てた。
「ですが、学校は楽しいです」
「………」
この学校の利点は何よりも、吸血鬼に優しい点だと強く思った。
だから、重ねて言うが、学校生活に不満はないのである。
憂鬱組と学校生活
総合病院の院長、大物政治家、警察庁の幹部、世界的な女優、大企業の社長、銀行頭取など、裕福な家庭を容易に想像できる職種の両親を持ち、旧家名家の家柄の娘達が全国から集っている。
莫大な寄付金によって建設された絢爛豪華な校舎、偏差値向上だけでなく花嫁修業も兼ねた高度なカリキュラムとそれに適応した教師陣――まさに非の打ち所のない国内でもトップクラスの進学校なのだ。
ちなみに、有栖院御園が通っている帝一瀬学園の姉妹校でもある。
何故そんな学校に私のような一般人が紛れ込んでいるのかという説明は、また別の機会に回すとする――特に大した理由ではない。
その学校に、先述したようにオトギリは留学生、椿は私のペットとして学校に潜入しているのだが、箱庭で生まれ育ち俗世に疎いお嬢様達は、オトギリは勿論、狐の椿すら容易く受け入れ、可愛がっている。
それだけでもこの学校に満足しているし(余談だが、制服のデザインが可愛くてオトギリによく似合っているのも高評価だ)、学校生活においてそれほど不満はない。
しかしたった一つだけ、不満というか、気になる点があるのだ。
たとえば、ある日のことである。
休み時間に、桜哉から『北校舎の屋上に来てほしい』とメールがあったので行ってみると、何故か家で留守番しているはずの桜哉がいた。
「お前、今日数学の教科書家に忘れていっただろ? ちょうど暇だったから、届けに来た」
そう言って、今朝家を出る直前まで鞄の中にあったはずの教科書を差し出した。
何故私のクラスの時間割を把握しているのか、どうやってセキュリティの高い学校の、しかも鍵の掛かった屋上に忍び込んだのか、疑問が絶えない。
それに、彼らと一緒に住むようになってから、忘れ物をして桜哉に届けてもらう回数が激増しているのは、ただの偶然だろうか。
また、ある日の体育の時間である。
屋外の校庭での授業だったのだが、ふと視線を感じた方向を見ると、見覚えのある白スーツの男が双眼鏡を手に塀の向こうから身を乗り出していた。
「お嬢に危険が及ぶことのないよう、陰ながら見守っておりました!」
胸を張って報告するシャムロックの姿は、身内から見ても不審者に相違なかった。
私が声を掛けるまでよく通報されなかったと心底思う。
あるいは、美術の授業があった日は、いつの間にかヒガンが無人の美術室で煙草を吸っていた。
「お嬢ちゃん、人物画や風景画は下手だけど、抽象画は味があっていいね」
私の描いたキャンバスを眺めながら、画力についてそう批評した――絵心なくて悪かったな。
極めつけは、ある昼休みに『食堂に派手な手品師が居座っている』と聞き駆けつけると、テーブル一面にビュッフェ料理を広げて楽しそうに笑うベルキアがいたのだ。
「この学校、学食が豪華でおいしいよねェ~。いっぱいあるから、ありりん達も一緒に食べよーよォ!」
部外者が我が物顔で食堂を占拠している光景に、頭が痛くなった。
せめて他の三人のように人目を忍ぶ努力をしてほしい。
――と例を挙げればキリがないが、このように気がつけば高確率で校内で誰かしらの姿を発見しているのだ。
ある日、私はたまらずこんな疑問を口にした。
「最初に私と学校に行く人を話し合って決めたけどさ、あれって意味あったの? 女子校だからオトギリしか生徒として潜入できなかったとは言え、皆がこんなに来るなら護衛を一人選ばなくても良かったんじゃない?」
「意味はなかったと思います」
私の意見に対し、オトギリは容赦なくそう切り捨てた。
「ですが、学校は楽しいです」
「………」
この学校の利点は何よりも、吸血鬼に優しい点だと強く思った。
だから、重ねて言うが、学校生活に不満はないのである。
憂鬱組と学校生活