そして、時刻は午後7時半過ぎ──
辺りも薄暗くなってきた頃、万事屋はのインターフォンが鳴った。
「あっ、
ナマエアル!」
「ほら、銀さん行きますよ~」
「分かった、おい、ちょっ、押すなって!」
3人がドタバタしながら玄関にやって来た。 そこには、銀時の彼女──
ナマエの姿があった。
「こんばんは」
「あ、あぁ……」
ナマエがニコリと微笑みながら、自分を見つめている──そんなシチュエーションに、銀時が照れたのも束の間……
「早く行くアル!」
「あっ、ちょっと神楽ちゃん!」
神楽が
ナマエの手をとり、一気に階段をかけ降りる。神楽の行動に、してやられた感を否めない銀時が、思わず舌打ちをする。
「ッたく、神楽の奴……新八ィ、もたもたしてると置いてくぞ~」
「え、ち、ちょっと、花火持ってくの手伝ってくださいよ〜」
***
しばらくして、4人は近くの川辺へとやって来た。そして、早速花火をし始める。
「銀ちゃん、これに火付けて欲しいアル!」
「神楽ちゃ~ん、それ手持ち花火じゃないからね? ロケット花火だからね、それ!」
「ロケット花火……?」
「あれ、お前知らねーの? これは──」
そう言いつつ、銀時はおもむろに花火に火をつけ、ぽいっと新八の方へと投げ捨てる。
「えっ、えェェ~⁉︎ ちょっ、銀さんッ⁉︎」
新八は、自分目掛けてやってくるロケット花火から、慌てて走って逃げる。途中、花火は石にぶつかったのか……方向を変えて上にあがり、パァ〜ンッッと、いう音をたてて地面へと落ちた。
「ほぉ~! この花火は、こんな風に楽しむアルね! よしっ!」
銀時と同じように、また新八に向けてロケット花火を投げようとしている。そんな神楽を止める為、新八が慌ててやって来る。
「ちょっと、神楽ちゃん、何しようとしてんの⁉︎ つーか、銀さん! 何するんですかァ⁉︎ あんなことしたら危ないでしょうがァ!」
「おぉ~ぱっつぁん、無事だったのか~、良かった良かった」
「良かったじゃねーよ! 何考えてんだよ、あんた! ちょっ、
ナマエさんも笑ってないで、なんとか言ってくださいよ〜」
「ごめん、ごめん! ちょっと2人とも、新八くんが怪我したら危ないでしょう!」
ナマエに止められた銀時と神楽は、急に大人しくなり、普通に花火をし始める。しゃがみながら、色とりどりの花火を目にして、
ナマエが呟く。
「綺麗……ねェ、銀さん?」
「……えっ、あ、あ〜そうだな」
銀時が慌てて言葉を返す。どうやら、花火をしている
ナマエの横顔に見とれてたようにだ。綺麗なのは、花火より
ナマエの方だなんて……なんだかクサイ台詞まで思いついてしまう始末。
「ん? 銀さん、どーかした?」
「べ、別に……何でもねーよ」
「……?」
「これしたいアル!」
そう言って、神楽が持って来たのは、打ち上げ花火だ。
「あっ、いいねぇ~! 銀さん、早く火付けてください!」
「ハイハイ、そらよっ」
銀時が導火線に火を付けて間もなく、花火が2発、夜空に打ち上がった。
「2連発か……でもまぁ、市販にしちゃーなかなか迫力あるじゃん!」
「ホントだぁ~」
「まだまだ色んな花火があるネ! どんどんやるアル! 銀ちゃん、次はこっちネ!」
「ヘイヘイ……」
神楽が、新たな打ち上げ花火を持ってこようとした、ちょうどとその時──
ドォォ~~ン!! 後ろの方で大きな重低音が聞こえてきた。
「あ──ッ! あれ見るアル!」
神楽が指差したその先には、大きな打ち上げ花火──
「でっかい花火アル!」
「ホントだぁ~! 今日ってどこかで花火大会なんてありましたっけ?」
「あ、確か隣町の花火大会が、今日だったような…」
「ここじゃ見にくいアル! あっちに行ってみるネ!」
「おいおい、これどーすんだよ⁉︎」
「一端中断アル!」
「神楽ちゃん、ちょっと待ってってば~」
していた花火をそっちのけにし、神楽は丘を登り始める。そんな神楽を新八が慌てて追いかける。一方で、
ナマエは散らばった花火をササッと片付けている。
「これでよしっと……銀さん、私たちも花火見に行きましょう!」
「…………」
「銀さん……?」
ナマエは、黙ったままの銀時を不思議そうに見上げた。その時、銀時がおもむろに
ナマエを引き寄せ口付ける。
ちゅっ……と言うリップ音と共に、唇が離れる。
「──ッ⁉︎」
「あ、い、いや~、なんつーか、その……お前があんまりにも可愛くて、つい──」
いきなりのことに、
ナマエは目を丸くしている。そして、段々とに状況を理解したのか……みるみる顔が赤くなっていく。
ナマエの反応を見た銀時までもが、珍しく赤面しているようだ。
その時、遠くの方で神楽が2人の名前を呼んでいるのが聞こえてきた。
「か、神楽ちゃんも呼んでるし……行きますか」
「銀さんは、もぉちょい
ナマエちゃんとイチャイチャしたいけどよぉ〜」
「な、なに言ってるんですか⁉︎ 行きますよ!」
「まぁ、ちょっと待てって! せっかく2人きりなのによォ、せめて、もう1回だけ──」
そう言と、銀時は再び
ナマエに口付ける。今度はさっきより深く──
「んっ…っ……」
ナマエから時折漏れる甘声を聞きながら、これ以上はヤバいと思った銀時が、名残惜しそうに唇を離す。
少し憂いを帯びた瞳で見つめられた銀時は、正直このまま押し倒したいと言う気持ちを抑えつつ……2人は手を繋いで新八と神楽の元へと向かった。
その頃、新八と神楽はと言うと──
「銀ちゃん、
ナマエとうまくやったアルかなぁ?」
「どうかなぁ~? でもなかなか来ないね」
「きっとチューくらいはしてるネ!」
「チューって、神楽ちゃん……」
「もしかしてその先もアルか~⁉︎」
「神楽ちゃんっっ⁉︎ ちょっ、何言っちゃってんのォ⁉︎ つーか、その先って何⁉︎ 一体何があんの⁉︎」
「……新八、何興奮してるネ?」
そこに銀時と
ナマエがやって来た。
「ごめん、ごめん! ちょっと片付けてたから遅くなっちゃった!」
「新八ィ~、何ギャーギャー騒いでんだ?」
「ぎ、銀さんに
ナマエさん⁉︎ い、いつの間に⁉︎」
「銀ちゃん達、ホントに片付けだけしてたアルかぁ〜?」
ニヤリと笑みを浮かべながら問いかける神楽に、銀時はしれっとポーカーフェイスだ。
「うっせー! お前らこそ、片付けもせずに勝手に行きやがって!」
そんな言い争いをしつつ、大きな重低音と共に夜空に上がる花火を見上げた。
隣には同じく花火を見上げる
ナマエの姿がある。そんな彼女を横目に見ながら、銀時が呟く。
「綺麗だなァ……全くよォ……」
なんやかんやで、今年の夏はまだ始まったばかりだ。
the END おまけ→